巻二十 大歌所御歌·神游びのうた·东歌
1069 新しき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきをつめ 読人知らず
1070 しもとゆふ かづらき山に 降る雪の 间なく时なく 思ほゆるかな 読人知らず
1071 近江より 朝立ちくれば うねの野に たづぞ鸣くなる 明けぬこの夜は 読人知らず
1072 水くきの 冈のやかたに 妹とあれと 寝ての朝けの 霜の降りはも 読人知らず
1073 しはつ山 うちいでて见れば 笠ゆひの 岛こぎ隠る 棚なし小舟 読人知らず
1074 神がきの みむろの山の さかき叶は 神のみまへに しげりあひにけり 読人知らず
1075 霜やたび 置けど枯れせぬ さかき叶の たち栄ゆべき 神のきねかも 読人知らず
1076 まきもくの あなしの山の 山びとと 人も见るがに 山かづらせよ 読人知らず
1077 み山には あられ降るらし と山なる まさきのかづら 色づきにけり 読人知らず
1078 陆奥の 安达の真弓 我が引かば 末さへよりこ しのびしのびに 読人知らず
1079 我が门の いたゐの清水 里远み 人しくまねば み草おひにけり 読人知らず
1080 ささのくま ひのくま川に 驹とめて しばし水かへ かげをだに见む 読人知らず
1081 青柳を 片糸によりて うぐひすの ぬふてふ笠は 梅の花笠 読人知らず
1082 まがねふく 吉备の中山 帯にせる 细谷川の 音のさやけさ 読人知らず
1083 みまさかや 久米のさら山 さらさらに 我が名は立てじ 万代までに 読人知らず
1084 美浓の国 せきの藤川 绝えずして 君につかへむ 万代までに 読人知らず
1085 君が代は かぎりもあらじ 长浜の 真砂の数は 読みつくすとも 読人知らず
1086 近江のや 镜の山を 立てたれば かねてぞ见ゆる 君が千歳は 大友黒主
1087 阿武隈に 雾立ちくもり 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし 読人知らず
1088 陆奥は いづくはあれど 塩釜の 浦こぐ舟の 纲手かなしも 読人知らず
1089 我が背子を みやこにやりて 塩釜の まがきの岛の 松ぞ恋しき 読人知らず
1090 をぐろさき みつの小岛の 人ならば みやこのつとに いざと言はましを 読人知らず
1091 みさぶらひ みかさと申せ 宫城野の この下露は 雨にまされり 読人知らず
1092 最上川 のぼればくだる 稲舟の いなにはあらず この月ばかり 読人知らず
1093 君をおきて あだし心を 我がもたば 末の松山 浪も越えなむ 読人知らず
1094 こよろぎの 矶たちならし 矶菜つむ めざしぬらすな 冲にをれ浪 読人知らず
1095 つくばねの このもかのもに かげはあれど 君が御影に ますかげはなし 読人知らず
1096 つくばねの 峰のもみぢ叶 落ちつもり 知るも知らぬも なべてかなしも 読人知らず
1097 甲斐がねを さやにも见しか けけれなく 横ほりふせる 小夜の中山 読人知らず
1098 甲斐がねを ねこし山こし 吹く风を 人にもがもや ことづてやらむ 読人知らず
1099 をふのうらに 片枝さしおほひ なる梨の なりもならずも 寝てかたらはむ 読人知らず
1100 ちはやぶる 贺茂のやしろの 姫小松 よろづ世ふとも 色はかはらじ 藤原敏行
1069 新しき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきをつめ 読人知らず
1070 しもとゆふ かづらき山に 降る雪の 间なく时なく 思ほゆるかな 読人知らず
1071 近江より 朝立ちくれば うねの野に たづぞ鸣くなる 明けぬこの夜は 読人知らず
1072 水くきの 冈のやかたに 妹とあれと 寝ての朝けの 霜の降りはも 読人知らず
1073 しはつ山 うちいでて见れば 笠ゆひの 岛こぎ隠る 棚なし小舟 読人知らず
1074 神がきの みむろの山の さかき叶は 神のみまへに しげりあひにけり 読人知らず
1075 霜やたび 置けど枯れせぬ さかき叶の たち栄ゆべき 神のきねかも 読人知らず
1076 まきもくの あなしの山の 山びとと 人も见るがに 山かづらせよ 読人知らず
1077 み山には あられ降るらし と山なる まさきのかづら 色づきにけり 読人知らず
1078 陆奥の 安达の真弓 我が引かば 末さへよりこ しのびしのびに 読人知らず
1079 我が门の いたゐの清水 里远み 人しくまねば み草おひにけり 読人知らず
1080 ささのくま ひのくま川に 驹とめて しばし水かへ かげをだに见む 読人知らず
1081 青柳を 片糸によりて うぐひすの ぬふてふ笠は 梅の花笠 読人知らず
1082 まがねふく 吉备の中山 帯にせる 细谷川の 音のさやけさ 読人知らず
1083 みまさかや 久米のさら山 さらさらに 我が名は立てじ 万代までに 読人知らず
1084 美浓の国 せきの藤川 绝えずして 君につかへむ 万代までに 読人知らず
1085 君が代は かぎりもあらじ 长浜の 真砂の数は 読みつくすとも 読人知らず
1086 近江のや 镜の山を 立てたれば かねてぞ见ゆる 君が千歳は 大友黒主
1087 阿武隈に 雾立ちくもり 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし 読人知らず
1088 陆奥は いづくはあれど 塩釜の 浦こぐ舟の 纲手かなしも 読人知らず
1089 我が背子を みやこにやりて 塩釜の まがきの岛の 松ぞ恋しき 読人知らず
1090 をぐろさき みつの小岛の 人ならば みやこのつとに いざと言はましを 読人知らず
1091 みさぶらひ みかさと申せ 宫城野の この下露は 雨にまされり 読人知らず
1092 最上川 のぼればくだる 稲舟の いなにはあらず この月ばかり 読人知らず
1093 君をおきて あだし心を 我がもたば 末の松山 浪も越えなむ 読人知らず
1094 こよろぎの 矶たちならし 矶菜つむ めざしぬらすな 冲にをれ浪 読人知らず
1095 つくばねの このもかのもに かげはあれど 君が御影に ますかげはなし 読人知らず
1096 つくばねの 峰のもみぢ叶 落ちつもり 知るも知らぬも なべてかなしも 読人知らず
1097 甲斐がねを さやにも见しか けけれなく 横ほりふせる 小夜の中山 読人知らず
1098 甲斐がねを ねこし山こし 吹く风を 人にもがもや ことづてやらむ 読人知らず
1099 をふのうらに 片枝さしおほひ なる梨の なりもならずも 寝てかたらはむ 読人知らず
1100 ちはやぶる 贺茂のやしろの 姫小松 よろづ世ふとも 色はかはらじ 藤原敏行
巻十九 雑体
1001 あふことの まれなる色に 思ひそめ 我が身は常に 天云の... 読人知らず
1002 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも绝えず 天彦の... 纪贯之
1003 呉竹の 世よのふること なかりせば いかほの沼の いかにして... 壬生忠岑
1004 君が代に あふ坂山の 岩清水 こ隠れたりと 思ひけるかな 壬生忠岑
1005 ちはやぶる 神无月とや 今朝よりは 云りもあへず 初时雨... 凡河内躬恒
1006 冲つ浪 荒れのみまさる 宫の内は 年へて住みし 伊势の海人も... 伊势
1007 うちわたす をち方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは... 読人知らず
1008 春されば 野辺にまづ咲く 见れどあかぬ花 まひなしに... 読人知らず
1009 初瀬川 ふる川野辺に ふたもとある杉 年をへて またもあひ见む... 読人知らず
1010 君がさす 三笠の山の もみぢ叶の色 神无月 时雨の雨の... 纪贯之
1011 梅の花 见にこそきつれ うぐひすの ひとくひとくと いとひしもをる 読人知らず
1012 山吹の 花色衣 主や谁 问へど答へず くちなしにして 素性法师
1013 いくばくの 田をつくればか 郭公 しでの田をさを 朝な朝な呼ぶ 藤原敏行
1014 いつしかと またく心を 胫にあげて 天の河原を 今日や渡らむ 藤原兼辅
1015 むつごとも まだつきなくに 明けぬめり いづらは秋の 长してふ夜は 凡河内躬恒
1016 秋の野に なまめきたてる 女郎花 あなかしかまし 花もひと时 僧正遍照
1017 秋くれば 野辺にたはるる 女郎花 いづれの人か つまで见るべき 読人知らず
1018 秋雾の 晴れて昙れば 女郎花 花の姿ぞ 见え隠れする 読人知らず
1019 花と见て 折らむとすれば 女郎花 うたたあるさまの 名にこそありけれ 読人知らず
1020 秋风に ほころびぬらし 藤ばかま つづりさせてふ きりぎりす鸣く 在原栋梁
1021 冬ながら 春のとなりの 近ければ 中垣よりぞ 花は散りける 清原深养父
1022 いそのかみ ふりにし恋の かみさびて たたるに我は いぞ寝かねつる 読人知らず
1023 枕より あとより恋の せめくれば せむ方なみぞ 床なかにをる 読人知らず
1024 恋しきが 方も方こそ ありと闻け たてれをれども なき心地かな 読人知らず
1025 ありぬやと こころみがてら あひ见ねば たはぶれにくき までぞ恋しき 読人知らず
1026 耳なしの 山のくちなし えてしかな 思ひの色の 下染めにせむ 読人知らず
1027 あしひきの 山田のそほづ おのれさへ 我をほしてふ うれはしきこと 読人知らず
1028 富士の岭の ならぬ思ひに もえばもえ 神だにけたぬ むなし烟を 纪乳母
1029 あひ见まく 星は数なく ありながら 人に月なみ 惑ひこそすれ 纪有朋
1030 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて 胸はしり火に 心やけをり 小野小町
1031 春霞 たなびく野辺の 若菜にも なり见てしかな 人もつむやと 藤原兴风
1032 思へども なほうとまれぬ 春霞 かからぬ山も あらじと思へば 読人知らず
1033 春の野の しげき草叶の 妻恋ひに 飞び立つきじの ほろろとぞ鸣く 平贞文
1034 秋の野に 妻なき鹿の 年をへて なぞ我が恋の かひよとぞ鸣く 纪淑人
1035 蝉の羽の 一重に薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらぬ 凡河内躬恒
1036 隠れ沼の 下よりおふる ねぬなはの ねぬなは立てじ くるないとひそ 壬生忠岑
1037 ことならば 思はずとやは 言ひはてぬ なぞ世の中の 玉だすきなる 読人知らず
1038 思ふてふ 人の心の くまごとに 立ち隠れつつ 见るよしもがな 読人知らず
1039 思へども 思はずとのみ 言ふなれば いなや思はじ 思ふかひなし 読人知らず
1040 我をのみ 思ふと言はば あるべきを いでや心は おほぬさにして 読人知らず
1041 我を思ふ 人を思はぬ むくいにや 我が思ふ人の 我を思はぬ 読人知らず
1042 思ひけむ 人をぞ共に 思はまし まさしやむくい なかりけりやは 清原深养父
1043 いでてゆかむ 人をとどめむ よしなきに となりの方に 鼻もひぬかな 読人知らず
1044 红に 染めし心も たのまれず 人をあくには うつるてふなり 読人知らず
1045 いとはるる 我が身は春の 驹なれや 野がひがてらに 放ち舍てつつ 読人知らず
1046 うぐひすの 去年の宿りの ふるすとや 我には人の つれなかるらむ 読人知らず
1047 さかしらに 夏は人まね 笹の叶の さやぐ霜夜を 我がひとり寝る 読人知らず
1048 あふことの 今ははつかに なりぬれば 夜深からでは 月なかりけり 平中兴
1049 もろこしの 吉野の山に こもるとも おくれむと思ふ 我ならなくに 左大臣
1050 云はれぬ 浅间の山の あさましや 人の心を 见てこそやまめ 平中兴
1051 难波なる 长柄の桥も つくるなり 今は我が身を 何にたとへむ 伊势
1052 まめなれど 何ぞはよけく 刈るかやの 乱れてあれど あしけくもなし 読人知らず
1053 何かその 名の立つことの 惜しからむ 知りて惑ふは 我ひとりかは 藤原兴风
1054 よそながら 我が身に糸の よると言へば ただいつはりに すぐばかりなり 久曽
1055 ねぎことを さのみ闻きけむ やしろこそ はてはなげきの もりとなるらめ 讃岐
1056 なげきこる 山とし高く なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける 大辅
1057 なげきをば こりのみつみて あしひきの 山のかひなく なりぬべらなり 読人知らず
1058 人恋ふる ことを重荷と になひもて あふごなきこそ わびしかりけれ 読人知らず
1059 宵の间に いでて入りぬる 三日月の われて物思ふ ころにもあるかな 読人知らず
1060 そゑにとて とすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに 読人知らず
1061 世の中の うきたびごとに 身を投げば 深き谷こそ 浅くなりなめ 読人知らず
1062 世の中は いかにくるしと 思ふらむ ここらの人に うらみらるれば 在原元方
1063 何をして 身のいたづらに 老いぬらむ 年の思はむ ことぞやさしき 読人知らず
1064 身は舍てつ 心をだにも はふらさじ つひにはいかが なると知るべく 藤原兴风
1065 白雪の ともに我が身は 降りぬれど 心は消えぬ ものにぞありける 大江千里
1066 梅の花 咲きてののちの 身なればや すきものとのみ 人の言ふらむ 読人知らず
1067 わびしらに ましらな鸣きそ あしひきの 山のかひある 今日にやはあらぬ 凡河内躬恒
1068 世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり 読人知らず
1001 あふことの まれなる色に 思ひそめ 我が身は常に 天云の... 読人知らず
1002 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも绝えず 天彦の... 纪贯之
1003 呉竹の 世よのふること なかりせば いかほの沼の いかにして... 壬生忠岑
1004 君が代に あふ坂山の 岩清水 こ隠れたりと 思ひけるかな 壬生忠岑
1005 ちはやぶる 神无月とや 今朝よりは 云りもあへず 初时雨... 凡河内躬恒
1006 冲つ浪 荒れのみまさる 宫の内は 年へて住みし 伊势の海人も... 伊势
1007 うちわたす をち方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは... 読人知らず
1008 春されば 野辺にまづ咲く 见れどあかぬ花 まひなしに... 読人知らず
1009 初瀬川 ふる川野辺に ふたもとある杉 年をへて またもあひ见む... 読人知らず
1010 君がさす 三笠の山の もみぢ叶の色 神无月 时雨の雨の... 纪贯之
1011 梅の花 见にこそきつれ うぐひすの ひとくひとくと いとひしもをる 読人知らず
1012 山吹の 花色衣 主や谁 问へど答へず くちなしにして 素性法师
1013 いくばくの 田をつくればか 郭公 しでの田をさを 朝な朝な呼ぶ 藤原敏行
1014 いつしかと またく心を 胫にあげて 天の河原を 今日や渡らむ 藤原兼辅
1015 むつごとも まだつきなくに 明けぬめり いづらは秋の 长してふ夜は 凡河内躬恒
1016 秋の野に なまめきたてる 女郎花 あなかしかまし 花もひと时 僧正遍照
1017 秋くれば 野辺にたはるる 女郎花 いづれの人か つまで见るべき 読人知らず
1018 秋雾の 晴れて昙れば 女郎花 花の姿ぞ 见え隠れする 読人知らず
1019 花と见て 折らむとすれば 女郎花 うたたあるさまの 名にこそありけれ 読人知らず
1020 秋风に ほころびぬらし 藤ばかま つづりさせてふ きりぎりす鸣く 在原栋梁
1021 冬ながら 春のとなりの 近ければ 中垣よりぞ 花は散りける 清原深养父
1022 いそのかみ ふりにし恋の かみさびて たたるに我は いぞ寝かねつる 読人知らず
1023 枕より あとより恋の せめくれば せむ方なみぞ 床なかにをる 読人知らず
1024 恋しきが 方も方こそ ありと闻け たてれをれども なき心地かな 読人知らず
1025 ありぬやと こころみがてら あひ见ねば たはぶれにくき までぞ恋しき 読人知らず
1026 耳なしの 山のくちなし えてしかな 思ひの色の 下染めにせむ 読人知らず
1027 あしひきの 山田のそほづ おのれさへ 我をほしてふ うれはしきこと 読人知らず
1028 富士の岭の ならぬ思ひに もえばもえ 神だにけたぬ むなし烟を 纪乳母
1029 あひ见まく 星は数なく ありながら 人に月なみ 惑ひこそすれ 纪有朋
1030 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて 胸はしり火に 心やけをり 小野小町
1031 春霞 たなびく野辺の 若菜にも なり见てしかな 人もつむやと 藤原兴风
1032 思へども なほうとまれぬ 春霞 かからぬ山も あらじと思へば 読人知らず
1033 春の野の しげき草叶の 妻恋ひに 飞び立つきじの ほろろとぞ鸣く 平贞文
1034 秋の野に 妻なき鹿の 年をへて なぞ我が恋の かひよとぞ鸣く 纪淑人
1035 蝉の羽の 一重に薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらぬ 凡河内躬恒
1036 隠れ沼の 下よりおふる ねぬなはの ねぬなは立てじ くるないとひそ 壬生忠岑
1037 ことならば 思はずとやは 言ひはてぬ なぞ世の中の 玉だすきなる 読人知らず
1038 思ふてふ 人の心の くまごとに 立ち隠れつつ 见るよしもがな 読人知らず
1039 思へども 思はずとのみ 言ふなれば いなや思はじ 思ふかひなし 読人知らず
1040 我をのみ 思ふと言はば あるべきを いでや心は おほぬさにして 読人知らず
1041 我を思ふ 人を思はぬ むくいにや 我が思ふ人の 我を思はぬ 読人知らず
1042 思ひけむ 人をぞ共に 思はまし まさしやむくい なかりけりやは 清原深养父
1043 いでてゆかむ 人をとどめむ よしなきに となりの方に 鼻もひぬかな 読人知らず
1044 红に 染めし心も たのまれず 人をあくには うつるてふなり 読人知らず
1045 いとはるる 我が身は春の 驹なれや 野がひがてらに 放ち舍てつつ 読人知らず
1046 うぐひすの 去年の宿りの ふるすとや 我には人の つれなかるらむ 読人知らず
1047 さかしらに 夏は人まね 笹の叶の さやぐ霜夜を 我がひとり寝る 読人知らず
1048 あふことの 今ははつかに なりぬれば 夜深からでは 月なかりけり 平中兴
1049 もろこしの 吉野の山に こもるとも おくれむと思ふ 我ならなくに 左大臣
1050 云はれぬ 浅间の山の あさましや 人の心を 见てこそやまめ 平中兴
1051 难波なる 长柄の桥も つくるなり 今は我が身を 何にたとへむ 伊势
1052 まめなれど 何ぞはよけく 刈るかやの 乱れてあれど あしけくもなし 読人知らず
1053 何かその 名の立つことの 惜しからむ 知りて惑ふは 我ひとりかは 藤原兴风
1054 よそながら 我が身に糸の よると言へば ただいつはりに すぐばかりなり 久曽
1055 ねぎことを さのみ闻きけむ やしろこそ はてはなげきの もりとなるらめ 讃岐
1056 なげきこる 山とし高く なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける 大辅
1057 なげきをば こりのみつみて あしひきの 山のかひなく なりぬべらなり 読人知らず
1058 人恋ふる ことを重荷と になひもて あふごなきこそ わびしかりけれ 読人知らず
1059 宵の间に いでて入りぬる 三日月の われて物思ふ ころにもあるかな 読人知らず
1060 そゑにとて とすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに 読人知らず
1061 世の中の うきたびごとに 身を投げば 深き谷こそ 浅くなりなめ 読人知らず
1062 世の中は いかにくるしと 思ふらむ ここらの人に うらみらるれば 在原元方
1063 何をして 身のいたづらに 老いぬらむ 年の思はむ ことぞやさしき 読人知らず
1064 身は舍てつ 心をだにも はふらさじ つひにはいかが なると知るべく 藤原兴风
1065 白雪の ともに我が身は 降りぬれど 心は消えぬ ものにぞありける 大江千里
1066 梅の花 咲きてののちの 身なればや すきものとのみ 人の言ふらむ 読人知らず
1067 わびしらに ましらな鸣きそ あしひきの 山のかひある 今日にやはあらぬ 凡河内躬恒
1068 世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり 読人知らず
巻十八 雑歌下
0933 世の中は 何か常なる 飞鸟川 昨日の渊ぞ 今日は瀬になる 読人知らず
0934 几世しも あらじ我が身を なぞもかく 海人の刈る藻に 思ひ乱るる 読人知らず
0935 雁の来る 峰の朝雾 晴れずのみ 思ひつきせぬ 世の中の忧さ 読人知らず
0936 しかりとて そむかれなくに ことしあれば まづなげかれぬ あなう世の中 小野篁
0937 みやこ人 いかがと问はば 山高み 晴れぬ云ゐに わぶと答へよ 小野贞树
0938 わびぬれば 身を浮草の 根を绝えて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ 小野小町
0939 あはれてふ ことこそうたて 世の中を 思ひはなれぬ ほだしなりけれ 小野小町
0940 あはれてふ 言の叶ごとに 置く露は 昔を恋ふる 涙なりけり 読人知らず
0941 世の中の うきもつらきも 告げなくに まづ知るものは 涙なりけり 読人知らず
0942 世の中は 梦かうつつか うつつとも 梦とも知らず ありてなければ 読人知らず
0943 世の中に いづら我が身の ありてなし あはれとや言はむ あなうとや言はむ 読人知らず
0944 山里は もののわびしき ことこそあれ 世の忧きよりは 住みよかりけり 読人知らず
0945 白云の 绝えずたなびく 峰にだに 住めば住みぬる 世にこそありけれ 惟乔亲王
0946 知りにけむ 闻きてもいとへ 世の中は 浪の騒ぎに 风ぞしくめる 布留今道
0947 いづこにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ 素性法师
0948 世の中は 昔よりやは うかりけむ 我が身ひとつの ためになれるか 読人知らず
0949 世の中を いとふ山辺の 草木とや あなうの花の 色にいでにけむ 読人知らず
0950 み吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の忧き时の 隠れがにせむ 読人知らず
0951 世にふれば 忧さこそまされ み吉野の 岩のかけ道 踏みならしてむ 読人知らず
0952 いかならむ 巌の中に 住まばかは 世の忧きことの 闻こえこざらむ 読人知らず
0953 あしひきの 山のまにまに 隠れなむ うき世の中は あるかひもなし 読人知らず
0954 世の中の うけくにあきぬ 奥山の 木の叶に降れる 雪やけなまし 読人知らず
0955 世のうきめ 见えぬ山ぢへ 入らむには 思ふ人こそ ほだしなりけれ 物部吉名
0956 世を舍てて 山にいる人 山にても なほ忧き时は いづち行くらむ 凡河内躬恒
0957 今さらに なにおひいづらむ 竹の子の うき节しげき 世とは知らずや 凡河内躬恒
0958 世にふれば 言の叶しげき 呉竹の うき节ごとに うぐひすぞ鸣く 読人知らず
0959 木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの 端に我が身は なりぬべらなり 読人知らず
0960 我が身から うき世の中と 名づけつつ 人のためさへ かなしかるらむ 読人知らず
0961 思ひきや ひなの别れに おとろへて 海人の縄たき いさりせむとは 小野篁
0962 わくらばに 问ふ人あらば 须磨の浦に 藻塩たれつつ わぶと答へよ 在原行平
0963 天彦の おとづれじとぞ 今は思ふ 我か人かと 身をたどる世に 小野春风
0964 うき世には 门させりとも 见えなくに などか我が身の いでがてにする 平贞文
0965 ありはてぬ 命待つ间の ほどばかり うきことしげく 思はずもがな 平贞文
0966 つくばねの 木のもとごとに 立ちぞ寄る 春のみ山の かげを恋つつ 宫道洁兴
0967 光なき 谷には春も よそなれば 咲きてとく散る 物思ひもなし 清原深养父
0968 久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる 伊势
0969 今ぞ知る 苦しきものと 人待たむ 里をばかれず 问ふべかりけり 在原业平
0970 忘れては 梦かとぞ思ふ 思ひきや 雪踏みわけて 君を见むとは 在原业平
0971 年をへて 住みこし里を いでていなば いとど深草 野とやなりなむ 在原业平
0972 野とならば うづらとなきて 年はへむ かりにだにやは 君がこざらむ 読人知らず
0973 我を君 难波の浦に ありしかば うきめをみつの 海人となりにき 読人知らず
0974 难波潟 うらむべきまも 思ほえず いづこをみつの 海人とかはなる 読人知らず
0975 今さらに 问ふべき人も 思ほえず 八重むぐらして 门させりてへ 読人知らず
0976 水の面に おふる五月の 浮草の うきことあれや 根を绝えて来ぬ 凡河内躬恒
0977 身を舍てて ゆきやしにけむ 思ふより 外なるものは 心なりけり 凡河内躬恒
0978 君が思ひ 雪とつもらば たのまれず 春よりのちは あらじと思へば 凡河内躬恒
0979 君をのみ 思ひこしぢの 白山は いつかは雪の 消ゆる时ある 宗岳大頼
0980 思ひやる 越の白山 知らねども ひと夜も梦に 越えぬ夜ぞなき 纪贯之
0981 いざここに 我が世はへなむ 菅原や 伏见の里の 荒れまくも惜し 読人知らず
0982 我が庵は 三轮の山もと 恋しくは とぶらひきませ 杉たてる门 読人知らず
0983 我が庵は みやこのたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人は言ふなり 喜撰法师
0984 荒れにけり あはれ几世の 宿なれや 住みけむ人の おとづれもせぬ 読人知らず
0985 わび人の 住むべき宿と 见るなへに 叹きくははる 琴の音ぞする 良岑宗贞
0986 人ふるす 里をいとひて こしかども 奈良のみやこも うき名なりけり 二条
0987 世の中は いづれかさして 我がならむ 行きとまるをぞ 宿とさだむる 読人知らず
0988 あふ坂の 岚の风は 寒けれど ゆくへ知らねば わびつつぞ寝る 読人知らず
0989 风の上に ありかさだめぬ 尘の身は ゆくへも知らず なりぬべらなり 読人知らず
0990 飞鸟川 渊にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける 伊势
0991 ふるさとは 见しごともあらず 斧の柄の 朽ちしところぞ 恋しかりける 纪友则
0992 あかざりし 袖の中にや 入りにけむ 我がたましひの なき心地する 陆奥
0993 なよ竹の よ长き上に 初霜の おきゐて物を 思ふころかな 藤原忠房
0994 风吹けば 冲つ白浪 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらむ 読人知らず
0995 たがみそぎ ゆふつけ鸟か 唐衣 たつたの山に をりはへて鸣く 読人知らず
0996 忘られむ 时しのべとぞ 浜千鸟 ゆくへも知らぬ 迹をとどむる 読人知らず
0997 神无月 时雨降りおける ならの叶の 名におふ宫の ふることぞこれ 文屋有季
0998 あしたづの ひとりおくれて 鸣く声は 云の上まで 闻こえつがなむ 大江千里
0999 人知れず 思ふ心は 春霞 たちいでて君が 目にも见えなむ 藤原胜臣
1000 山川の 音にのみ闻く ももしきを 身をはやながら 见るよしもがな 伊势
0933 世の中は 何か常なる 飞鸟川 昨日の渊ぞ 今日は瀬になる 読人知らず
0934 几世しも あらじ我が身を なぞもかく 海人の刈る藻に 思ひ乱るる 読人知らず
0935 雁の来る 峰の朝雾 晴れずのみ 思ひつきせぬ 世の中の忧さ 読人知らず
0936 しかりとて そむかれなくに ことしあれば まづなげかれぬ あなう世の中 小野篁
0937 みやこ人 いかがと问はば 山高み 晴れぬ云ゐに わぶと答へよ 小野贞树
0938 わびぬれば 身を浮草の 根を绝えて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ 小野小町
0939 あはれてふ ことこそうたて 世の中を 思ひはなれぬ ほだしなりけれ 小野小町
0940 あはれてふ 言の叶ごとに 置く露は 昔を恋ふる 涙なりけり 読人知らず
0941 世の中の うきもつらきも 告げなくに まづ知るものは 涙なりけり 読人知らず
0942 世の中は 梦かうつつか うつつとも 梦とも知らず ありてなければ 読人知らず
0943 世の中に いづら我が身の ありてなし あはれとや言はむ あなうとや言はむ 読人知らず
0944 山里は もののわびしき ことこそあれ 世の忧きよりは 住みよかりけり 読人知らず
0945 白云の 绝えずたなびく 峰にだに 住めば住みぬる 世にこそありけれ 惟乔亲王
0946 知りにけむ 闻きてもいとへ 世の中は 浪の騒ぎに 风ぞしくめる 布留今道
0947 いづこにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ 素性法师
0948 世の中は 昔よりやは うかりけむ 我が身ひとつの ためになれるか 読人知らず
0949 世の中を いとふ山辺の 草木とや あなうの花の 色にいでにけむ 読人知らず
0950 み吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の忧き时の 隠れがにせむ 読人知らず
0951 世にふれば 忧さこそまされ み吉野の 岩のかけ道 踏みならしてむ 読人知らず
0952 いかならむ 巌の中に 住まばかは 世の忧きことの 闻こえこざらむ 読人知らず
0953 あしひきの 山のまにまに 隠れなむ うき世の中は あるかひもなし 読人知らず
0954 世の中の うけくにあきぬ 奥山の 木の叶に降れる 雪やけなまし 読人知らず
0955 世のうきめ 见えぬ山ぢへ 入らむには 思ふ人こそ ほだしなりけれ 物部吉名
0956 世を舍てて 山にいる人 山にても なほ忧き时は いづち行くらむ 凡河内躬恒
0957 今さらに なにおひいづらむ 竹の子の うき节しげき 世とは知らずや 凡河内躬恒
0958 世にふれば 言の叶しげき 呉竹の うき节ごとに うぐひすぞ鸣く 読人知らず
0959 木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの 端に我が身は なりぬべらなり 読人知らず
0960 我が身から うき世の中と 名づけつつ 人のためさへ かなしかるらむ 読人知らず
0961 思ひきや ひなの别れに おとろへて 海人の縄たき いさりせむとは 小野篁
0962 わくらばに 问ふ人あらば 须磨の浦に 藻塩たれつつ わぶと答へよ 在原行平
0963 天彦の おとづれじとぞ 今は思ふ 我か人かと 身をたどる世に 小野春风
0964 うき世には 门させりとも 见えなくに などか我が身の いでがてにする 平贞文
0965 ありはてぬ 命待つ间の ほどばかり うきことしげく 思はずもがな 平贞文
0966 つくばねの 木のもとごとに 立ちぞ寄る 春のみ山の かげを恋つつ 宫道洁兴
0967 光なき 谷には春も よそなれば 咲きてとく散る 物思ひもなし 清原深养父
0968 久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる 伊势
0969 今ぞ知る 苦しきものと 人待たむ 里をばかれず 问ふべかりけり 在原业平
0970 忘れては 梦かとぞ思ふ 思ひきや 雪踏みわけて 君を见むとは 在原业平
0971 年をへて 住みこし里を いでていなば いとど深草 野とやなりなむ 在原业平
0972 野とならば うづらとなきて 年はへむ かりにだにやは 君がこざらむ 読人知らず
0973 我を君 难波の浦に ありしかば うきめをみつの 海人となりにき 読人知らず
0974 难波潟 うらむべきまも 思ほえず いづこをみつの 海人とかはなる 読人知らず
0975 今さらに 问ふべき人も 思ほえず 八重むぐらして 门させりてへ 読人知らず
0976 水の面に おふる五月の 浮草の うきことあれや 根を绝えて来ぬ 凡河内躬恒
0977 身を舍てて ゆきやしにけむ 思ふより 外なるものは 心なりけり 凡河内躬恒
0978 君が思ひ 雪とつもらば たのまれず 春よりのちは あらじと思へば 凡河内躬恒
0979 君をのみ 思ひこしぢの 白山は いつかは雪の 消ゆる时ある 宗岳大頼
0980 思ひやる 越の白山 知らねども ひと夜も梦に 越えぬ夜ぞなき 纪贯之
0981 いざここに 我が世はへなむ 菅原や 伏见の里の 荒れまくも惜し 読人知らず
0982 我が庵は 三轮の山もと 恋しくは とぶらひきませ 杉たてる门 読人知らず
0983 我が庵は みやこのたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人は言ふなり 喜撰法师
0984 荒れにけり あはれ几世の 宿なれや 住みけむ人の おとづれもせぬ 読人知らず
0985 わび人の 住むべき宿と 见るなへに 叹きくははる 琴の音ぞする 良岑宗贞
0986 人ふるす 里をいとひて こしかども 奈良のみやこも うき名なりけり 二条
0987 世の中は いづれかさして 我がならむ 行きとまるをぞ 宿とさだむる 読人知らず
0988 あふ坂の 岚の风は 寒けれど ゆくへ知らねば わびつつぞ寝る 読人知らず
0989 风の上に ありかさだめぬ 尘の身は ゆくへも知らず なりぬべらなり 読人知らず
0990 飞鸟川 渊にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける 伊势
0991 ふるさとは 见しごともあらず 斧の柄の 朽ちしところぞ 恋しかりける 纪友则
0992 あかざりし 袖の中にや 入りにけむ 我がたましひの なき心地する 陆奥
0993 なよ竹の よ长き上に 初霜の おきゐて物を 思ふころかな 藤原忠房
0994 风吹けば 冲つ白浪 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらむ 読人知らず
0995 たがみそぎ ゆふつけ鸟か 唐衣 たつたの山に をりはへて鸣く 読人知らず
0996 忘られむ 时しのべとぞ 浜千鸟 ゆくへも知らぬ 迹をとどむる 読人知らず
0997 神无月 时雨降りおける ならの叶の 名におふ宫の ふることぞこれ 文屋有季
0998 あしたづの ひとりおくれて 鸣く声は 云の上まで 闻こえつがなむ 大江千里
0999 人知れず 思ふ心は 春霞 たちいでて君が 目にも见えなむ 藤原胜臣
1000 山川の 音にのみ闻く ももしきを 身をはやながら 见るよしもがな 伊势
巻十七 雑歌上
0863 我が上に 露ぞ置くなる 天の河 と渡る舟の 櫂のしづくか 読人知らず
0864 おもふどち まとゐせる夜は 唐锦 たたまく惜しき ものにぞありける 読人知らず
0865 うれしきを 何につつまむ 唐衣 袂ゆたかに たてと言はましを 読人知らず
0866 かぎりなき 君がためにと 折る花は 时しもわかぬ ものにぞありける 読人知らず
0867 紫の ひともとゆゑに 武蔵野の 草はみながら あはれとぞ见る 読人知らず
0868 紫の 色浓き时は めもはるに 野なる草木ぞ 别れざりける 在原业平
0869 色なしと 人や见るらむ 昔より 深き心に 染めてしものを 近院右大臣
0870 日の光 薮しわかねば いそのかみ ふりにし里に 花も咲きけり 布留今道
0871 大原や をしほの山も 今日こそは 神世のことも 思ひいづらめ 在原业平
0872 天つ风 云のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 良岑宗贞
0873 主や谁 问へど白玉 言はなくに さらばなべてや あはれと思はむ 河原左大臣
0874 玉だれの こがめやいづら こよろぎの 矶の浪わけ 冲にいでにけり 藤原敏行
0875 かたちこそ み山隠れの 朽ち木なれ 心は花に なさばなりなむ 兼芸法师
0876 蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど 移り香浓くも 匂ひぬるかな 纪友则
0877 遅くいづる 月にもあるかな あしひきの 山のあなたも 惜しむべらなり 読人知らず
0878 我が心 なぐさめかねつ 更级や をばすて山に 照る月を见て 読人知らず
0879 おほかたは 月をもめでじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの 在原业平
0880 かつ见れば うとくもあるかな 月影の いたらぬ里も あらじと思へば 纪贯之
0881 ふたつなき ものと思ひしを 水底に 山の端ならで いづる月影 纪贯之
0882 天の河 云のみをにて はやければ 光とどめず 月ぞ流るる 読人知らず
0883 あかずして 月の隠るる 山もとは あなたおもてぞ 恋しかりける 読人知らず
0884 あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ 在原业平
0885 大空を 照りゆく月し 清ければ 云隠せども 光けなくに 尼敬信
0886 いそのかみ ふるから小野の もとかしは もとの心は 忘られなくに 読人知らず
0887 いにしへの 野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞくむ 読人知らず
0888 いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり 読人知らず
0889 今こそあれ 我も昔は 男山 さかゆく时も ありこしものを 読人知らず
0890 世の中に ふりぬるものは 津の国の 长柄の桥と 我となりけり 読人知らず
0891 笹の叶に 降りつむ雪の うれを重み もとくだちゆく 我がさかりはも 読人知らず
0892 大荒木の もりの下草 おいぬれば 驹もすさめず かる人もなし 読人知らず
0893 かぞふれば とまらぬものを 年といひて 今年はいたく 老いぞしにける 読人知らず
0894 おしてるや 难波の水に 焼く塩の からくも我は 老いにけるかな 読人知らず
0895 老いらくの 来むと知りせば 门さして なしと答へて あはざらましを 読人知らず
0896 さかさまに 年もゆかなむ とりもあへず すぐる齢や ともにかへると 読人知らず
0897 とりとむる ものにしあらねば 年月を あはれあなうと すぐしつるかな 読人知らず
0898 とどめあへず むべも年とは いはれけり しかもつれなく すぐる齢か 読人知らず
0899 镜山 いざ立ち寄りて 见てゆかむ 年へぬる身は 老いやしぬると 読人知らず
0900 老いぬれば さらぬ别れも ありと言へば いよいよ见まく ほしき君かな 业平朝臣母
0901 世の中に さらぬ别れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため 在原业平
0902 白雪の 八重降りしける かへる山 かへるがへるも 老いにけるかな 在原栋梁
0903 老いぬとて などか我が身を せめきけむ 老いずは今日に あはましものか 藤原敏行
0904 ちはやぶる 宇治の桥守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年のへぬれば 読人知らず
0905 我见ても 久しくなりぬ 住の江の 岸の姫松 几世へぬらむ 読人知らず
0906 住吉の 岸の姫松 人ならば 几世かへしと 问はましものを 読人知らず
0907 梓弓 矶辺の小松 たが世にか よろづ世かねて 种をまきけむ 読人知らず
0908 かくしつつ 世をやつくさむ 高砂の 尾上に立てる 松ならなくに 読人知らず
0909 谁をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 藤原兴风
0910 わたつみの 冲つ潮あひに 浮かぶ泡の 消えぬものから 寄る方もなし 読人知らず
0911 わたつみの かざしにさせる 白妙の 浪もてゆへる 淡路岛山 読人知らず
0912 わたの原 寄せくる浪の しばしばも 见まくのほしき 玉津岛かも 読人知らず
0913 难波潟 潮満ちくらし 雨衣 たみのの岛に たづ鸣き渡る 読人知らず
0914 君を思ひ おきつの浜に 鸣くたづの 寻ねくればぞ ありとだに闻く 藤原忠房
0915 冲つ浪 たかしの浜の 浜松の 名にこそ君を 待ちわたりつれ 纪贯之
0916 难波潟 おふる玉藻を かりそめの 海人とぞ我は なりぬべらなる 纪贯之
0917 住吉と 海人は告ぐとも 长居すな 人忘れ草 おふと言ふなり 壬生忠岑
0918 雨により たみのの岛を 今日ゆけど 名には隠れぬ ものにぞありける 纪贯之
0919 あしたづの 立てる川辺を 吹く风に 寄せてかへらぬ 浪かとぞ见る 纪贯之
0920 水の上に 浮かべる舟の 君ならば ここぞとまりと 言はましものを 伊势
0921 みやこまで ひびきかよへる からことは 浪のをすげて 风ぞひきける 真静法师
0922 こき散らす 滝の白玉 拾ひおきて 世の忧き时の 涙にぞかる 在原行平
0923 ぬき乱る 人こそあるらし 白玉の まなくも散るか 袖のせばきに 在原业平
0924 谁がために 引きてさらせる 布なれや 世をへて见れど とる人もなき 承均法师
0925 清滝の 瀬ぜの白糸 くりためて 山わけごろも 织りて着ましを 神退法师
0926 たちぬはぬ 衣着し人も なきものを なに山姫の 布さらすらむ 伊势
0927 主なくて さらせる布を 七夕に 我が心とや 今日はかさまし 橘长盛
0928 落ちたぎつ 滝の水上 年つもり 老いにけらしな 黒き筋なし 壬生忠岑
0929 风吹けど ところも去らぬ 白云は 世をへて落つる 水にぞありける 凡河内躬恒
0930 思ひせく 心の内の 滝なれや 落つとは见れど 音の闻こえぬ 三条町
0931 咲きそめし 时よりのちは うちはへて 世は春なれや 色の常なる 纪贯之
0932 かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋の忧ければ 坂上是则
0863 我が上に 露ぞ置くなる 天の河 と渡る舟の 櫂のしづくか 読人知らず
0864 おもふどち まとゐせる夜は 唐锦 たたまく惜しき ものにぞありける 読人知らず
0865 うれしきを 何につつまむ 唐衣 袂ゆたかに たてと言はましを 読人知らず
0866 かぎりなき 君がためにと 折る花は 时しもわかぬ ものにぞありける 読人知らず
0867 紫の ひともとゆゑに 武蔵野の 草はみながら あはれとぞ见る 読人知らず
0868 紫の 色浓き时は めもはるに 野なる草木ぞ 别れざりける 在原业平
0869 色なしと 人や见るらむ 昔より 深き心に 染めてしものを 近院右大臣
0870 日の光 薮しわかねば いそのかみ ふりにし里に 花も咲きけり 布留今道
0871 大原や をしほの山も 今日こそは 神世のことも 思ひいづらめ 在原业平
0872 天つ风 云のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 良岑宗贞
0873 主や谁 问へど白玉 言はなくに さらばなべてや あはれと思はむ 河原左大臣
0874 玉だれの こがめやいづら こよろぎの 矶の浪わけ 冲にいでにけり 藤原敏行
0875 かたちこそ み山隠れの 朽ち木なれ 心は花に なさばなりなむ 兼芸法师
0876 蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど 移り香浓くも 匂ひぬるかな 纪友则
0877 遅くいづる 月にもあるかな あしひきの 山のあなたも 惜しむべらなり 読人知らず
0878 我が心 なぐさめかねつ 更级や をばすて山に 照る月を见て 読人知らず
0879 おほかたは 月をもめでじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの 在原业平
0880 かつ见れば うとくもあるかな 月影の いたらぬ里も あらじと思へば 纪贯之
0881 ふたつなき ものと思ひしを 水底に 山の端ならで いづる月影 纪贯之
0882 天の河 云のみをにて はやければ 光とどめず 月ぞ流るる 読人知らず
0883 あかずして 月の隠るる 山もとは あなたおもてぞ 恋しかりける 読人知らず
0884 あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ 在原业平
0885 大空を 照りゆく月し 清ければ 云隠せども 光けなくに 尼敬信
0886 いそのかみ ふるから小野の もとかしは もとの心は 忘られなくに 読人知らず
0887 いにしへの 野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞくむ 読人知らず
0888 いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり 読人知らず
0889 今こそあれ 我も昔は 男山 さかゆく时も ありこしものを 読人知らず
0890 世の中に ふりぬるものは 津の国の 长柄の桥と 我となりけり 読人知らず
0891 笹の叶に 降りつむ雪の うれを重み もとくだちゆく 我がさかりはも 読人知らず
0892 大荒木の もりの下草 おいぬれば 驹もすさめず かる人もなし 読人知らず
0893 かぞふれば とまらぬものを 年といひて 今年はいたく 老いぞしにける 読人知らず
0894 おしてるや 难波の水に 焼く塩の からくも我は 老いにけるかな 読人知らず
0895 老いらくの 来むと知りせば 门さして なしと答へて あはざらましを 読人知らず
0896 さかさまに 年もゆかなむ とりもあへず すぐる齢や ともにかへると 読人知らず
0897 とりとむる ものにしあらねば 年月を あはれあなうと すぐしつるかな 読人知らず
0898 とどめあへず むべも年とは いはれけり しかもつれなく すぐる齢か 読人知らず
0899 镜山 いざ立ち寄りて 见てゆかむ 年へぬる身は 老いやしぬると 読人知らず
0900 老いぬれば さらぬ别れも ありと言へば いよいよ见まく ほしき君かな 业平朝臣母
0901 世の中に さらぬ别れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため 在原业平
0902 白雪の 八重降りしける かへる山 かへるがへるも 老いにけるかな 在原栋梁
0903 老いぬとて などか我が身を せめきけむ 老いずは今日に あはましものか 藤原敏行
0904 ちはやぶる 宇治の桥守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年のへぬれば 読人知らず
0905 我见ても 久しくなりぬ 住の江の 岸の姫松 几世へぬらむ 読人知らず
0906 住吉の 岸の姫松 人ならば 几世かへしと 问はましものを 読人知らず
0907 梓弓 矶辺の小松 たが世にか よろづ世かねて 种をまきけむ 読人知らず
0908 かくしつつ 世をやつくさむ 高砂の 尾上に立てる 松ならなくに 読人知らず
0909 谁をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 藤原兴风
0910 わたつみの 冲つ潮あひに 浮かぶ泡の 消えぬものから 寄る方もなし 読人知らず
0911 わたつみの かざしにさせる 白妙の 浪もてゆへる 淡路岛山 読人知らず
0912 わたの原 寄せくる浪の しばしばも 见まくのほしき 玉津岛かも 読人知らず
0913 难波潟 潮満ちくらし 雨衣 たみのの岛に たづ鸣き渡る 読人知らず
0914 君を思ひ おきつの浜に 鸣くたづの 寻ねくればぞ ありとだに闻く 藤原忠房
0915 冲つ浪 たかしの浜の 浜松の 名にこそ君を 待ちわたりつれ 纪贯之
0916 难波潟 おふる玉藻を かりそめの 海人とぞ我は なりぬべらなる 纪贯之
0917 住吉と 海人は告ぐとも 长居すな 人忘れ草 おふと言ふなり 壬生忠岑
0918 雨により たみのの岛を 今日ゆけど 名には隠れぬ ものにぞありける 纪贯之
0919 あしたづの 立てる川辺を 吹く风に 寄せてかへらぬ 浪かとぞ见る 纪贯之
0920 水の上に 浮かべる舟の 君ならば ここぞとまりと 言はましものを 伊势
0921 みやこまで ひびきかよへる からことは 浪のをすげて 风ぞひきける 真静法师
0922 こき散らす 滝の白玉 拾ひおきて 世の忧き时の 涙にぞかる 在原行平
0923 ぬき乱る 人こそあるらし 白玉の まなくも散るか 袖のせばきに 在原业平
0924 谁がために 引きてさらせる 布なれや 世をへて见れど とる人もなき 承均法师
0925 清滝の 瀬ぜの白糸 くりためて 山わけごろも 织りて着ましを 神退法师
0926 たちぬはぬ 衣着し人も なきものを なに山姫の 布さらすらむ 伊势
0927 主なくて さらせる布を 七夕に 我が心とや 今日はかさまし 橘长盛
0928 落ちたぎつ 滝の水上 年つもり 老いにけらしな 黒き筋なし 壬生忠岑
0929 风吹けど ところも去らぬ 白云は 世をへて落つる 水にぞありける 凡河内躬恒
0930 思ひせく 心の内の 滝なれや 落つとは见れど 音の闻こえぬ 三条町
0931 咲きそめし 时よりのちは うちはへて 世は春なれや 色の常なる 纪贯之
0932 かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋の忧ければ 坂上是则
巻十六 哀伤歌
0829 泣く涙 雨と降らなむ わたり川 水まさりなば かへりくるがに 小野篁
0830 血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ 素性法师
0831 空蝉は 壳を见つつも なぐさめつ 深草の山 烟だにたて 僧都胜延
0832 深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け 上野岑雄
0833 寝ても见ゆ 寝でも见えけり おほかたは 空蝉の世ぞ 梦にはありける 纪友则
0834 梦とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな 纪贯之
0835 寝るが内に 见るをのみやは 梦と言はむ はかなき世をも うつつとは见ず 壬生忠岑
0836 瀬をせけば 渊となりても 淀みけり 别れを止むる しがらみぞなき 壬生忠岑
0837 先立たぬ くいのやちたび かなしきは 流るる水の かへり来ぬなり 闲院
0838 明日知らぬ 我が身と思へど 暮れぬ间の 今日は人こそ かなしかりけれ 纪贯之
0839 时しもあれ 秋やは人の 别るべき あるを见るだに 恋しきものを 壬生忠岑
0840 神无月 时雨に濡るる もみぢ叶は ただわび人の 袂なりけり 凡河内躬恒
0841 藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 绪とぞなりける 壬生忠岑
0842 朝露の おくての山田 かりそめに うき世の中を 思ひぬるかな 纪贯之
0843 墨染めの 君が袂は 云なれや 绝えず涙の 雨とのみ降る 壬生忠岑
0844 あしひきの 山辺に今は 墨染めの 衣の袖は ひる时もなし 読人知らず
0845 水の面に しづく花の色 さやかにも 君が御影の 思ほゆるかな 小野篁
0846 草深き 霞の谷に かげ隠し 照る日の暮れし 今日にやはあらぬ 文屋康秀
0847 みな人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ 僧正遍照
0848 うちつけに さびしくもあるか もみぢ叶も 主なき宿は 色なかりけり 近院右大臣
0849 郭公 今朝鸣く声に おどろけば 君に别れし 时にぞありける 纪贯之
0850 花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれを先に 恋ひむとか见し 纪茂行
0851 色も香も 昔の浓さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき 纪贯之
0852 君まさで 烟绝えにし 塩釜の うらさびしくも 见え渡るかな 纪贯之
0853 君が植ゑし ひとむら薄 虫の音の しげき野辺とも なりにけるかな 御春有辅
0854 ことならば 言の叶さへも 消えななむ 见れば涙の 滝まさりけり 纪友则
0855 なき人の 宿にかよはば 郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ 読人知らず
0856 谁见よと 花咲けるらむ 白云の たつ野とはやく なりにしものを 読人知らず
0857 かずかずに 我を忘れぬ ものならば 山の霞を あはれとは见よ 読人知らず
0858 声をだに 闻かで别るる たまよりも なき床に寝む 君ぞかなしき 読人知らず
0859 もみぢ叶を 风にまかせて 见るよりも はかなきものは 命なりけり 大江千里
0860 露をなど あだなるものと 思ひけむ 我が身も草に 置かぬばかりを 藤原惟干
0861 つひにゆく 道とはかねて 闻きしかど 昨日今日とは 思はざりしを 在原业平
0862 かりそめの 行きかひぢとぞ 思ひこし 今はかぎりの 门出なりけり 在原滋春
0829 泣く涙 雨と降らなむ わたり川 水まさりなば かへりくるがに 小野篁
0830 血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ 素性法师
0831 空蝉は 壳を见つつも なぐさめつ 深草の山 烟だにたて 僧都胜延
0832 深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け 上野岑雄
0833 寝ても见ゆ 寝でも见えけり おほかたは 空蝉の世ぞ 梦にはありける 纪友则
0834 梦とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな 纪贯之
0835 寝るが内に 见るをのみやは 梦と言はむ はかなき世をも うつつとは见ず 壬生忠岑
0836 瀬をせけば 渊となりても 淀みけり 别れを止むる しがらみぞなき 壬生忠岑
0837 先立たぬ くいのやちたび かなしきは 流るる水の かへり来ぬなり 闲院
0838 明日知らぬ 我が身と思へど 暮れぬ间の 今日は人こそ かなしかりけれ 纪贯之
0839 时しもあれ 秋やは人の 别るべき あるを见るだに 恋しきものを 壬生忠岑
0840 神无月 时雨に濡るる もみぢ叶は ただわび人の 袂なりけり 凡河内躬恒
0841 藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 绪とぞなりける 壬生忠岑
0842 朝露の おくての山田 かりそめに うき世の中を 思ひぬるかな 纪贯之
0843 墨染めの 君が袂は 云なれや 绝えず涙の 雨とのみ降る 壬生忠岑
0844 あしひきの 山辺に今は 墨染めの 衣の袖は ひる时もなし 読人知らず
0845 水の面に しづく花の色 さやかにも 君が御影の 思ほゆるかな 小野篁
0846 草深き 霞の谷に かげ隠し 照る日の暮れし 今日にやはあらぬ 文屋康秀
0847 みな人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ 僧正遍照
0848 うちつけに さびしくもあるか もみぢ叶も 主なき宿は 色なかりけり 近院右大臣
0849 郭公 今朝鸣く声に おどろけば 君に别れし 时にぞありける 纪贯之
0850 花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれを先に 恋ひむとか见し 纪茂行
0851 色も香も 昔の浓さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき 纪贯之
0852 君まさで 烟绝えにし 塩釜の うらさびしくも 见え渡るかな 纪贯之
0853 君が植ゑし ひとむら薄 虫の音の しげき野辺とも なりにけるかな 御春有辅
0854 ことならば 言の叶さへも 消えななむ 见れば涙の 滝まさりけり 纪友则
0855 なき人の 宿にかよはば 郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ 読人知らず
0856 谁见よと 花咲けるらむ 白云の たつ野とはやく なりにしものを 読人知らず
0857 かずかずに 我を忘れぬ ものならば 山の霞を あはれとは见よ 読人知らず
0858 声をだに 闻かで别るる たまよりも なき床に寝む 君ぞかなしき 読人知らず
0859 もみぢ叶を 风にまかせて 见るよりも はかなきものは 命なりけり 大江千里
0860 露をなど あだなるものと 思ひけむ 我が身も草に 置かぬばかりを 藤原惟干
0861 つひにゆく 道とはかねて 闻きしかど 昨日今日とは 思はざりしを 在原业平
0862 かりそめの 行きかひぢとぞ 思ひこし 今はかぎりの 门出なりけり 在原滋春




