巻二十 大歌所御歌·神游びのうた·东歌
1069 新しき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきをつめ 読人知らず
1070 しもとゆふ かづらき山に 降る雪の 间なく时なく 思ほゆるかな 読人知らず
1071 近江より 朝立ちくれば うねの野に たづぞ鸣くなる 明けぬこの夜は 読人知らず
1072 水くきの 冈のやかたに 妹とあれと 寝ての朝けの 霜の降りはも 読人知らず
1073 しはつ山 うちいでて见れば 笠ゆひの 岛こぎ隠る 棚なし小舟 読人知らず
1074 神がきの みむろの山の さかき叶は 神のみまへに しげりあひにけり 読人知らず
1075 霜やたび 置けど枯れせぬ さかき叶の たち栄ゆべき 神のきねかも 読人知らず
1076 まきもくの あなしの山の 山びとと 人も见るがに 山かづらせよ 読人知らず
1077 み山には あられ降るらし と山なる まさきのかづら 色づきにけり 読人知らず
1078 陆奥の 安达の真弓 我が引かば 末さへよりこ しのびしのびに 読人知らず
1079 我が门の いたゐの清水 里远み 人しくまねば み草おひにけり 読人知らず
1080 ささのくま ひのくま川に 驹とめて しばし水かへ かげをだに见む 読人知らず
1081 青柳を 片糸によりて うぐひすの ぬふてふ笠は 梅の花笠 読人知らず
1082 まがねふく 吉备の中山 帯にせる 细谷川の 音のさやけさ 読人知らず
1083 みまさかや 久米のさら山 さらさらに 我が名は立てじ 万代までに 読人知らず
1084 美浓の国 せきの藤川 绝えずして 君につかへむ 万代までに 読人知らず
1085 君が代は かぎりもあらじ 长浜の 真砂の数は 読みつくすとも 読人知らず
1086 近江のや 镜の山を 立てたれば かねてぞ见ゆる 君が千歳は 大友黒主
1087 阿武隈に 雾立ちくもり 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし 読人知らず
1088 陆奥は いづくはあれど 塩釜の 浦こぐ舟の 纲手かなしも 読人知らず
1089 我が背子を みやこにやりて 塩釜の まがきの岛の 松ぞ恋しき 読人知らず
1090 をぐろさき みつの小岛の 人ならば みやこのつとに いざと言はましを 読人知らず
1091 みさぶらひ みかさと申せ 宫城野の この下露は 雨にまされり 読人知らず
1092 最上川 のぼればくだる 稲舟の いなにはあらず この月ばかり 読人知らず
1093 君をおきて あだし心を 我がもたば 末の松山 浪も越えなむ 読人知らず
1094 こよろぎの 矶たちならし 矶菜つむ めざしぬらすな 冲にをれ浪 読人知らず
1095 つくばねの このもかのもに かげはあれど 君が御影に ますかげはなし 読人知らず
1096 つくばねの 峰のもみぢ叶 落ちつもり 知るも知らぬも なべてかなしも 読人知らず
1097 甲斐がねを さやにも见しか けけれなく 横ほりふせる 小夜の中山 読人知らず
1098 甲斐がねを ねこし山こし 吹く风を 人にもがもや ことづてやらむ 読人知らず
1099 をふのうらに 片枝さしおほひ なる梨の なりもならずも 寝てかたらはむ 読人知らず
1100 ちはやぶる 贺茂のやしろの 姫小松 よろづ世ふとも 色はかはらじ 藤原敏行
1069 新しき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきをつめ 読人知らず
1070 しもとゆふ かづらき山に 降る雪の 间なく时なく 思ほゆるかな 読人知らず
1071 近江より 朝立ちくれば うねの野に たづぞ鸣くなる 明けぬこの夜は 読人知らず
1072 水くきの 冈のやかたに 妹とあれと 寝ての朝けの 霜の降りはも 読人知らず
1073 しはつ山 うちいでて见れば 笠ゆひの 岛こぎ隠る 棚なし小舟 読人知らず
1074 神がきの みむろの山の さかき叶は 神のみまへに しげりあひにけり 読人知らず
1075 霜やたび 置けど枯れせぬ さかき叶の たち栄ゆべき 神のきねかも 読人知らず
1076 まきもくの あなしの山の 山びとと 人も见るがに 山かづらせよ 読人知らず
1077 み山には あられ降るらし と山なる まさきのかづら 色づきにけり 読人知らず
1078 陆奥の 安达の真弓 我が引かば 末さへよりこ しのびしのびに 読人知らず
1079 我が门の いたゐの清水 里远み 人しくまねば み草おひにけり 読人知らず
1080 ささのくま ひのくま川に 驹とめて しばし水かへ かげをだに见む 読人知らず
1081 青柳を 片糸によりて うぐひすの ぬふてふ笠は 梅の花笠 読人知らず
1082 まがねふく 吉备の中山 帯にせる 细谷川の 音のさやけさ 読人知らず
1083 みまさかや 久米のさら山 さらさらに 我が名は立てじ 万代までに 読人知らず
1084 美浓の国 せきの藤川 绝えずして 君につかへむ 万代までに 読人知らず
1085 君が代は かぎりもあらじ 长浜の 真砂の数は 読みつくすとも 読人知らず
1086 近江のや 镜の山を 立てたれば かねてぞ见ゆる 君が千歳は 大友黒主
1087 阿武隈に 雾立ちくもり 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし 読人知らず
1088 陆奥は いづくはあれど 塩釜の 浦こぐ舟の 纲手かなしも 読人知らず
1089 我が背子を みやこにやりて 塩釜の まがきの岛の 松ぞ恋しき 読人知らず
1090 をぐろさき みつの小岛の 人ならば みやこのつとに いざと言はましを 読人知らず
1091 みさぶらひ みかさと申せ 宫城野の この下露は 雨にまされり 読人知らず
1092 最上川 のぼればくだる 稲舟の いなにはあらず この月ばかり 読人知らず
1093 君をおきて あだし心を 我がもたば 末の松山 浪も越えなむ 読人知らず
1094 こよろぎの 矶たちならし 矶菜つむ めざしぬらすな 冲にをれ浪 読人知らず
1095 つくばねの このもかのもに かげはあれど 君が御影に ますかげはなし 読人知らず
1096 つくばねの 峰のもみぢ叶 落ちつもり 知るも知らぬも なべてかなしも 読人知らず
1097 甲斐がねを さやにも见しか けけれなく 横ほりふせる 小夜の中山 読人知らず
1098 甲斐がねを ねこし山こし 吹く风を 人にもがもや ことづてやらむ 読人知らず
1099 をふのうらに 片枝さしおほひ なる梨の なりもならずも 寝てかたらはむ 読人知らず
1100 ちはやぶる 贺茂のやしろの 姫小松 よろづ世ふとも 色はかはらじ 藤原敏行
巻十九 雑体
1001 あふことの まれなる色に 思ひそめ 我が身は常に 天云の... 読人知らず
1002 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも绝えず 天彦の... 纪贯之
1003 呉竹の 世よのふること なかりせば いかほの沼の いかにして... 壬生忠岑
1004 君が代に あふ坂山の 岩清水 こ隠れたりと 思ひけるかな 壬生忠岑
1005 ちはやぶる 神无月とや 今朝よりは 云りもあへず 初时雨... 凡河内躬恒
1006 冲つ浪 荒れのみまさる 宫の内は 年へて住みし 伊势の海人も... 伊势
1007 うちわたす をち方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは... 読人知らず
1008 春されば 野辺にまづ咲く 见れどあかぬ花 まひなしに... 読人知らず
1009 初瀬川 ふる川野辺に ふたもとある杉 年をへて またもあひ见む... 読人知らず
1010 君がさす 三笠の山の もみぢ叶の色 神无月 时雨の雨の... 纪贯之
1011 梅の花 见にこそきつれ うぐひすの ひとくひとくと いとひしもをる 読人知らず
1012 山吹の 花色衣 主や谁 问へど答へず くちなしにして 素性法师
1013 いくばくの 田をつくればか 郭公 しでの田をさを 朝な朝な呼ぶ 藤原敏行
1014 いつしかと またく心を 胫にあげて 天の河原を 今日や渡らむ 藤原兼辅
1015 むつごとも まだつきなくに 明けぬめり いづらは秋の 长してふ夜は 凡河内躬恒
1016 秋の野に なまめきたてる 女郎花 あなかしかまし 花もひと时 僧正遍照
1017 秋くれば 野辺にたはるる 女郎花 いづれの人か つまで见るべき 読人知らず
1018 秋雾の 晴れて昙れば 女郎花 花の姿ぞ 见え隠れする 読人知らず
1019 花と见て 折らむとすれば 女郎花 うたたあるさまの 名にこそありけれ 読人知らず
1020 秋风に ほころびぬらし 藤ばかま つづりさせてふ きりぎりす鸣く 在原栋梁
1021 冬ながら 春のとなりの 近ければ 中垣よりぞ 花は散りける 清原深养父
1022 いそのかみ ふりにし恋の かみさびて たたるに我は いぞ寝かねつる 読人知らず
1023 枕より あとより恋の せめくれば せむ方なみぞ 床なかにをる 読人知らず
1024 恋しきが 方も方こそ ありと闻け たてれをれども なき心地かな 読人知らず
1025 ありぬやと こころみがてら あひ见ねば たはぶれにくき までぞ恋しき 読人知らず
1026 耳なしの 山のくちなし えてしかな 思ひの色の 下染めにせむ 読人知らず
1027 あしひきの 山田のそほづ おのれさへ 我をほしてふ うれはしきこと 読人知らず
1028 富士の岭の ならぬ思ひに もえばもえ 神だにけたぬ むなし烟を 纪乳母
1029 あひ见まく 星は数なく ありながら 人に月なみ 惑ひこそすれ 纪有朋
1030 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて 胸はしり火に 心やけをり 小野小町
1031 春霞 たなびく野辺の 若菜にも なり见てしかな 人もつむやと 藤原兴风
1032 思へども なほうとまれぬ 春霞 かからぬ山も あらじと思へば 読人知らず
1033 春の野の しげき草叶の 妻恋ひに 飞び立つきじの ほろろとぞ鸣く 平贞文
1034 秋の野に 妻なき鹿の 年をへて なぞ我が恋の かひよとぞ鸣く 纪淑人
1035 蝉の羽の 一重に薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらぬ 凡河内躬恒
1036 隠れ沼の 下よりおふる ねぬなはの ねぬなは立てじ くるないとひそ 壬生忠岑
1037 ことならば 思はずとやは 言ひはてぬ なぞ世の中の 玉だすきなる 読人知らず
1038 思ふてふ 人の心の くまごとに 立ち隠れつつ 见るよしもがな 読人知らず
1039 思へども 思はずとのみ 言ふなれば いなや思はじ 思ふかひなし 読人知らず
1040 我をのみ 思ふと言はば あるべきを いでや心は おほぬさにして 読人知らず
1041 我を思ふ 人を思はぬ むくいにや 我が思ふ人の 我を思はぬ 読人知らず
1042 思ひけむ 人をぞ共に 思はまし まさしやむくい なかりけりやは 清原深养父
1043 いでてゆかむ 人をとどめむ よしなきに となりの方に 鼻もひぬかな 読人知らず
1044 红に 染めし心も たのまれず 人をあくには うつるてふなり 読人知らず
1045 いとはるる 我が身は春の 驹なれや 野がひがてらに 放ち舍てつつ 読人知らず
1046 うぐひすの 去年の宿りの ふるすとや 我には人の つれなかるらむ 読人知らず
1047 さかしらに 夏は人まね 笹の叶の さやぐ霜夜を 我がひとり寝る 読人知らず
1048 あふことの 今ははつかに なりぬれば 夜深からでは 月なかりけり 平中兴
1049 もろこしの 吉野の山に こもるとも おくれむと思ふ 我ならなくに 左大臣
1050 云はれぬ 浅间の山の あさましや 人の心を 见てこそやまめ 平中兴
1051 难波なる 长柄の桥も つくるなり 今は我が身を 何にたとへむ 伊势
1052 まめなれど 何ぞはよけく 刈るかやの 乱れてあれど あしけくもなし 読人知らず
1053 何かその 名の立つことの 惜しからむ 知りて惑ふは 我ひとりかは 藤原兴风
1054 よそながら 我が身に糸の よると言へば ただいつはりに すぐばかりなり 久曽
1055 ねぎことを さのみ闻きけむ やしろこそ はてはなげきの もりとなるらめ 讃岐
1056 なげきこる 山とし高く なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける 大辅
1057 なげきをば こりのみつみて あしひきの 山のかひなく なりぬべらなり 読人知らず
1058 人恋ふる ことを重荷と になひもて あふごなきこそ わびしかりけれ 読人知らず
1059 宵の间に いでて入りぬる 三日月の われて物思ふ ころにもあるかな 読人知らず
1060 そゑにとて とすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに 読人知らず
1061 世の中の うきたびごとに 身を投げば 深き谷こそ 浅くなりなめ 読人知らず
1062 世の中は いかにくるしと 思ふらむ ここらの人に うらみらるれば 在原元方
1063 何をして 身のいたづらに 老いぬらむ 年の思はむ ことぞやさしき 読人知らず
1064 身は舍てつ 心をだにも はふらさじ つひにはいかが なると知るべく 藤原兴风
1065 白雪の ともに我が身は 降りぬれど 心は消えぬ ものにぞありける 大江千里
1066 梅の花 咲きてののちの 身なればや すきものとのみ 人の言ふらむ 読人知らず
1067 わびしらに ましらな鸣きそ あしひきの 山のかひある 今日にやはあらぬ 凡河内躬恒
1068 世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり 読人知らず
1001 あふことの まれなる色に 思ひそめ 我が身は常に 天云の... 読人知らず
1002 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも绝えず 天彦の... 纪贯之
1003 呉竹の 世よのふること なかりせば いかほの沼の いかにして... 壬生忠岑
1004 君が代に あふ坂山の 岩清水 こ隠れたりと 思ひけるかな 壬生忠岑
1005 ちはやぶる 神无月とや 今朝よりは 云りもあへず 初时雨... 凡河内躬恒
1006 冲つ浪 荒れのみまさる 宫の内は 年へて住みし 伊势の海人も... 伊势
1007 うちわたす をち方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは... 読人知らず
1008 春されば 野辺にまづ咲く 见れどあかぬ花 まひなしに... 読人知らず
1009 初瀬川 ふる川野辺に ふたもとある杉 年をへて またもあひ见む... 読人知らず
1010 君がさす 三笠の山の もみぢ叶の色 神无月 时雨の雨の... 纪贯之
1011 梅の花 见にこそきつれ うぐひすの ひとくひとくと いとひしもをる 読人知らず
1012 山吹の 花色衣 主や谁 问へど答へず くちなしにして 素性法师
1013 いくばくの 田をつくればか 郭公 しでの田をさを 朝な朝な呼ぶ 藤原敏行
1014 いつしかと またく心を 胫にあげて 天の河原を 今日や渡らむ 藤原兼辅
1015 むつごとも まだつきなくに 明けぬめり いづらは秋の 长してふ夜は 凡河内躬恒
1016 秋の野に なまめきたてる 女郎花 あなかしかまし 花もひと时 僧正遍照
1017 秋くれば 野辺にたはるる 女郎花 いづれの人か つまで见るべき 読人知らず
1018 秋雾の 晴れて昙れば 女郎花 花の姿ぞ 见え隠れする 読人知らず
1019 花と见て 折らむとすれば 女郎花 うたたあるさまの 名にこそありけれ 読人知らず
1020 秋风に ほころびぬらし 藤ばかま つづりさせてふ きりぎりす鸣く 在原栋梁
1021 冬ながら 春のとなりの 近ければ 中垣よりぞ 花は散りける 清原深养父
1022 いそのかみ ふりにし恋の かみさびて たたるに我は いぞ寝かねつる 読人知らず
1023 枕より あとより恋の せめくれば せむ方なみぞ 床なかにをる 読人知らず
1024 恋しきが 方も方こそ ありと闻け たてれをれども なき心地かな 読人知らず
1025 ありぬやと こころみがてら あひ见ねば たはぶれにくき までぞ恋しき 読人知らず
1026 耳なしの 山のくちなし えてしかな 思ひの色の 下染めにせむ 読人知らず
1027 あしひきの 山田のそほづ おのれさへ 我をほしてふ うれはしきこと 読人知らず
1028 富士の岭の ならぬ思ひに もえばもえ 神だにけたぬ むなし烟を 纪乳母
1029 あひ见まく 星は数なく ありながら 人に月なみ 惑ひこそすれ 纪有朋
1030 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて 胸はしり火に 心やけをり 小野小町
1031 春霞 たなびく野辺の 若菜にも なり见てしかな 人もつむやと 藤原兴风
1032 思へども なほうとまれぬ 春霞 かからぬ山も あらじと思へば 読人知らず
1033 春の野の しげき草叶の 妻恋ひに 飞び立つきじの ほろろとぞ鸣く 平贞文
1034 秋の野に 妻なき鹿の 年をへて なぞ我が恋の かひよとぞ鸣く 纪淑人
1035 蝉の羽の 一重に薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらぬ 凡河内躬恒
1036 隠れ沼の 下よりおふる ねぬなはの ねぬなは立てじ くるないとひそ 壬生忠岑
1037 ことならば 思はずとやは 言ひはてぬ なぞ世の中の 玉だすきなる 読人知らず
1038 思ふてふ 人の心の くまごとに 立ち隠れつつ 见るよしもがな 読人知らず
1039 思へども 思はずとのみ 言ふなれば いなや思はじ 思ふかひなし 読人知らず
1040 我をのみ 思ふと言はば あるべきを いでや心は おほぬさにして 読人知らず
1041 我を思ふ 人を思はぬ むくいにや 我が思ふ人の 我を思はぬ 読人知らず
1042 思ひけむ 人をぞ共に 思はまし まさしやむくい なかりけりやは 清原深养父
1043 いでてゆかむ 人をとどめむ よしなきに となりの方に 鼻もひぬかな 読人知らず
1044 红に 染めし心も たのまれず 人をあくには うつるてふなり 読人知らず
1045 いとはるる 我が身は春の 驹なれや 野がひがてらに 放ち舍てつつ 読人知らず
1046 うぐひすの 去年の宿りの ふるすとや 我には人の つれなかるらむ 読人知らず
1047 さかしらに 夏は人まね 笹の叶の さやぐ霜夜を 我がひとり寝る 読人知らず
1048 あふことの 今ははつかに なりぬれば 夜深からでは 月なかりけり 平中兴
1049 もろこしの 吉野の山に こもるとも おくれむと思ふ 我ならなくに 左大臣
1050 云はれぬ 浅间の山の あさましや 人の心を 见てこそやまめ 平中兴
1051 难波なる 长柄の桥も つくるなり 今は我が身を 何にたとへむ 伊势
1052 まめなれど 何ぞはよけく 刈るかやの 乱れてあれど あしけくもなし 読人知らず
1053 何かその 名の立つことの 惜しからむ 知りて惑ふは 我ひとりかは 藤原兴风
1054 よそながら 我が身に糸の よると言へば ただいつはりに すぐばかりなり 久曽
1055 ねぎことを さのみ闻きけむ やしろこそ はてはなげきの もりとなるらめ 讃岐
1056 なげきこる 山とし高く なりぬれば つらづゑのみぞ まづつかれける 大辅
1057 なげきをば こりのみつみて あしひきの 山のかひなく なりぬべらなり 読人知らず
1058 人恋ふる ことを重荷と になひもて あふごなきこそ わびしかりけれ 読人知らず
1059 宵の间に いでて入りぬる 三日月の われて物思ふ ころにもあるかな 読人知らず
1060 そゑにとて とすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに 読人知らず
1061 世の中の うきたびごとに 身を投げば 深き谷こそ 浅くなりなめ 読人知らず
1062 世の中は いかにくるしと 思ふらむ ここらの人に うらみらるれば 在原元方
1063 何をして 身のいたづらに 老いぬらむ 年の思はむ ことぞやさしき 読人知らず
1064 身は舍てつ 心をだにも はふらさじ つひにはいかが なると知るべく 藤原兴风
1065 白雪の ともに我が身は 降りぬれど 心は消えぬ ものにぞありける 大江千里
1066 梅の花 咲きてののちの 身なればや すきものとのみ 人の言ふらむ 読人知らず
1067 わびしらに ましらな鸣きそ あしひきの 山のかひある 今日にやはあらぬ 凡河内躬恒
1068 世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり 読人知らず
巻十八 雑歌下
0933 世の中は 何か常なる 飞鸟川 昨日の渊ぞ 今日は瀬になる 読人知らず
0934 几世しも あらじ我が身を なぞもかく 海人の刈る藻に 思ひ乱るる 読人知らず
0935 雁の来る 峰の朝雾 晴れずのみ 思ひつきせぬ 世の中の忧さ 読人知らず
0936 しかりとて そむかれなくに ことしあれば まづなげかれぬ あなう世の中 小野篁
0937 みやこ人 いかがと问はば 山高み 晴れぬ云ゐに わぶと答へよ 小野贞树
0938 わびぬれば 身を浮草の 根を绝えて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ 小野小町
0939 あはれてふ ことこそうたて 世の中を 思ひはなれぬ ほだしなりけれ 小野小町
0940 あはれてふ 言の叶ごとに 置く露は 昔を恋ふる 涙なりけり 読人知らず
0941 世の中の うきもつらきも 告げなくに まづ知るものは 涙なりけり 読人知らず
0942 世の中は 梦かうつつか うつつとも 梦とも知らず ありてなければ 読人知らず
0943 世の中に いづら我が身の ありてなし あはれとや言はむ あなうとや言はむ 読人知らず
0944 山里は もののわびしき ことこそあれ 世の忧きよりは 住みよかりけり 読人知らず
0945 白云の 绝えずたなびく 峰にだに 住めば住みぬる 世にこそありけれ 惟乔亲王
0946 知りにけむ 闻きてもいとへ 世の中は 浪の騒ぎに 风ぞしくめる 布留今道
0947 いづこにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ 素性法师
0948 世の中は 昔よりやは うかりけむ 我が身ひとつの ためになれるか 読人知らず
0949 世の中を いとふ山辺の 草木とや あなうの花の 色にいでにけむ 読人知らず
0950 み吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の忧き时の 隠れがにせむ 読人知らず
0951 世にふれば 忧さこそまされ み吉野の 岩のかけ道 踏みならしてむ 読人知らず
0952 いかならむ 巌の中に 住まばかは 世の忧きことの 闻こえこざらむ 読人知らず
0953 あしひきの 山のまにまに 隠れなむ うき世の中は あるかひもなし 読人知らず
0954 世の中の うけくにあきぬ 奥山の 木の叶に降れる 雪やけなまし 読人知らず
0955 世のうきめ 见えぬ山ぢへ 入らむには 思ふ人こそ ほだしなりけれ 物部吉名
0956 世を舍てて 山にいる人 山にても なほ忧き时は いづち行くらむ 凡河内躬恒
0957 今さらに なにおひいづらむ 竹の子の うき节しげき 世とは知らずや 凡河内躬恒
0958 世にふれば 言の叶しげき 呉竹の うき节ごとに うぐひすぞ鸣く 読人知らず
0959 木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの 端に我が身は なりぬべらなり 読人知らず
0960 我が身から うき世の中と 名づけつつ 人のためさへ かなしかるらむ 読人知らず
0961 思ひきや ひなの别れに おとろへて 海人の縄たき いさりせむとは 小野篁
0962 わくらばに 问ふ人あらば 须磨の浦に 藻塩たれつつ わぶと答へよ 在原行平
0963 天彦の おとづれじとぞ 今は思ふ 我か人かと 身をたどる世に 小野春风
0964 うき世には 门させりとも 见えなくに などか我が身の いでがてにする 平贞文
0965 ありはてぬ 命待つ间の ほどばかり うきことしげく 思はずもがな 平贞文
0966 つくばねの 木のもとごとに 立ちぞ寄る 春のみ山の かげを恋つつ 宫道洁兴
0967 光なき 谷には春も よそなれば 咲きてとく散る 物思ひもなし 清原深养父
0968 久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる 伊势
0969 今ぞ知る 苦しきものと 人待たむ 里をばかれず 问ふべかりけり 在原业平
0970 忘れては 梦かとぞ思ふ 思ひきや 雪踏みわけて 君を见むとは 在原业平
0971 年をへて 住みこし里を いでていなば いとど深草 野とやなりなむ 在原业平
0972 野とならば うづらとなきて 年はへむ かりにだにやは 君がこざらむ 読人知らず
0973 我を君 难波の浦に ありしかば うきめをみつの 海人となりにき 読人知らず
0974 难波潟 うらむべきまも 思ほえず いづこをみつの 海人とかはなる 読人知らず
0975 今さらに 问ふべき人も 思ほえず 八重むぐらして 门させりてへ 読人知らず
0976 水の面に おふる五月の 浮草の うきことあれや 根を绝えて来ぬ 凡河内躬恒
0977 身を舍てて ゆきやしにけむ 思ふより 外なるものは 心なりけり 凡河内躬恒
0978 君が思ひ 雪とつもらば たのまれず 春よりのちは あらじと思へば 凡河内躬恒
0979 君をのみ 思ひこしぢの 白山は いつかは雪の 消ゆる时ある 宗岳大頼
0980 思ひやる 越の白山 知らねども ひと夜も梦に 越えぬ夜ぞなき 纪贯之
0981 いざここに 我が世はへなむ 菅原や 伏见の里の 荒れまくも惜し 読人知らず
0982 我が庵は 三轮の山もと 恋しくは とぶらひきませ 杉たてる门 読人知らず
0983 我が庵は みやこのたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人は言ふなり 喜撰法师
0984 荒れにけり あはれ几世の 宿なれや 住みけむ人の おとづれもせぬ 読人知らず
0985 わび人の 住むべき宿と 见るなへに 叹きくははる 琴の音ぞする 良岑宗贞
0986 人ふるす 里をいとひて こしかども 奈良のみやこも うき名なりけり 二条
0987 世の中は いづれかさして 我がならむ 行きとまるをぞ 宿とさだむる 読人知らず
0988 あふ坂の 岚の风は 寒けれど ゆくへ知らねば わびつつぞ寝る 読人知らず
0989 风の上に ありかさだめぬ 尘の身は ゆくへも知らず なりぬべらなり 読人知らず
0990 飞鸟川 渊にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける 伊势
0991 ふるさとは 见しごともあらず 斧の柄の 朽ちしところぞ 恋しかりける 纪友则
0992 あかざりし 袖の中にや 入りにけむ 我がたましひの なき心地する 陆奥
0993 なよ竹の よ长き上に 初霜の おきゐて物を 思ふころかな 藤原忠房
0994 风吹けば 冲つ白浪 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらむ 読人知らず
0995 たがみそぎ ゆふつけ鸟か 唐衣 たつたの山に をりはへて鸣く 読人知らず
0996 忘られむ 时しのべとぞ 浜千鸟 ゆくへも知らぬ 迹をとどむる 読人知らず
0997 神无月 时雨降りおける ならの叶の 名におふ宫の ふることぞこれ 文屋有季
0998 あしたづの ひとりおくれて 鸣く声は 云の上まで 闻こえつがなむ 大江千里
0999 人知れず 思ふ心は 春霞 たちいでて君が 目にも见えなむ 藤原胜臣
1000 山川の 音にのみ闻く ももしきを 身をはやながら 见るよしもがな 伊势
0933 世の中は 何か常なる 飞鸟川 昨日の渊ぞ 今日は瀬になる 読人知らず
0934 几世しも あらじ我が身を なぞもかく 海人の刈る藻に 思ひ乱るる 読人知らず
0935 雁の来る 峰の朝雾 晴れずのみ 思ひつきせぬ 世の中の忧さ 読人知らず
0936 しかりとて そむかれなくに ことしあれば まづなげかれぬ あなう世の中 小野篁
0937 みやこ人 いかがと问はば 山高み 晴れぬ云ゐに わぶと答へよ 小野贞树
0938 わびぬれば 身を浮草の 根を绝えて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ 小野小町
0939 あはれてふ ことこそうたて 世の中を 思ひはなれぬ ほだしなりけれ 小野小町
0940 あはれてふ 言の叶ごとに 置く露は 昔を恋ふる 涙なりけり 読人知らず
0941 世の中の うきもつらきも 告げなくに まづ知るものは 涙なりけり 読人知らず
0942 世の中は 梦かうつつか うつつとも 梦とも知らず ありてなければ 読人知らず
0943 世の中に いづら我が身の ありてなし あはれとや言はむ あなうとや言はむ 読人知らず
0944 山里は もののわびしき ことこそあれ 世の忧きよりは 住みよかりけり 読人知らず
0945 白云の 绝えずたなびく 峰にだに 住めば住みぬる 世にこそありけれ 惟乔亲王
0946 知りにけむ 闻きてもいとへ 世の中は 浪の騒ぎに 风ぞしくめる 布留今道
0947 いづこにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ 素性法师
0948 世の中は 昔よりやは うかりけむ 我が身ひとつの ためになれるか 読人知らず
0949 世の中を いとふ山辺の 草木とや あなうの花の 色にいでにけむ 読人知らず
0950 み吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の忧き时の 隠れがにせむ 読人知らず
0951 世にふれば 忧さこそまされ み吉野の 岩のかけ道 踏みならしてむ 読人知らず
0952 いかならむ 巌の中に 住まばかは 世の忧きことの 闻こえこざらむ 読人知らず
0953 あしひきの 山のまにまに 隠れなむ うき世の中は あるかひもなし 読人知らず
0954 世の中の うけくにあきぬ 奥山の 木の叶に降れる 雪やけなまし 読人知らず
0955 世のうきめ 见えぬ山ぢへ 入らむには 思ふ人こそ ほだしなりけれ 物部吉名
0956 世を舍てて 山にいる人 山にても なほ忧き时は いづち行くらむ 凡河内躬恒
0957 今さらに なにおひいづらむ 竹の子の うき节しげき 世とは知らずや 凡河内躬恒
0958 世にふれば 言の叶しげき 呉竹の うき节ごとに うぐひすぞ鸣く 読人知らず
0959 木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの 端に我が身は なりぬべらなり 読人知らず
0960 我が身から うき世の中と 名づけつつ 人のためさへ かなしかるらむ 読人知らず
0961 思ひきや ひなの别れに おとろへて 海人の縄たき いさりせむとは 小野篁
0962 わくらばに 问ふ人あらば 须磨の浦に 藻塩たれつつ わぶと答へよ 在原行平
0963 天彦の おとづれじとぞ 今は思ふ 我か人かと 身をたどる世に 小野春风
0964 うき世には 门させりとも 见えなくに などか我が身の いでがてにする 平贞文
0965 ありはてぬ 命待つ间の ほどばかり うきことしげく 思はずもがな 平贞文
0966 つくばねの 木のもとごとに 立ちぞ寄る 春のみ山の かげを恋つつ 宫道洁兴
0967 光なき 谷には春も よそなれば 咲きてとく散る 物思ひもなし 清原深养父
0968 久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる 伊势
0969 今ぞ知る 苦しきものと 人待たむ 里をばかれず 问ふべかりけり 在原业平
0970 忘れては 梦かとぞ思ふ 思ひきや 雪踏みわけて 君を见むとは 在原业平
0971 年をへて 住みこし里を いでていなば いとど深草 野とやなりなむ 在原业平
0972 野とならば うづらとなきて 年はへむ かりにだにやは 君がこざらむ 読人知らず
0973 我を君 难波の浦に ありしかば うきめをみつの 海人となりにき 読人知らず
0974 难波潟 うらむべきまも 思ほえず いづこをみつの 海人とかはなる 読人知らず
0975 今さらに 问ふべき人も 思ほえず 八重むぐらして 门させりてへ 読人知らず
0976 水の面に おふる五月の 浮草の うきことあれや 根を绝えて来ぬ 凡河内躬恒
0977 身を舍てて ゆきやしにけむ 思ふより 外なるものは 心なりけり 凡河内躬恒
0978 君が思ひ 雪とつもらば たのまれず 春よりのちは あらじと思へば 凡河内躬恒
0979 君をのみ 思ひこしぢの 白山は いつかは雪の 消ゆる时ある 宗岳大頼
0980 思ひやる 越の白山 知らねども ひと夜も梦に 越えぬ夜ぞなき 纪贯之
0981 いざここに 我が世はへなむ 菅原や 伏见の里の 荒れまくも惜し 読人知らず
0982 我が庵は 三轮の山もと 恋しくは とぶらひきませ 杉たてる门 読人知らず
0983 我が庵は みやこのたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人は言ふなり 喜撰法师
0984 荒れにけり あはれ几世の 宿なれや 住みけむ人の おとづれもせぬ 読人知らず
0985 わび人の 住むべき宿と 见るなへに 叹きくははる 琴の音ぞする 良岑宗贞
0986 人ふるす 里をいとひて こしかども 奈良のみやこも うき名なりけり 二条
0987 世の中は いづれかさして 我がならむ 行きとまるをぞ 宿とさだむる 読人知らず
0988 あふ坂の 岚の风は 寒けれど ゆくへ知らねば わびつつぞ寝る 読人知らず
0989 风の上に ありかさだめぬ 尘の身は ゆくへも知らず なりぬべらなり 読人知らず
0990 飞鸟川 渊にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける 伊势
0991 ふるさとは 见しごともあらず 斧の柄の 朽ちしところぞ 恋しかりける 纪友则
0992 あかざりし 袖の中にや 入りにけむ 我がたましひの なき心地する 陆奥
0993 なよ竹の よ长き上に 初霜の おきゐて物を 思ふころかな 藤原忠房
0994 风吹けば 冲つ白浪 たつた山 夜半にや君が ひとりこゆらむ 読人知らず
0995 たがみそぎ ゆふつけ鸟か 唐衣 たつたの山に をりはへて鸣く 読人知らず
0996 忘られむ 时しのべとぞ 浜千鸟 ゆくへも知らぬ 迹をとどむる 読人知らず
0997 神无月 时雨降りおける ならの叶の 名におふ宫の ふることぞこれ 文屋有季
0998 あしたづの ひとりおくれて 鸣く声は 云の上まで 闻こえつがなむ 大江千里
0999 人知れず 思ふ心は 春霞 たちいでて君が 目にも见えなむ 藤原胜臣
1000 山川の 音にのみ闻く ももしきを 身をはやながら 见るよしもがな 伊势
巻十七 雑歌上
0863 我が上に 露ぞ置くなる 天の河 と渡る舟の 櫂のしづくか 読人知らず
0864 おもふどち まとゐせる夜は 唐锦 たたまく惜しき ものにぞありける 読人知らず
0865 うれしきを 何につつまむ 唐衣 袂ゆたかに たてと言はましを 読人知らず
0866 かぎりなき 君がためにと 折る花は 时しもわかぬ ものにぞありける 読人知らず
0867 紫の ひともとゆゑに 武蔵野の 草はみながら あはれとぞ见る 読人知らず
0868 紫の 色浓き时は めもはるに 野なる草木ぞ 别れざりける 在原业平
0869 色なしと 人や见るらむ 昔より 深き心に 染めてしものを 近院右大臣
0870 日の光 薮しわかねば いそのかみ ふりにし里に 花も咲きけり 布留今道
0871 大原や をしほの山も 今日こそは 神世のことも 思ひいづらめ 在原业平
0872 天つ风 云のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 良岑宗贞
0873 主や谁 问へど白玉 言はなくに さらばなべてや あはれと思はむ 河原左大臣
0874 玉だれの こがめやいづら こよろぎの 矶の浪わけ 冲にいでにけり 藤原敏行
0875 かたちこそ み山隠れの 朽ち木なれ 心は花に なさばなりなむ 兼芸法师
0876 蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど 移り香浓くも 匂ひぬるかな 纪友则
0877 遅くいづる 月にもあるかな あしひきの 山のあなたも 惜しむべらなり 読人知らず
0878 我が心 なぐさめかねつ 更级や をばすて山に 照る月を见て 読人知らず
0879 おほかたは 月をもめでじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの 在原业平
0880 かつ见れば うとくもあるかな 月影の いたらぬ里も あらじと思へば 纪贯之
0881 ふたつなき ものと思ひしを 水底に 山の端ならで いづる月影 纪贯之
0882 天の河 云のみをにて はやければ 光とどめず 月ぞ流るる 読人知らず
0883 あかずして 月の隠るる 山もとは あなたおもてぞ 恋しかりける 読人知らず
0884 あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ 在原业平
0885 大空を 照りゆく月し 清ければ 云隠せども 光けなくに 尼敬信
0886 いそのかみ ふるから小野の もとかしは もとの心は 忘られなくに 読人知らず
0887 いにしへの 野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞくむ 読人知らず
0888 いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり 読人知らず
0889 今こそあれ 我も昔は 男山 さかゆく时も ありこしものを 読人知らず
0890 世の中に ふりぬるものは 津の国の 长柄の桥と 我となりけり 読人知らず
0891 笹の叶に 降りつむ雪の うれを重み もとくだちゆく 我がさかりはも 読人知らず
0892 大荒木の もりの下草 おいぬれば 驹もすさめず かる人もなし 読人知らず
0893 かぞふれば とまらぬものを 年といひて 今年はいたく 老いぞしにける 読人知らず
0894 おしてるや 难波の水に 焼く塩の からくも我は 老いにけるかな 読人知らず
0895 老いらくの 来むと知りせば 门さして なしと答へて あはざらましを 読人知らず
0896 さかさまに 年もゆかなむ とりもあへず すぐる齢や ともにかへると 読人知らず
0897 とりとむる ものにしあらねば 年月を あはれあなうと すぐしつるかな 読人知らず
0898 とどめあへず むべも年とは いはれけり しかもつれなく すぐる齢か 読人知らず
0899 镜山 いざ立ち寄りて 见てゆかむ 年へぬる身は 老いやしぬると 読人知らず
0900 老いぬれば さらぬ别れも ありと言へば いよいよ见まく ほしき君かな 业平朝臣母
0901 世の中に さらぬ别れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため 在原业平
0902 白雪の 八重降りしける かへる山 かへるがへるも 老いにけるかな 在原栋梁
0903 老いぬとて などか我が身を せめきけむ 老いずは今日に あはましものか 藤原敏行
0904 ちはやぶる 宇治の桥守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年のへぬれば 読人知らず
0905 我见ても 久しくなりぬ 住の江の 岸の姫松 几世へぬらむ 読人知らず
0906 住吉の 岸の姫松 人ならば 几世かへしと 问はましものを 読人知らず
0907 梓弓 矶辺の小松 たが世にか よろづ世かねて 种をまきけむ 読人知らず
0908 かくしつつ 世をやつくさむ 高砂の 尾上に立てる 松ならなくに 読人知らず
0909 谁をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 藤原兴风
0910 わたつみの 冲つ潮あひに 浮かぶ泡の 消えぬものから 寄る方もなし 読人知らず
0911 わたつみの かざしにさせる 白妙の 浪もてゆへる 淡路岛山 読人知らず
0912 わたの原 寄せくる浪の しばしばも 见まくのほしき 玉津岛かも 読人知らず
0913 难波潟 潮満ちくらし 雨衣 たみのの岛に たづ鸣き渡る 読人知らず
0914 君を思ひ おきつの浜に 鸣くたづの 寻ねくればぞ ありとだに闻く 藤原忠房
0915 冲つ浪 たかしの浜の 浜松の 名にこそ君を 待ちわたりつれ 纪贯之
0916 难波潟 おふる玉藻を かりそめの 海人とぞ我は なりぬべらなる 纪贯之
0917 住吉と 海人は告ぐとも 长居すな 人忘れ草 おふと言ふなり 壬生忠岑
0918 雨により たみのの岛を 今日ゆけど 名には隠れぬ ものにぞありける 纪贯之
0919 あしたづの 立てる川辺を 吹く风に 寄せてかへらぬ 浪かとぞ见る 纪贯之
0920 水の上に 浮かべる舟の 君ならば ここぞとまりと 言はましものを 伊势
0921 みやこまで ひびきかよへる からことは 浪のをすげて 风ぞひきける 真静法师
0922 こき散らす 滝の白玉 拾ひおきて 世の忧き时の 涙にぞかる 在原行平
0923 ぬき乱る 人こそあるらし 白玉の まなくも散るか 袖のせばきに 在原业平
0924 谁がために 引きてさらせる 布なれや 世をへて见れど とる人もなき 承均法师
0925 清滝の 瀬ぜの白糸 くりためて 山わけごろも 织りて着ましを 神退法师
0926 たちぬはぬ 衣着し人も なきものを なに山姫の 布さらすらむ 伊势
0927 主なくて さらせる布を 七夕に 我が心とや 今日はかさまし 橘长盛
0928 落ちたぎつ 滝の水上 年つもり 老いにけらしな 黒き筋なし 壬生忠岑
0929 风吹けど ところも去らぬ 白云は 世をへて落つる 水にぞありける 凡河内躬恒
0930 思ひせく 心の内の 滝なれや 落つとは见れど 音の闻こえぬ 三条町
0931 咲きそめし 时よりのちは うちはへて 世は春なれや 色の常なる 纪贯之
0932 かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋の忧ければ 坂上是则
0863 我が上に 露ぞ置くなる 天の河 と渡る舟の 櫂のしづくか 読人知らず
0864 おもふどち まとゐせる夜は 唐锦 たたまく惜しき ものにぞありける 読人知らず
0865 うれしきを 何につつまむ 唐衣 袂ゆたかに たてと言はましを 読人知らず
0866 かぎりなき 君がためにと 折る花は 时しもわかぬ ものにぞありける 読人知らず
0867 紫の ひともとゆゑに 武蔵野の 草はみながら あはれとぞ见る 読人知らず
0868 紫の 色浓き时は めもはるに 野なる草木ぞ 别れざりける 在原业平
0869 色なしと 人や见るらむ 昔より 深き心に 染めてしものを 近院右大臣
0870 日の光 薮しわかねば いそのかみ ふりにし里に 花も咲きけり 布留今道
0871 大原や をしほの山も 今日こそは 神世のことも 思ひいづらめ 在原业平
0872 天つ风 云のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ 良岑宗贞
0873 主や谁 问へど白玉 言はなくに さらばなべてや あはれと思はむ 河原左大臣
0874 玉だれの こがめやいづら こよろぎの 矶の浪わけ 冲にいでにけり 藤原敏行
0875 かたちこそ み山隠れの 朽ち木なれ 心は花に なさばなりなむ 兼芸法师
0876 蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど 移り香浓くも 匂ひぬるかな 纪友则
0877 遅くいづる 月にもあるかな あしひきの 山のあなたも 惜しむべらなり 読人知らず
0878 我が心 なぐさめかねつ 更级や をばすて山に 照る月を见て 読人知らず
0879 おほかたは 月をもめでじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの 在原业平
0880 かつ见れば うとくもあるかな 月影の いたらぬ里も あらじと思へば 纪贯之
0881 ふたつなき ものと思ひしを 水底に 山の端ならで いづる月影 纪贯之
0882 天の河 云のみをにて はやければ 光とどめず 月ぞ流るる 読人知らず
0883 あかずして 月の隠るる 山もとは あなたおもてぞ 恋しかりける 読人知らず
0884 あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ 在原业平
0885 大空を 照りゆく月し 清ければ 云隠せども 光けなくに 尼敬信
0886 いそのかみ ふるから小野の もとかしは もとの心は 忘られなくに 読人知らず
0887 いにしへの 野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞくむ 読人知らず
0888 いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり 読人知らず
0889 今こそあれ 我も昔は 男山 さかゆく时も ありこしものを 読人知らず
0890 世の中に ふりぬるものは 津の国の 长柄の桥と 我となりけり 読人知らず
0891 笹の叶に 降りつむ雪の うれを重み もとくだちゆく 我がさかりはも 読人知らず
0892 大荒木の もりの下草 おいぬれば 驹もすさめず かる人もなし 読人知らず
0893 かぞふれば とまらぬものを 年といひて 今年はいたく 老いぞしにける 読人知らず
0894 おしてるや 难波の水に 焼く塩の からくも我は 老いにけるかな 読人知らず
0895 老いらくの 来むと知りせば 门さして なしと答へて あはざらましを 読人知らず
0896 さかさまに 年もゆかなむ とりもあへず すぐる齢や ともにかへると 読人知らず
0897 とりとむる ものにしあらねば 年月を あはれあなうと すぐしつるかな 読人知らず
0898 とどめあへず むべも年とは いはれけり しかもつれなく すぐる齢か 読人知らず
0899 镜山 いざ立ち寄りて 见てゆかむ 年へぬる身は 老いやしぬると 読人知らず
0900 老いぬれば さらぬ别れも ありと言へば いよいよ见まく ほしき君かな 业平朝臣母
0901 世の中に さらぬ别れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため 在原业平
0902 白雪の 八重降りしける かへる山 かへるがへるも 老いにけるかな 在原栋梁
0903 老いぬとて などか我が身を せめきけむ 老いずは今日に あはましものか 藤原敏行
0904 ちはやぶる 宇治の桥守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年のへぬれば 読人知らず
0905 我见ても 久しくなりぬ 住の江の 岸の姫松 几世へぬらむ 読人知らず
0906 住吉の 岸の姫松 人ならば 几世かへしと 问はましものを 読人知らず
0907 梓弓 矶辺の小松 たが世にか よろづ世かねて 种をまきけむ 読人知らず
0908 かくしつつ 世をやつくさむ 高砂の 尾上に立てる 松ならなくに 読人知らず
0909 谁をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 藤原兴风
0910 わたつみの 冲つ潮あひに 浮かぶ泡の 消えぬものから 寄る方もなし 読人知らず
0911 わたつみの かざしにさせる 白妙の 浪もてゆへる 淡路岛山 読人知らず
0912 わたの原 寄せくる浪の しばしばも 见まくのほしき 玉津岛かも 読人知らず
0913 难波潟 潮満ちくらし 雨衣 たみのの岛に たづ鸣き渡る 読人知らず
0914 君を思ひ おきつの浜に 鸣くたづの 寻ねくればぞ ありとだに闻く 藤原忠房
0915 冲つ浪 たかしの浜の 浜松の 名にこそ君を 待ちわたりつれ 纪贯之
0916 难波潟 おふる玉藻を かりそめの 海人とぞ我は なりぬべらなる 纪贯之
0917 住吉と 海人は告ぐとも 长居すな 人忘れ草 おふと言ふなり 壬生忠岑
0918 雨により たみのの岛を 今日ゆけど 名には隠れぬ ものにぞありける 纪贯之
0919 あしたづの 立てる川辺を 吹く风に 寄せてかへらぬ 浪かとぞ见る 纪贯之
0920 水の上に 浮かべる舟の 君ならば ここぞとまりと 言はましものを 伊势
0921 みやこまで ひびきかよへる からことは 浪のをすげて 风ぞひきける 真静法师
0922 こき散らす 滝の白玉 拾ひおきて 世の忧き时の 涙にぞかる 在原行平
0923 ぬき乱る 人こそあるらし 白玉の まなくも散るか 袖のせばきに 在原业平
0924 谁がために 引きてさらせる 布なれや 世をへて见れど とる人もなき 承均法师
0925 清滝の 瀬ぜの白糸 くりためて 山わけごろも 织りて着ましを 神退法师
0926 たちぬはぬ 衣着し人も なきものを なに山姫の 布さらすらむ 伊势
0927 主なくて さらせる布を 七夕に 我が心とや 今日はかさまし 橘长盛
0928 落ちたぎつ 滝の水上 年つもり 老いにけらしな 黒き筋なし 壬生忠岑
0929 风吹けど ところも去らぬ 白云は 世をへて落つる 水にぞありける 凡河内躬恒
0930 思ひせく 心の内の 滝なれや 落つとは见れど 音の闻こえぬ 三条町
0931 咲きそめし 时よりのちは うちはへて 世は春なれや 色の常なる 纪贯之
0932 かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋の忧ければ 坂上是则
巻十六 哀伤歌
0829 泣く涙 雨と降らなむ わたり川 水まさりなば かへりくるがに 小野篁
0830 血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ 素性法师
0831 空蝉は 壳を见つつも なぐさめつ 深草の山 烟だにたて 僧都胜延
0832 深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け 上野岑雄
0833 寝ても见ゆ 寝でも见えけり おほかたは 空蝉の世ぞ 梦にはありける 纪友则
0834 梦とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな 纪贯之
0835 寝るが内に 见るをのみやは 梦と言はむ はかなき世をも うつつとは见ず 壬生忠岑
0836 瀬をせけば 渊となりても 淀みけり 别れを止むる しがらみぞなき 壬生忠岑
0837 先立たぬ くいのやちたび かなしきは 流るる水の かへり来ぬなり 闲院
0838 明日知らぬ 我が身と思へど 暮れぬ间の 今日は人こそ かなしかりけれ 纪贯之
0839 时しもあれ 秋やは人の 别るべき あるを见るだに 恋しきものを 壬生忠岑
0840 神无月 时雨に濡るる もみぢ叶は ただわび人の 袂なりけり 凡河内躬恒
0841 藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 绪とぞなりける 壬生忠岑
0842 朝露の おくての山田 かりそめに うき世の中を 思ひぬるかな 纪贯之
0843 墨染めの 君が袂は 云なれや 绝えず涙の 雨とのみ降る 壬生忠岑
0844 あしひきの 山辺に今は 墨染めの 衣の袖は ひる时もなし 読人知らず
0845 水の面に しづく花の色 さやかにも 君が御影の 思ほゆるかな 小野篁
0846 草深き 霞の谷に かげ隠し 照る日の暮れし 今日にやはあらぬ 文屋康秀
0847 みな人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ 僧正遍照
0848 うちつけに さびしくもあるか もみぢ叶も 主なき宿は 色なかりけり 近院右大臣
0849 郭公 今朝鸣く声に おどろけば 君に别れし 时にぞありける 纪贯之
0850 花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれを先に 恋ひむとか见し 纪茂行
0851 色も香も 昔の浓さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき 纪贯之
0852 君まさで 烟绝えにし 塩釜の うらさびしくも 见え渡るかな 纪贯之
0853 君が植ゑし ひとむら薄 虫の音の しげき野辺とも なりにけるかな 御春有辅
0854 ことならば 言の叶さへも 消えななむ 见れば涙の 滝まさりけり 纪友则
0855 なき人の 宿にかよはば 郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ 読人知らず
0856 谁见よと 花咲けるらむ 白云の たつ野とはやく なりにしものを 読人知らず
0857 かずかずに 我を忘れぬ ものならば 山の霞を あはれとは见よ 読人知らず
0858 声をだに 闻かで别るる たまよりも なき床に寝む 君ぞかなしき 読人知らず
0859 もみぢ叶を 风にまかせて 见るよりも はかなきものは 命なりけり 大江千里
0860 露をなど あだなるものと 思ひけむ 我が身も草に 置かぬばかりを 藤原惟干
0861 つひにゆく 道とはかねて 闻きしかど 昨日今日とは 思はざりしを 在原业平
0862 かりそめの 行きかひぢとぞ 思ひこし 今はかぎりの 门出なりけり 在原滋春
0829 泣く涙 雨と降らなむ わたり川 水まさりなば かへりくるがに 小野篁
0830 血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ 素性法师
0831 空蝉は 壳を见つつも なぐさめつ 深草の山 烟だにたて 僧都胜延
0832 深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け 上野岑雄
0833 寝ても见ゆ 寝でも见えけり おほかたは 空蝉の世ぞ 梦にはありける 纪友则
0834 梦とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな 纪贯之
0835 寝るが内に 见るをのみやは 梦と言はむ はかなき世をも うつつとは见ず 壬生忠岑
0836 瀬をせけば 渊となりても 淀みけり 别れを止むる しがらみぞなき 壬生忠岑
0837 先立たぬ くいのやちたび かなしきは 流るる水の かへり来ぬなり 闲院
0838 明日知らぬ 我が身と思へど 暮れぬ间の 今日は人こそ かなしかりけれ 纪贯之
0839 时しもあれ 秋やは人の 别るべき あるを见るだに 恋しきものを 壬生忠岑
0840 神无月 时雨に濡るる もみぢ叶は ただわび人の 袂なりけり 凡河内躬恒
0841 藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 绪とぞなりける 壬生忠岑
0842 朝露の おくての山田 かりそめに うき世の中を 思ひぬるかな 纪贯之
0843 墨染めの 君が袂は 云なれや 绝えず涙の 雨とのみ降る 壬生忠岑
0844 あしひきの 山辺に今は 墨染めの 衣の袖は ひる时もなし 読人知らず
0845 水の面に しづく花の色 さやかにも 君が御影の 思ほゆるかな 小野篁
0846 草深き 霞の谷に かげ隠し 照る日の暮れし 今日にやはあらぬ 文屋康秀
0847 みな人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ 僧正遍照
0848 うちつけに さびしくもあるか もみぢ叶も 主なき宿は 色なかりけり 近院右大臣
0849 郭公 今朝鸣く声に おどろけば 君に别れし 时にぞありける 纪贯之
0850 花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれを先に 恋ひむとか见し 纪茂行
0851 色も香も 昔の浓さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき 纪贯之
0852 君まさで 烟绝えにし 塩釜の うらさびしくも 见え渡るかな 纪贯之
0853 君が植ゑし ひとむら薄 虫の音の しげき野辺とも なりにけるかな 御春有辅
0854 ことならば 言の叶さへも 消えななむ 见れば涙の 滝まさりけり 纪友则
0855 なき人の 宿にかよはば 郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ 読人知らず
0856 谁见よと 花咲けるらむ 白云の たつ野とはやく なりにしものを 読人知らず
0857 かずかずに 我を忘れぬ ものならば 山の霞を あはれとは见よ 読人知らず
0858 声をだに 闻かで别るる たまよりも なき床に寝む 君ぞかなしき 読人知らず
0859 もみぢ叶を 风にまかせて 见るよりも はかなきものは 命なりけり 大江千里
0860 露をなど あだなるものと 思ひけむ 我が身も草に 置かぬばかりを 藤原惟干
0861 つひにゆく 道とはかねて 闻きしかど 昨日今日とは 思はざりしを 在原业平
0862 かりそめの 行きかひぢとぞ 思ひこし 今はかぎりの 门出なりけり 在原滋春
巻十五 恋歌五
0747 月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ 我が身ひとつは もとの身にして 在原业平
0748 花薄 我こそ下に 思ひしか 穂にいでて人に 结ばれにけり 藤原仲平
0749 よそにのみ 闻かましものを 音羽川 渡るとなしに 见なれそめけむ 藤原兼辅
0750 我がごとく 我を思はむ 人もがな さてもや忧きと 世をこころみむ 凡河内躬恒
0751 久方の 天つ空にも すまなくに 人はよそにぞ 思ふべらなる 在原元方
0752 见てもまた またも见まくの ほしければ なるるを人は いとふべらなり 読人知らず
0753 云もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ 纪友则
0754 花がたみ 目ならぶ人の あまたあれば 忘られぬらむ 数ならぬ身は 読人知らず
0755 うきめのみ おひて流るる 浦なれば かりにのみこそ 海人は寄るらめ 読人知らず
0756 あひにあひて 物思ふころの 我が袖に 宿る月さへ 濡るるかほなる 伊势
0757 秋ならで 置く白露は 寝ざめする 我が手枕の しづくなりけり 読人知らず
0758 须磨の海人の 塩やき衣 をさをあらみ まどほにあれや 君がきまさぬ 読人知らず
0759 山しろの 淀のわかごも かりにだに 来ぬ人たのむ 我ぞはかなき 読人知らず
0760 あひ见ねば 恋こそまされ みなせ川 何に深めて 思ひそめけむ 読人知らず
0761 暁の しぎの羽がき ももはがき 君が来ぬ夜は 我ぞ数かく 読人知らず
0762 玉かづら 今は绝ゆとや 吹く风の 音にも人の 闻こえざるらむ 読人知らず
0763 我が袖に まだき时雨の 降りぬるは 君が心に 秋や来ぬらむ 読人知らず
0764 山の井の 浅き心も 思はぬに 影ばかりのみ 人の见ゆらむ 読人知らず
0765 忘れ草 种とらましを あふことの いとかくかたき ものと知りせば 読人知らず
0766 恋ふれども あふ夜のなきは 忘れ草 梦ぢにさへや おひしげるらむ 読人知らず
0767 梦にだに あふことかたく なりゆくは 我やいを寝ぬ 人や忘るる 読人知らず
0768 もろこしも 梦に见しかば 近かりき 思はぬなかぞ はるけかりける 兼芸法师
0769 ひとりのみ ながめふるやの つまなれば 人をしのぶの 草ぞおひける 贞登
0770 我が宿は 道もなきまで 荒れにけり つれなき人を 待つとせしまに 僧正遍照
0771 今こむと 言ひて别れし あしたより 思ひくらしの 音をのみぞ鸣く 僧正遍照
0772 こめやとは 思ふものから ひぐらしの 鸣く夕暮れは 立ち待たれつつ 読人知らず
0773 今しはと わびにしものを ささがにの 衣にかかり 我をたのむる 読人知らず
0774 今はこじと 思ふものから 忘れつつ 待たるることの まだもやまぬか 読人知らず
0775 月夜には 来ぬ人待たる かきくもり 雨も降らなむ わびつつも寝む 読人知らず
0776 植ゑていにし 秋田刈るまで 见え来ねば 今朝初雁の 音にぞなきぬる 読人知らず
0777 来ぬ人を 待つ夕暮れの 秋风は いかに吹けばか わびしかるらむ 読人知らず
0778 久しくも なりにけるかな 住の江の 松は苦しき ものにぞありける 読人知らず
0779 住の江の 松ほどひさに なりぬれば あしたづの音に なかぬ日はなし 兼覧王
0780 三轮の山 いかに待ち见む 年ふとも たづぬる人も あらじと思へば 伊势
0781 吹きまよふ 野风を寒み 秋萩の うつりもゆくか 人の心の 云林院亲王
0782 今はとて 我が身时雨に ふりぬれば 言の叶さへに うつろひにけり 小野小町
0783 人を思ふ 心の木の叶に あらばこそ 风のまにまに 散りも乱れめ 小野贞树
0784 天云の よそにも人の なりゆくか さすがに目には 见ゆるものから 纪有常女
0785 行きかへり 空にのみして ふることは 我がゐる山の 风はやみなり 在原业平
0786 唐衣 なれば身にこそ まつはれめ かけてのみやは 恋ひむと思ひし 景式王
0787 秋风は 身をわけてしも 吹かなくに 人の心の 空になるらむ 纪友则
0788 つれもなく なりゆく人の 言の叶ぞ 秋より先の もみぢなりける 源宗于
0789 死出の山 麓を见てぞ かへりにし つらき人より まづ越えじとて 兵卫
0790 时すぎて 枯れゆく小野の あさぢには 今は思ひぞ 绝えずもえける 小野小町姉
0791 冬枯れの 野辺と我が身を 思ひせば もえても春を 待たましものを 伊势
0792 水の泡の 消えてうき身と 言ひながら 流れてなほも たのまるるかな 纪友则
0793 みなせ川 ありて行く水 なくはこそ つひに我が身を 绝えぬと思はめ 読人知らず
0794 吉野川 よしや人こそ つらからめ はやく言ひてし ことは忘れじ 凡河内躬恒
0795 世の中の 人の心は 花染めの うつろひやすき 色にぞありける 読人知らず
0796 心こそ うたてにくけれ 染めざらば うつろふことも 惜しからましや 読人知らず
0797 色见えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける 小野小町
0798 我のみや 世をうぐひすと なきわびむ 人の心の 花と散りなば 読人知らず
0799 思ふとも かれなむ人を いかがせむ あかず散りぬる 花とこそ见め 素性法师
0800 今はとて 君がかれなば 我が宿の 花をばひとり 见てやしのばむ 読人知らず
0801 忘れ草 枯れもやすると つれもなき 人の心に 霜は置かなむ 源宗于
0802 忘れ草 何をか种と 思ひしは つれなき人の 心なりけり 素性法师
0803 秋の田の いねてふことも かけなくに 何を忧しとか 人のかるらむ 兼芸法师
0804 初雁の 鸣きこそ渡れ 世の中の 人の心の 秋し忧ければ 纪贯之
0805 あはれとも 忧しとも物を 思ふ时 などか涙の いとなかるらむ 読人知らず
0806 身を忧しと 思ふに消えぬ ものなれば かくてもへぬる 世にこそありけれ 読人知らず
0807 海人の刈る 藻にすむ虫の 我からと ねをこそなかめ 世をばうらみじ 藤原直子
0808 あひ见ぬも 忧きも我が身の 唐衣 思ひ知らずも とくる纽かな 因幡
0809 つれなきを 今は恋ひじと 思へども 心弱くも 落つる涙か 菅野忠臣
0810 人知れず 绝えなましかば わびつつも なき名ぞとだに 言はましものを 伊势
0811 それをだに 思ふこととて 我が宿を 见きとな言ひそ 人の闻かくに 読人知らず
0812 あふことの もはら绝えぬる 时にこそ 人の恋しき ことも知りけれ 読人知らず
0813 わびはつる 时さへものの かなしきは いづこをしのぶ 涙なるらむ 読人知らず
0814 うらみても 泣きても言はむ 方ぞなき 镜に见ゆる 影ならずして 藤原兴风
0815 夕されば 人なき床を うちはらひ なげかむためと なれる我が身か 読人知らず
0816 わたつみの 我が身こす浪 立ち返り 海人の住むてふ うらみつるかな 読人知らず
0817 あらを田を あらすきかへし かへしても 人の心を 见てこそやまめ 読人知らず
0818 ありそ海の 浜の真砂と たのめしは 忘るることの 数にぞありける 読人知らず
0819 苇辺より 云ゐをさして 行く雁の いや远ざかる 我が身かなしも 読人知らず
0820 时雨つつ もみづるよりも 言の叶の 心の秋に あふぞわびしき 読人知らず
0821 秋风の 吹きと吹きぬる 武蔵野は なべて草叶の 色かはりけり 読人知らず
0822 秋风に あふたのみこそ かなしけれ 我が身むなしく なりぬと思へば 小野小町
0823 秋风の 吹き裏返す くずの叶の うらみてもなほ うらめしきかな 平贞文
0824 秋と言へば よそにぞ闻きし あだ人の 我をふるせる 名にこそありけれ 読人知らず
0825 忘らるる 身を宇治桥の なか绝えて 人もかよはぬ 年ぞへにける 読人知らず
0826 あふことを 长柄の桥の ながらへて 恋ひ渡る间に 年ぞへにける 坂上是则
0827 浮きながら けぬる泡とも なりななむ 流れてとだに たのまれぬ身は 纪友则
0828 流れては 妹背の山の なかに落つる 吉野の川の よしや世の中 読人知らず
0747 月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ 我が身ひとつは もとの身にして 在原业平
0748 花薄 我こそ下に 思ひしか 穂にいでて人に 结ばれにけり 藤原仲平
0749 よそにのみ 闻かましものを 音羽川 渡るとなしに 见なれそめけむ 藤原兼辅
0750 我がごとく 我を思はむ 人もがな さてもや忧きと 世をこころみむ 凡河内躬恒
0751 久方の 天つ空にも すまなくに 人はよそにぞ 思ふべらなる 在原元方
0752 见てもまた またも见まくの ほしければ なるるを人は いとふべらなり 読人知らず
0753 云もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ 纪友则
0754 花がたみ 目ならぶ人の あまたあれば 忘られぬらむ 数ならぬ身は 読人知らず
0755 うきめのみ おひて流るる 浦なれば かりにのみこそ 海人は寄るらめ 読人知らず
0756 あひにあひて 物思ふころの 我が袖に 宿る月さへ 濡るるかほなる 伊势
0757 秋ならで 置く白露は 寝ざめする 我が手枕の しづくなりけり 読人知らず
0758 须磨の海人の 塩やき衣 をさをあらみ まどほにあれや 君がきまさぬ 読人知らず
0759 山しろの 淀のわかごも かりにだに 来ぬ人たのむ 我ぞはかなき 読人知らず
0760 あひ见ねば 恋こそまされ みなせ川 何に深めて 思ひそめけむ 読人知らず
0761 暁の しぎの羽がき ももはがき 君が来ぬ夜は 我ぞ数かく 読人知らず
0762 玉かづら 今は绝ゆとや 吹く风の 音にも人の 闻こえざるらむ 読人知らず
0763 我が袖に まだき时雨の 降りぬるは 君が心に 秋や来ぬらむ 読人知らず
0764 山の井の 浅き心も 思はぬに 影ばかりのみ 人の见ゆらむ 読人知らず
0765 忘れ草 种とらましを あふことの いとかくかたき ものと知りせば 読人知らず
0766 恋ふれども あふ夜のなきは 忘れ草 梦ぢにさへや おひしげるらむ 読人知らず
0767 梦にだに あふことかたく なりゆくは 我やいを寝ぬ 人や忘るる 読人知らず
0768 もろこしも 梦に见しかば 近かりき 思はぬなかぞ はるけかりける 兼芸法师
0769 ひとりのみ ながめふるやの つまなれば 人をしのぶの 草ぞおひける 贞登
0770 我が宿は 道もなきまで 荒れにけり つれなき人を 待つとせしまに 僧正遍照
0771 今こむと 言ひて别れし あしたより 思ひくらしの 音をのみぞ鸣く 僧正遍照
0772 こめやとは 思ふものから ひぐらしの 鸣く夕暮れは 立ち待たれつつ 読人知らず
0773 今しはと わびにしものを ささがにの 衣にかかり 我をたのむる 読人知らず
0774 今はこじと 思ふものから 忘れつつ 待たるることの まだもやまぬか 読人知らず
0775 月夜には 来ぬ人待たる かきくもり 雨も降らなむ わびつつも寝む 読人知らず
0776 植ゑていにし 秋田刈るまで 见え来ねば 今朝初雁の 音にぞなきぬる 読人知らず
0777 来ぬ人を 待つ夕暮れの 秋风は いかに吹けばか わびしかるらむ 読人知らず
0778 久しくも なりにけるかな 住の江の 松は苦しき ものにぞありける 読人知らず
0779 住の江の 松ほどひさに なりぬれば あしたづの音に なかぬ日はなし 兼覧王
0780 三轮の山 いかに待ち见む 年ふとも たづぬる人も あらじと思へば 伊势
0781 吹きまよふ 野风を寒み 秋萩の うつりもゆくか 人の心の 云林院亲王
0782 今はとて 我が身时雨に ふりぬれば 言の叶さへに うつろひにけり 小野小町
0783 人を思ふ 心の木の叶に あらばこそ 风のまにまに 散りも乱れめ 小野贞树
0784 天云の よそにも人の なりゆくか さすがに目には 见ゆるものから 纪有常女
0785 行きかへり 空にのみして ふることは 我がゐる山の 风はやみなり 在原业平
0786 唐衣 なれば身にこそ まつはれめ かけてのみやは 恋ひむと思ひし 景式王
0787 秋风は 身をわけてしも 吹かなくに 人の心の 空になるらむ 纪友则
0788 つれもなく なりゆく人の 言の叶ぞ 秋より先の もみぢなりける 源宗于
0789 死出の山 麓を见てぞ かへりにし つらき人より まづ越えじとて 兵卫
0790 时すぎて 枯れゆく小野の あさぢには 今は思ひぞ 绝えずもえける 小野小町姉
0791 冬枯れの 野辺と我が身を 思ひせば もえても春を 待たましものを 伊势
0792 水の泡の 消えてうき身と 言ひながら 流れてなほも たのまるるかな 纪友则
0793 みなせ川 ありて行く水 なくはこそ つひに我が身を 绝えぬと思はめ 読人知らず
0794 吉野川 よしや人こそ つらからめ はやく言ひてし ことは忘れじ 凡河内躬恒
0795 世の中の 人の心は 花染めの うつろひやすき 色にぞありける 読人知らず
0796 心こそ うたてにくけれ 染めざらば うつろふことも 惜しからましや 読人知らず
0797 色见えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける 小野小町
0798 我のみや 世をうぐひすと なきわびむ 人の心の 花と散りなば 読人知らず
0799 思ふとも かれなむ人を いかがせむ あかず散りぬる 花とこそ见め 素性法师
0800 今はとて 君がかれなば 我が宿の 花をばひとり 见てやしのばむ 読人知らず
0801 忘れ草 枯れもやすると つれもなき 人の心に 霜は置かなむ 源宗于
0802 忘れ草 何をか种と 思ひしは つれなき人の 心なりけり 素性法师
0803 秋の田の いねてふことも かけなくに 何を忧しとか 人のかるらむ 兼芸法师
0804 初雁の 鸣きこそ渡れ 世の中の 人の心の 秋し忧ければ 纪贯之
0805 あはれとも 忧しとも物を 思ふ时 などか涙の いとなかるらむ 読人知らず
0806 身を忧しと 思ふに消えぬ ものなれば かくてもへぬる 世にこそありけれ 読人知らず
0807 海人の刈る 藻にすむ虫の 我からと ねをこそなかめ 世をばうらみじ 藤原直子
0808 あひ见ぬも 忧きも我が身の 唐衣 思ひ知らずも とくる纽かな 因幡
0809 つれなきを 今は恋ひじと 思へども 心弱くも 落つる涙か 菅野忠臣
0810 人知れず 绝えなましかば わびつつも なき名ぞとだに 言はましものを 伊势
0811 それをだに 思ふこととて 我が宿を 见きとな言ひそ 人の闻かくに 読人知らず
0812 あふことの もはら绝えぬる 时にこそ 人の恋しき ことも知りけれ 読人知らず
0813 わびはつる 时さへものの かなしきは いづこをしのぶ 涙なるらむ 読人知らず
0814 うらみても 泣きても言はむ 方ぞなき 镜に见ゆる 影ならずして 藤原兴风
0815 夕されば 人なき床を うちはらひ なげかむためと なれる我が身か 読人知らず
0816 わたつみの 我が身こす浪 立ち返り 海人の住むてふ うらみつるかな 読人知らず
0817 あらを田を あらすきかへし かへしても 人の心を 见てこそやまめ 読人知らず
0818 ありそ海の 浜の真砂と たのめしは 忘るることの 数にぞありける 読人知らず
0819 苇辺より 云ゐをさして 行く雁の いや远ざかる 我が身かなしも 読人知らず
0820 时雨つつ もみづるよりも 言の叶の 心の秋に あふぞわびしき 読人知らず
0821 秋风の 吹きと吹きぬる 武蔵野は なべて草叶の 色かはりけり 読人知らず
0822 秋风に あふたのみこそ かなしけれ 我が身むなしく なりぬと思へば 小野小町
0823 秋风の 吹き裏返す くずの叶の うらみてもなほ うらめしきかな 平贞文
0824 秋と言へば よそにぞ闻きし あだ人の 我をふるせる 名にこそありけれ 読人知らず
0825 忘らるる 身を宇治桥の なか绝えて 人もかよはぬ 年ぞへにける 読人知らず
0826 あふことを 长柄の桥の ながらへて 恋ひ渡る间に 年ぞへにける 坂上是则
0827 浮きながら けぬる泡とも なりななむ 流れてとだに たのまれぬ身は 纪友则
0828 流れては 妹背の山の なかに落つる 吉野の川の よしや世の中 読人知らず
巻十四 恋歌四
0677 陆奥の 安积の沼の 花かつみ かつ见る人に 恋ひや渡らむ 読人知らず
0678 あひ见ずは 恋しきことも なからまし 音にぞ人を 闻くべかりける 読人知らず
0679 いそのかみ ふるのなか道 なかなかに 见ずは恋しと 思はましやは 纪贯之
0680 君と言へば 见まれ见ずまれ 富士の岭の めづらしげなく もゆる我が恋 藤原忠行
0681 梦にだに 见ゆとは见えじ 朝な朝な 我が面影に はづる身なれば 伊势
0682 石间ゆく 水の白浪 立ち返り かくこそは见め あかずもあるかな 読人知らず
0683 伊势の海人の 朝な夕なに かづくてふ みるめに人を あくよしもがな 読人知らず
0684 春霞 たなびく山の 桜花 见れどもあかぬ 君にもあるかな 纪友则
0685 心をぞ わりなきものと 思ひぬる 见るものからや 恋しかるべき 清原深养父
0686 枯れはてむ のちをば知らで 夏草の 深くも人の 思ほゆるかな 凡河内躬恒
0687 飞鸟川 渊は瀬になる 世なりとも 思ひそめてむ 人は忘れじ 読人知らず
0688 思ふてふ 言の叶のみや 秋をへて 色もかはらぬ ものにはあるらむ 読人知らず
0689 さむしろに 衣かたしき 今宵もや 我を待つらむ 宇治の桥姫 読人知らず
0690 君やこむ 我やゆかむの いさよひに 真木の板戸も ささず寝にけり 読人知らず
0691 今こむと 言ひしばかりに 长月の 有明の月を 待ちいでつるかな 素性法师
0692 月夜よし 夜よしと人に つげやらば こてふににたり 待たずしもあらず 読人知らず
0693 君こずは ねやへもいらじ 浓紫 我がもとゆひに 霜は置くとも 読人知らず
0694 宫城野の もとあらの小萩 露を重み 风を待つごと 君をこそ待て 読人知らず
0695 あな恋し 今も见てしか 山がつの かきほにさける 大和抚子 読人知らず
0696 津の国の なには思はず 山しろの とはにあひ见む ことをのみこそ 読人知らず
0697 敷岛や 大和にはあらぬ 唐衣 ころもへずして あふよしもがな 纪贯之
0698 恋しとは たが名づけけむ ことならむ 死ぬとぞただに 言ふべかりける 清原深养父
0699 み吉野の 大川のべの 藤波の なみに思はば 我が恋めやは 読人知らず
0700 かく恋ひむ ものとは我も 思ひにき 心のうらぞ まさしかりける 読人知らず
0701 天の原 ふみとどろかし なる神も 思ふなかをば さくるものかは 読人知らず
0702 梓弓 ひき野のつづら 末つひに 我が思ふ人に ことのしげけむ 読人知らず
0703 夏引きの 手引きの糸を くりかへし ことしげくとも 绝えむと思ふな 読人知らず
0704 里人の ことは夏野の しげくとも 枯れ行く君に あはざらめやは 読人知らず
0705 かずかずに 思ひ思はず とひがたみ 身を知る雨は 降りぞまされる 在原业平
0706 おほぬさの ひくてあまたに なりぬれば 思へどえこそ たのまざりけれ 読人知らず
0707 おほぬさと 名にこそたてれ 流れても つひによる瀬は ありてふものを 在原业平
0708 须磨の海人の 塩やく烟 风をいたみ 思はぬ方に たなびきにけり 読人知らず
0709 玉かづら はふ木あまたに なりぬれば 绝えぬ心の うれしげもなし 読人知らず
0710 たが里に 夜がれをしてか 郭公 ただここにしも 寝たる声する 読人知らず
0711 いで人は ことのみぞよき 月草の うつし心は 色ことにして 読人知らず
0712 いつはりの なき世なりせば いかばかり 人の言の叶 うれしからまし 読人知らず
0713 いつはりと 思ふものから 今さらに たがまことをか 我はたのまむ 読人知らず
0714 秋风に 山の木の叶の うつろへば 人の心も いかがとぞ思ふ 素性法师
0715 蝉の声 闻けばかなしな 夏衣 薄くや人の ならむと思へば 纪友则
0716 空蝉の 世の人ごとの しげければ 忘れぬものの かれぬべらなり 読人知らず
0717 あかでこそ 思はむなかは 离れなめ そをだにのちの 忘れ形见に 読人知らず
0718 忘れなむと 思ふ心の つくからに ありしよりけに まづぞ恋しき 読人知らず
0719 忘れなむ 我をうらむな 郭公 人の秋には あはむともせず 読人知らず
0720 绝えずゆく 飞鸟の川の よどみなば 心あるとや 人の思はむ 読人知らず
0721 淀川の よどむと人は 见るらめど 流れて深き 心あるものを 読人知らず
0722 そこひなき 渊やは騒ぐ 山川の 浅き瀬にこそ あだ浪はたて 素性法师
0723 红の 初花染めの 色深く 思ひし心 我忘れめや 読人知らず
0724 陆奥の しのぶもぢずり 谁ゆゑに 乱れむと思ふ 我ならなくに 河原左大臣
0725 思ふより いかにせよとか 秋风に なびくあさぢの 色ことになる 読人知らず
0726 ちぢの色に うつろふらめど 知らなくに 心し秋の もみぢならねば 読人知らず
0727 海人の住む 里のしるべに あらなくに うらみむとのみ 人の言ふらむ 小野小町
0728 昙り日の 影としなれる 我なれば 目にこそ见えね 身をば离れず 下野雄宗
0729 色もなき 心を人に 染めしより うつろはむとは 思ほえなくに 纪贯之
0730 めづらしき 人を见むとや しかもせぬ 我が下纽の とけ渡るらむ 読人知らず
0731 かげろふの それかあらぬか 春雨の 降る日となれば 袖ぞ濡れぬる 読人知らず
0732 堀江こぐ 棚なし小舟 こぎかへり 同じ人にや 恋ひ渡りなむ 読人知らず
0733 わたつみと 荒れにし床を 今さらに はらはば袖や 泡と浮きなむ 伊势
0734 いにしへに なほ立ち返る 心かな 恋しきことに もの忘れせで 纪贯之
0735 思ひいでて 恋しき时は 初雁の なきて渡ると 人知るらめや 大友黒主
0736 たのめこし 言の叶今は かへしてむ 我が身ふるれば 置きどころなし 藤原因香
0737 今はとて かへす言の叶 拾ひおきて おのがものから 形见とや见む 近院右大臣
0738 玉ぼこの 道はつねにも 惑はなむ 人をとふとも 我かと思はむ 藤原因香
0739 待てと言はば 寝てもゆかなむ しひて行く 驹のあし折れ 前の棚桥 読人知らず
0740 あふ坂の ゆふつけ鸟に あらばこそ 君がゆききを なくなくも见め 闲院
0741 ふるさとに あらぬものから 我がために 人の心の 荒れて见ゆらむ 伊势
0742 山がつの かきほにはへる あをつづら 人はくれども ことづてもなし 宠
0743 大空は 恋しき人の 形见かは 物思ふごとに ながめらるらむ 酒井人真
0744 あふまでの 形见も我は 何せむに 见ても心の なぐさまなくに 読人知らず
0745 あふまでの 形见とてこそ とどめけめ 涙に浮ぶ 藻屑なりけり 藤原兴风
0746 形见こそ 今はあたなれ これなくは 忘るる时も あらましものを 読人知らず
0677 陆奥の 安积の沼の 花かつみ かつ见る人に 恋ひや渡らむ 読人知らず
0678 あひ见ずは 恋しきことも なからまし 音にぞ人を 闻くべかりける 読人知らず
0679 いそのかみ ふるのなか道 なかなかに 见ずは恋しと 思はましやは 纪贯之
0680 君と言へば 见まれ见ずまれ 富士の岭の めづらしげなく もゆる我が恋 藤原忠行
0681 梦にだに 见ゆとは见えじ 朝な朝な 我が面影に はづる身なれば 伊势
0682 石间ゆく 水の白浪 立ち返り かくこそは见め あかずもあるかな 読人知らず
0683 伊势の海人の 朝な夕なに かづくてふ みるめに人を あくよしもがな 読人知らず
0684 春霞 たなびく山の 桜花 见れどもあかぬ 君にもあるかな 纪友则
0685 心をぞ わりなきものと 思ひぬる 见るものからや 恋しかるべき 清原深养父
0686 枯れはてむ のちをば知らで 夏草の 深くも人の 思ほゆるかな 凡河内躬恒
0687 飞鸟川 渊は瀬になる 世なりとも 思ひそめてむ 人は忘れじ 読人知らず
0688 思ふてふ 言の叶のみや 秋をへて 色もかはらぬ ものにはあるらむ 読人知らず
0689 さむしろに 衣かたしき 今宵もや 我を待つらむ 宇治の桥姫 読人知らず
0690 君やこむ 我やゆかむの いさよひに 真木の板戸も ささず寝にけり 読人知らず
0691 今こむと 言ひしばかりに 长月の 有明の月を 待ちいでつるかな 素性法师
0692 月夜よし 夜よしと人に つげやらば こてふににたり 待たずしもあらず 読人知らず
0693 君こずは ねやへもいらじ 浓紫 我がもとゆひに 霜は置くとも 読人知らず
0694 宫城野の もとあらの小萩 露を重み 风を待つごと 君をこそ待て 読人知らず
0695 あな恋し 今も见てしか 山がつの かきほにさける 大和抚子 読人知らず
0696 津の国の なには思はず 山しろの とはにあひ见む ことをのみこそ 読人知らず
0697 敷岛や 大和にはあらぬ 唐衣 ころもへずして あふよしもがな 纪贯之
0698 恋しとは たが名づけけむ ことならむ 死ぬとぞただに 言ふべかりける 清原深养父
0699 み吉野の 大川のべの 藤波の なみに思はば 我が恋めやは 読人知らず
0700 かく恋ひむ ものとは我も 思ひにき 心のうらぞ まさしかりける 読人知らず
0701 天の原 ふみとどろかし なる神も 思ふなかをば さくるものかは 読人知らず
0702 梓弓 ひき野のつづら 末つひに 我が思ふ人に ことのしげけむ 読人知らず
0703 夏引きの 手引きの糸を くりかへし ことしげくとも 绝えむと思ふな 読人知らず
0704 里人の ことは夏野の しげくとも 枯れ行く君に あはざらめやは 読人知らず
0705 かずかずに 思ひ思はず とひがたみ 身を知る雨は 降りぞまされる 在原业平
0706 おほぬさの ひくてあまたに なりぬれば 思へどえこそ たのまざりけれ 読人知らず
0707 おほぬさと 名にこそたてれ 流れても つひによる瀬は ありてふものを 在原业平
0708 须磨の海人の 塩やく烟 风をいたみ 思はぬ方に たなびきにけり 読人知らず
0709 玉かづら はふ木あまたに なりぬれば 绝えぬ心の うれしげもなし 読人知らず
0710 たが里に 夜がれをしてか 郭公 ただここにしも 寝たる声する 読人知らず
0711 いで人は ことのみぞよき 月草の うつし心は 色ことにして 読人知らず
0712 いつはりの なき世なりせば いかばかり 人の言の叶 うれしからまし 読人知らず
0713 いつはりと 思ふものから 今さらに たがまことをか 我はたのまむ 読人知らず
0714 秋风に 山の木の叶の うつろへば 人の心も いかがとぞ思ふ 素性法师
0715 蝉の声 闻けばかなしな 夏衣 薄くや人の ならむと思へば 纪友则
0716 空蝉の 世の人ごとの しげければ 忘れぬものの かれぬべらなり 読人知らず
0717 あかでこそ 思はむなかは 离れなめ そをだにのちの 忘れ形见に 読人知らず
0718 忘れなむと 思ふ心の つくからに ありしよりけに まづぞ恋しき 読人知らず
0719 忘れなむ 我をうらむな 郭公 人の秋には あはむともせず 読人知らず
0720 绝えずゆく 飞鸟の川の よどみなば 心あるとや 人の思はむ 読人知らず
0721 淀川の よどむと人は 见るらめど 流れて深き 心あるものを 読人知らず
0722 そこひなき 渊やは騒ぐ 山川の 浅き瀬にこそ あだ浪はたて 素性法师
0723 红の 初花染めの 色深く 思ひし心 我忘れめや 読人知らず
0724 陆奥の しのぶもぢずり 谁ゆゑに 乱れむと思ふ 我ならなくに 河原左大臣
0725 思ふより いかにせよとか 秋风に なびくあさぢの 色ことになる 読人知らず
0726 ちぢの色に うつろふらめど 知らなくに 心し秋の もみぢならねば 読人知らず
0727 海人の住む 里のしるべに あらなくに うらみむとのみ 人の言ふらむ 小野小町
0728 昙り日の 影としなれる 我なれば 目にこそ见えね 身をば离れず 下野雄宗
0729 色もなき 心を人に 染めしより うつろはむとは 思ほえなくに 纪贯之
0730 めづらしき 人を见むとや しかもせぬ 我が下纽の とけ渡るらむ 読人知らず
0731 かげろふの それかあらぬか 春雨の 降る日となれば 袖ぞ濡れぬる 読人知らず
0732 堀江こぐ 棚なし小舟 こぎかへり 同じ人にや 恋ひ渡りなむ 読人知らず
0733 わたつみと 荒れにし床を 今さらに はらはば袖や 泡と浮きなむ 伊势
0734 いにしへに なほ立ち返る 心かな 恋しきことに もの忘れせで 纪贯之
0735 思ひいでて 恋しき时は 初雁の なきて渡ると 人知るらめや 大友黒主
0736 たのめこし 言の叶今は かへしてむ 我が身ふるれば 置きどころなし 藤原因香
0737 今はとて かへす言の叶 拾ひおきて おのがものから 形见とや见む 近院右大臣
0738 玉ぼこの 道はつねにも 惑はなむ 人をとふとも 我かと思はむ 藤原因香
0739 待てと言はば 寝てもゆかなむ しひて行く 驹のあし折れ 前の棚桥 読人知らず
0740 あふ坂の ゆふつけ鸟に あらばこそ 君がゆききを なくなくも见め 闲院
0741 ふるさとに あらぬものから 我がために 人の心の 荒れて见ゆらむ 伊势
0742 山がつの かきほにはへる あをつづら 人はくれども ことづてもなし 宠
0743 大空は 恋しき人の 形见かは 物思ふごとに ながめらるらむ 酒井人真
0744 あふまでの 形见も我は 何せむに 见ても心の なぐさまなくに 読人知らず
0745 あふまでの 形见とてこそ とどめけめ 涙に浮ぶ 藻屑なりけり 藤原兴风
0746 形见こそ 今はあたなれ これなくは 忘るる时も あらましものを 読人知らず
巻十三 恋歌三
0616 起きもせず 寝もせで夜を 明かしては 春のものとて ながめくらしつ 在原业平
0617 つれづれの ながめにまさる 涙川 袖のみ濡れて あふよしもなし 藤原敏行
0618 浅みこそ 袖はひつらめ 涙川 身さへ流ると 闻かばたのまむ 在原业平
0619 よるべなみ 身をこそ远く へだてつれ 心は君が 影となりにき 読人知らず
0620 いたづらに 行きてはきぬる ものゆゑに 见まくほしさに いざなはれつつ 読人知らず
0621 あはぬ夜の 降る白雪と つもりなば 我さへともに けぬべきものを 読人知らず
0622 秋の野に 笹わけし朝の 袖よりも あはでこし夜ぞ ひちまさりける 在原业平
0623 みるめなき 我が身を浦と 知らねばや かれなで海人の 足たゆくくる 小野小町
0624 あはずして 今宵明けなば 春の日の 长くや人を つらしと思はむ 源宗于
0625 有明の つれなく见えし 别れより 暁ばかり 忧きものはなし 壬生忠岑
0626 あふことの なぎさにしよる 浪なれば うらみてのみぞ 立ち返りける 在原元方
0627 かねてより 风に先立つ 浪なれや あふことなきに まだき立つらむ 読人知らず
0628 陆奥に ありと言ふなる 名取川 なき名とりては くるしかりけり 壬生忠岑
0629 あやなくて まだきなき名の 竜田川 渡らでやまむ ものならなくに 御春有辅
0630 人はいさ 我はなき名の 惜しければ 昔も今も 知らずとを言はむ 在原元方
0631 こりずまに またもなき名は 立ちぬべし 人にくからぬ 世にしすまへば 読人知らず
0632 人知れぬ 我がかよひぢの 関守は よひよひごとに うちも寝ななむ 在原业平
0633 しのぶれど 恋しき时は あしひきの 山より月の いでてこそくれ 纪贯之
0634 恋ひ恋ひて まれに今宵ぞ あふ坂の ゆふつけ鸟は 鸣かずもあらなむ 読人知らず
0635 秋の夜も 名のみなりけり あふと言へば ことぞともなく 明けぬるものを 小野小町
0636 长しとも 思ひぞはてぬ 昔より あふ人からの 秋の夜なれば 凡河内躬恒
0637 しののめの ほがらほがらと 明けゆけば おのがきぬぎぬ なるぞかなしき 読人知らず
0638 明けぬとて いまはの心 つくからに など言ひ知らぬ 思ひそふらむ 藤原国経
0639 明けぬとて かへる道には こきたれて 雨も涙も 降りそほちつつ 藤原敏行
0640 しののめの 别れを惜しみ 我ぞまづ 鸟より先に なきはじめつる 宠
0641 郭公 梦かうつつか 朝露の おきて别れし 暁の声 読人知らず
0642 玉くしげ あけば君が名 立ちぬべみ 夜深くこしを 人见けむかも 読人知らず
0643 今朝はしも おきけむ方も 知らざりつ 思ひいづるぞ 消えてかなしき 大江千里
0644 寝ぬる夜の 梦をはかなみ まどろめば いやはかなにも なりまさるかな 在原业平
0645 君やこし 我や行きけむ 思ほえず 梦かうつつか 寝てかさめてか 読人知らず
0646 かきくらす 心の闇に 惑ひにき 梦うつつとは 世人さだめよ 在原业平
0647 むばたまの 闇のうつつは さだかなる 梦にいくらも まさらざりけり 読人知らず
0648 小夜ふけて 天の门渡る 月影に あかずも君を あひ见つるかな 読人知らず
0649 君が名も 我が名も立てじ 难波なる みつとも言ふな あひきとも言はじ 読人知らず
0650 名取川 瀬ぜのむもれ木 あらはれば いかにせむとか あひ见そめけむ 読人知らず
0651 吉野川 水の心は はやくとも 滝の音には 立てじとぞ思ふ 読人知らず
0652 恋しくは したにを思へ 紫の ねずりの衣 色にいづなゆめ 読人知らず
0653 花薄 穂にいでて恋ひば 名を惜しみ 下ゆふ纽の むすぼほれつつ 小野春风
0654 おもふどち ひとりひとりが 恋ひ死なば 谁によそへて 藤衣着む 読人知らず
0655 泣き恋ふる 涙に袖の そほちなば 脱ぎかへがてら 夜こそはきめ 橘清树
0656 うつつには さもこそあらめ 梦にさへ 人目をもると 见るがわびしさ 小野小町
0657 かぎりなき 思ひのままに 夜も来む 梦ぢをさへに 人はとがめじ 小野小町
0658 梦ぢには 足も休めず かよへども うつつにひと目 见しごとはあらず 小野小町
0659 思へども 人目つつみの 高ければ 川と见ながら えこそ渡らね 読人知らず
0660 たぎつ瀬の はやき心を 何しかも 人目つつみの せきとどむらむ 読人知らず
0661 红の 色にはいでじ 隠れ沼の 下にかよひて 恋は死ぬとも 纪友则
0662 冬の池に すむにほ鸟の つれもなく そこにかよふと 人に知らすな 凡河内躬恒
0663 笹の叶に 置く初霜の 夜を寒み しみはつくとも 色にいでめや 凡河内躬恒
0664 山しなの 音羽の山の 音にだに 人の知るべく 我が恋めかも 読人知らず
0665 みつ潮の 流れひるまを あひがたみ みるめのうらに よるをこそ待て 清原深养父
0666 白川の 知らずともいはじ 底清み 流れて世よに すまむと思へば 平贞文
0667 下にのみ 恋ふれば苦し 玉の绪の 绝えて乱れむ 人なとがめそ 纪友则
0668 我が恋を しのびかねては あしひきの 山橘の 色にいでぬべし 纪友则
0669 おほかたは 我が名もみなと こぎいでなむ 世をうみべたに みるめすくなし 読人知らず
0670 枕より また知る人も なき恋を 涙せきあへず もらしつるかな 平贞文
0671 风吹けば 浪うつ岸の 松なれや ねにあらはれて 泣きぬべらなり 読人知らず
0672 池にすむ 名ををし鸟の 水を浅み かくるとすれど あらはれにけり 読人知らず
0673 あふことは 玉の绪ばかり 名の立つは 吉野の川の たぎつ瀬のごと 読人知らず
0674 むら鸟の 立ちにし我が名 いまさらに ことなしぶとも しるしあらめや 読人知らず
0675 君により 我が名は花に 春霞 野にも山にも 立ち満ちにけり 読人知らず
0676 知ると言へば 枕だにせで 寝しものを 尘ならぬ名の 空に立つらむ 伊势
0616 起きもせず 寝もせで夜を 明かしては 春のものとて ながめくらしつ 在原业平
0617 つれづれの ながめにまさる 涙川 袖のみ濡れて あふよしもなし 藤原敏行
0618 浅みこそ 袖はひつらめ 涙川 身さへ流ると 闻かばたのまむ 在原业平
0619 よるべなみ 身をこそ远く へだてつれ 心は君が 影となりにき 読人知らず
0620 いたづらに 行きてはきぬる ものゆゑに 见まくほしさに いざなはれつつ 読人知らず
0621 あはぬ夜の 降る白雪と つもりなば 我さへともに けぬべきものを 読人知らず
0622 秋の野に 笹わけし朝の 袖よりも あはでこし夜ぞ ひちまさりける 在原业平
0623 みるめなき 我が身を浦と 知らねばや かれなで海人の 足たゆくくる 小野小町
0624 あはずして 今宵明けなば 春の日の 长くや人を つらしと思はむ 源宗于
0625 有明の つれなく见えし 别れより 暁ばかり 忧きものはなし 壬生忠岑
0626 あふことの なぎさにしよる 浪なれば うらみてのみぞ 立ち返りける 在原元方
0627 かねてより 风に先立つ 浪なれや あふことなきに まだき立つらむ 読人知らず
0628 陆奥に ありと言ふなる 名取川 なき名とりては くるしかりけり 壬生忠岑
0629 あやなくて まだきなき名の 竜田川 渡らでやまむ ものならなくに 御春有辅
0630 人はいさ 我はなき名の 惜しければ 昔も今も 知らずとを言はむ 在原元方
0631 こりずまに またもなき名は 立ちぬべし 人にくからぬ 世にしすまへば 読人知らず
0632 人知れぬ 我がかよひぢの 関守は よひよひごとに うちも寝ななむ 在原业平
0633 しのぶれど 恋しき时は あしひきの 山より月の いでてこそくれ 纪贯之
0634 恋ひ恋ひて まれに今宵ぞ あふ坂の ゆふつけ鸟は 鸣かずもあらなむ 読人知らず
0635 秋の夜も 名のみなりけり あふと言へば ことぞともなく 明けぬるものを 小野小町
0636 长しとも 思ひぞはてぬ 昔より あふ人からの 秋の夜なれば 凡河内躬恒
0637 しののめの ほがらほがらと 明けゆけば おのがきぬぎぬ なるぞかなしき 読人知らず
0638 明けぬとて いまはの心 つくからに など言ひ知らぬ 思ひそふらむ 藤原国経
0639 明けぬとて かへる道には こきたれて 雨も涙も 降りそほちつつ 藤原敏行
0640 しののめの 别れを惜しみ 我ぞまづ 鸟より先に なきはじめつる 宠
0641 郭公 梦かうつつか 朝露の おきて别れし 暁の声 読人知らず
0642 玉くしげ あけば君が名 立ちぬべみ 夜深くこしを 人见けむかも 読人知らず
0643 今朝はしも おきけむ方も 知らざりつ 思ひいづるぞ 消えてかなしき 大江千里
0644 寝ぬる夜の 梦をはかなみ まどろめば いやはかなにも なりまさるかな 在原业平
0645 君やこし 我や行きけむ 思ほえず 梦かうつつか 寝てかさめてか 読人知らず
0646 かきくらす 心の闇に 惑ひにき 梦うつつとは 世人さだめよ 在原业平
0647 むばたまの 闇のうつつは さだかなる 梦にいくらも まさらざりけり 読人知らず
0648 小夜ふけて 天の门渡る 月影に あかずも君を あひ见つるかな 読人知らず
0649 君が名も 我が名も立てじ 难波なる みつとも言ふな あひきとも言はじ 読人知らず
0650 名取川 瀬ぜのむもれ木 あらはれば いかにせむとか あひ见そめけむ 読人知らず
0651 吉野川 水の心は はやくとも 滝の音には 立てじとぞ思ふ 読人知らず
0652 恋しくは したにを思へ 紫の ねずりの衣 色にいづなゆめ 読人知らず
0653 花薄 穂にいでて恋ひば 名を惜しみ 下ゆふ纽の むすぼほれつつ 小野春风
0654 おもふどち ひとりひとりが 恋ひ死なば 谁によそへて 藤衣着む 読人知らず
0655 泣き恋ふる 涙に袖の そほちなば 脱ぎかへがてら 夜こそはきめ 橘清树
0656 うつつには さもこそあらめ 梦にさへ 人目をもると 见るがわびしさ 小野小町
0657 かぎりなき 思ひのままに 夜も来む 梦ぢをさへに 人はとがめじ 小野小町
0658 梦ぢには 足も休めず かよへども うつつにひと目 见しごとはあらず 小野小町
0659 思へども 人目つつみの 高ければ 川と见ながら えこそ渡らね 読人知らず
0660 たぎつ瀬の はやき心を 何しかも 人目つつみの せきとどむらむ 読人知らず
0661 红の 色にはいでじ 隠れ沼の 下にかよひて 恋は死ぬとも 纪友则
0662 冬の池に すむにほ鸟の つれもなく そこにかよふと 人に知らすな 凡河内躬恒
0663 笹の叶に 置く初霜の 夜を寒み しみはつくとも 色にいでめや 凡河内躬恒
0664 山しなの 音羽の山の 音にだに 人の知るべく 我が恋めかも 読人知らず
0665 みつ潮の 流れひるまを あひがたみ みるめのうらに よるをこそ待て 清原深养父
0666 白川の 知らずともいはじ 底清み 流れて世よに すまむと思へば 平贞文
0667 下にのみ 恋ふれば苦し 玉の绪の 绝えて乱れむ 人なとがめそ 纪友则
0668 我が恋を しのびかねては あしひきの 山橘の 色にいでぬべし 纪友则
0669 おほかたは 我が名もみなと こぎいでなむ 世をうみべたに みるめすくなし 読人知らず
0670 枕より また知る人も なき恋を 涙せきあへず もらしつるかな 平贞文
0671 风吹けば 浪うつ岸の 松なれや ねにあらはれて 泣きぬべらなり 読人知らず
0672 池にすむ 名ををし鸟の 水を浅み かくるとすれど あらはれにけり 読人知らず
0673 あふことは 玉の绪ばかり 名の立つは 吉野の川の たぎつ瀬のごと 読人知らず
0674 むら鸟の 立ちにし我が名 いまさらに ことなしぶとも しるしあらめや 読人知らず
0675 君により 我が名は花に 春霞 野にも山にも 立ち満ちにけり 読人知らず
0676 知ると言へば 枕だにせで 寝しものを 尘ならぬ名の 空に立つらむ 伊势
巻十二 恋歌二
0552 思ひつつ 寝ればや人の 见えつらむ 梦と知りせば 覚めざらましを 小野小町
0553 うたたねに 恋しき人を 见てしより 梦てふものは たのみそめてき 小野小町
0554 いとせめて 恋しき时は むばたまの 夜の衣を 返してぞきる 小野小町
0555 秋风の 身に寒ければ つれもなき 人をぞたのむ 暮るる夜ごとに 素性法师
0556 つつめども 袖にたまらぬ 白玉は 人を见ぬ目の 涙なりけり 安倍清行
0557 おろかなる 涙ぞ袖に 玉はなす 我はせきあへず たぎつ瀬なれば 小野小町
0558 恋わびて うちぬるなかに 行きかよふ 梦のただぢは うつつならなむ 藤原敏行
0559 住の江の 岸による浪 よるさへや 梦のかよひぢ 人目よぐらむ 藤原敏行
0560 我が恋は み山隠れの 草なれや しげさまされど 知る人のなき 小野美材
0561 宵の间も はかなく见ゆる 夏虫に 惑ひまされる 恋もするかな 纪友则
0562 夕されば 蛍よりけに もゆれども 光见ねばや 人のつれなき 纪友则
0563 笹の叶に 置く霜よりも ひとり寝る 我が衣手ぞ さえまさりける 纪友则
0564 我が宿の 菊の垣根に 置く霜の 消えかへりてぞ 恋しかりける 纪友则
0565 川の瀬に なびく玉藻の み隠れて 人に知られぬ 恋もするかな 纪友则
0566 かきくらし 降る白雪の 下ぎえに 消えて物思ふ ころにもあるかな 壬生忠岑
0567 君恋ふる 涙の床に 満ちぬれば みをつくしとぞ 我はなりぬる 藤原兴风
0568 死ぬる命 生きもやすると こころみに 玉の绪ばかり あはむと言はなむ 藤原兴风
0569 わびぬれば しひて忘れむと 思へども 梦と言ふものぞ 人だのめなる 藤原兴风
0570 わりなくも 寝ても覚めても 恋しきか 心をいづち やらば忘れむ 読人知らず
0571 恋しきに わびてたましひ 惑ひなば むなしき壳の 名にや残らむ 読人知らず
0572 君恋ふる 涙しなくは 唐衣 胸のあたりは 色もえなまし 纪贯之
0573 世とともに 流れてぞ行く 涙川 冬もこほらぬ みなわなりけり 纪贯之
0574 梦ぢにも 露や置くらむ 夜もすがら かよへる袖の ひちてかわかぬ 纪贯之
0575 はかなくて 梦にも人を 见つる夜は あしたの床ぞ 起きうかりける 素性法师
0576 いつはりの 涙なりせば 唐衣 しのびに袖は しぼらざらまし 藤原忠房
0577 ねになきて ひちにしかども 春雨に 濡れにし袖と とはば答へむ 大江千里
0578 我がごとく ものやかなしき 郭公 时ぞともなく 夜ただ鸣くらむ 藤原敏行
0579 五月山 梢を高み 郭公 鸣く音空なる 恋もするかな 纪贯之
0580 秋雾の 晴るる时なき 心には たちゐの空も 思ほえなくに 凡河内躬恒
0581 虫のごと 声にたてては なかねども 涙のみこそ 下に流るれ 清原深养父
0582 秋なれば 山とよむまで 鸣く鹿に 我おとらめや ひとり寝る夜は 読人知らず
0583 秋の野に 乱れて咲ける 花の色の ちぐさに物を 思ふころかな 纪贯之
0584 ひとりして 物を思へば 秋の夜の 稲叶のそよと 言ふ人のなき 凡河内躬恒
0585 人を思ふ 心は雁に あらねども 云ゐにのみも なき渡るかな 清原深养父
0586 秋风に かきなす琴の 声にさへ はかなく人の 恋しかるらむ 壬生忠岑
0587 まこも刈る 淀の沢水 雨降れば 常よりことに まさる我が恋 纪贯之
0588 越えぬ间は 吉野の山の 桜花 人づてにのみ 闻き渡るかな 纪贯之
0589 露ならぬ 心を花に 置きそめて 风吹くごとに 物思ひぞつく 纪贯之
0590 我が恋に くらぶの山の 桜花 间なく散るとも 数はまさらじ 坂上是则
0591 冬川の 上はこほれる 我なれや 下に流れて 恋ひ渡るらむ 宗岳大頼
0592 たぎつ瀬に 根ざしとどめぬ 浮草の 浮きたる恋も 我はするかな 壬生忠岑
0593 よひよひに 脱ぎて我が寝る かり衣 かけて思はぬ 时の间もなし 纪友则
0594 东ぢの 小夜の中山 なかなかに なにしか人を 思ひそめけむ 纪友则
0595 しきたへの 枕の下に 海はあれど 人をみるめは おひずぞありける 纪友则
0596 年をへて 消えぬ思ひは ありながら 夜の袂は なほこほりけり 纪友则
0597 我が恋は 知らぬ山ぢに あらなくに 惑ふ心ぞ わびしかりける 纪贯之
0598 红の ふりいでつつ なく涙には 袂のみこそ 色まさりけれ 纪贯之
0599 白玉と 见えし涙も 年ふれば 唐红に うつろひにけり 纪贯之
0600 夏虫を 何か言ひけむ 心から 我も思ひに もえぬべらなり 凡河内躬恒
0601 风吹けば 峰にわかるる 白云の 绝えてつれなき 君が心か 壬生忠岑
0602 月影に 我が身をかふる ものならば つれなき人も あはれとや见む 壬生忠岑
0603 恋ひ死なば たが名はたたじ 世の中の 常なきものと 言ひはなすとも 清原深养父
0604 津の国の 难波の苇の 芽もはるに しげき我が恋 人知るらめや 纪贯之
0605 手もふれで 月日へにける 白真弓 おきふし夜は いこそ寝られね 纪贯之
0606 人知れぬ 思ひのみこそ わびしけれ 我がなげきをば 我のみぞ知る 纪贯之
0607 ことにいでて 言はぬばかりぞ みなせ川 下にかよひて 恋しきものを 纪友则
0608 君をのみ 思ひねに寝し 梦なれば 我が心から 见つるなりけり 凡河内躬恒
0609 命にも まさりて惜しく あるものは 见はてぬ梦の さむるなりけり 壬生忠岑
0610 梓弓 ひけば本末 我が方に よるこそまされ 恋の心は 春道列树
0611 我が恋は ゆくへも知らず はてもなし あふをかぎりと 思ふばかりぞ 凡河内躬恒
0612 我のみぞ かなしかりける 彦星も あはですぐせる 年しなければ 凡河内躬恒
0613 今ははや 恋ひ死なましを あひ见むと たのめしことぞ 命なりける 清原深养父
0614 たのめつつ あはで年ふる いつはりに こりぬ心を 人は知らなむ 凡河内躬恒
0615 命やは なにぞは露の あだものを あふにしかへば 惜しからなくに 纪友则
0552 思ひつつ 寝ればや人の 见えつらむ 梦と知りせば 覚めざらましを 小野小町
0553 うたたねに 恋しき人を 见てしより 梦てふものは たのみそめてき 小野小町
0554 いとせめて 恋しき时は むばたまの 夜の衣を 返してぞきる 小野小町
0555 秋风の 身に寒ければ つれもなき 人をぞたのむ 暮るる夜ごとに 素性法师
0556 つつめども 袖にたまらぬ 白玉は 人を见ぬ目の 涙なりけり 安倍清行
0557 おろかなる 涙ぞ袖に 玉はなす 我はせきあへず たぎつ瀬なれば 小野小町
0558 恋わびて うちぬるなかに 行きかよふ 梦のただぢは うつつならなむ 藤原敏行
0559 住の江の 岸による浪 よるさへや 梦のかよひぢ 人目よぐらむ 藤原敏行
0560 我が恋は み山隠れの 草なれや しげさまされど 知る人のなき 小野美材
0561 宵の间も はかなく见ゆる 夏虫に 惑ひまされる 恋もするかな 纪友则
0562 夕されば 蛍よりけに もゆれども 光见ねばや 人のつれなき 纪友则
0563 笹の叶に 置く霜よりも ひとり寝る 我が衣手ぞ さえまさりける 纪友则
0564 我が宿の 菊の垣根に 置く霜の 消えかへりてぞ 恋しかりける 纪友则
0565 川の瀬に なびく玉藻の み隠れて 人に知られぬ 恋もするかな 纪友则
0566 かきくらし 降る白雪の 下ぎえに 消えて物思ふ ころにもあるかな 壬生忠岑
0567 君恋ふる 涙の床に 満ちぬれば みをつくしとぞ 我はなりぬる 藤原兴风
0568 死ぬる命 生きもやすると こころみに 玉の绪ばかり あはむと言はなむ 藤原兴风
0569 わびぬれば しひて忘れむと 思へども 梦と言ふものぞ 人だのめなる 藤原兴风
0570 わりなくも 寝ても覚めても 恋しきか 心をいづち やらば忘れむ 読人知らず
0571 恋しきに わびてたましひ 惑ひなば むなしき壳の 名にや残らむ 読人知らず
0572 君恋ふる 涙しなくは 唐衣 胸のあたりは 色もえなまし 纪贯之
0573 世とともに 流れてぞ行く 涙川 冬もこほらぬ みなわなりけり 纪贯之
0574 梦ぢにも 露や置くらむ 夜もすがら かよへる袖の ひちてかわかぬ 纪贯之
0575 はかなくて 梦にも人を 见つる夜は あしたの床ぞ 起きうかりける 素性法师
0576 いつはりの 涙なりせば 唐衣 しのびに袖は しぼらざらまし 藤原忠房
0577 ねになきて ひちにしかども 春雨に 濡れにし袖と とはば答へむ 大江千里
0578 我がごとく ものやかなしき 郭公 时ぞともなく 夜ただ鸣くらむ 藤原敏行
0579 五月山 梢を高み 郭公 鸣く音空なる 恋もするかな 纪贯之
0580 秋雾の 晴るる时なき 心には たちゐの空も 思ほえなくに 凡河内躬恒
0581 虫のごと 声にたてては なかねども 涙のみこそ 下に流るれ 清原深养父
0582 秋なれば 山とよむまで 鸣く鹿に 我おとらめや ひとり寝る夜は 読人知らず
0583 秋の野に 乱れて咲ける 花の色の ちぐさに物を 思ふころかな 纪贯之
0584 ひとりして 物を思へば 秋の夜の 稲叶のそよと 言ふ人のなき 凡河内躬恒
0585 人を思ふ 心は雁に あらねども 云ゐにのみも なき渡るかな 清原深养父
0586 秋风に かきなす琴の 声にさへ はかなく人の 恋しかるらむ 壬生忠岑
0587 まこも刈る 淀の沢水 雨降れば 常よりことに まさる我が恋 纪贯之
0588 越えぬ间は 吉野の山の 桜花 人づてにのみ 闻き渡るかな 纪贯之
0589 露ならぬ 心を花に 置きそめて 风吹くごとに 物思ひぞつく 纪贯之
0590 我が恋に くらぶの山の 桜花 间なく散るとも 数はまさらじ 坂上是则
0591 冬川の 上はこほれる 我なれや 下に流れて 恋ひ渡るらむ 宗岳大頼
0592 たぎつ瀬に 根ざしとどめぬ 浮草の 浮きたる恋も 我はするかな 壬生忠岑
0593 よひよひに 脱ぎて我が寝る かり衣 かけて思はぬ 时の间もなし 纪友则
0594 东ぢの 小夜の中山 なかなかに なにしか人を 思ひそめけむ 纪友则
0595 しきたへの 枕の下に 海はあれど 人をみるめは おひずぞありける 纪友则
0596 年をへて 消えぬ思ひは ありながら 夜の袂は なほこほりけり 纪友则
0597 我が恋は 知らぬ山ぢに あらなくに 惑ふ心ぞ わびしかりける 纪贯之
0598 红の ふりいでつつ なく涙には 袂のみこそ 色まさりけれ 纪贯之
0599 白玉と 见えし涙も 年ふれば 唐红に うつろひにけり 纪贯之
0600 夏虫を 何か言ひけむ 心から 我も思ひに もえぬべらなり 凡河内躬恒
0601 风吹けば 峰にわかるる 白云の 绝えてつれなき 君が心か 壬生忠岑
0602 月影に 我が身をかふる ものならば つれなき人も あはれとや见む 壬生忠岑
0603 恋ひ死なば たが名はたたじ 世の中の 常なきものと 言ひはなすとも 清原深养父
0604 津の国の 难波の苇の 芽もはるに しげき我が恋 人知るらめや 纪贯之
0605 手もふれで 月日へにける 白真弓 おきふし夜は いこそ寝られね 纪贯之
0606 人知れぬ 思ひのみこそ わびしけれ 我がなげきをば 我のみぞ知る 纪贯之
0607 ことにいでて 言はぬばかりぞ みなせ川 下にかよひて 恋しきものを 纪友则
0608 君をのみ 思ひねに寝し 梦なれば 我が心から 见つるなりけり 凡河内躬恒
0609 命にも まさりて惜しく あるものは 见はてぬ梦の さむるなりけり 壬生忠岑
0610 梓弓 ひけば本末 我が方に よるこそまされ 恋の心は 春道列树
0611 我が恋は ゆくへも知らず はてもなし あふをかぎりと 思ふばかりぞ 凡河内躬恒
0612 我のみぞ かなしかりける 彦星も あはですぐせる 年しなければ 凡河内躬恒
0613 今ははや 恋ひ死なましを あひ见むと たのめしことぞ 命なりける 清原深养父
0614 たのめつつ あはで年ふる いつはりに こりぬ心を 人は知らなむ 凡河内躬恒
0615 命やは なにぞは露の あだものを あふにしかへば 惜しからなくに 纪友则
巻十一 恋歌一
0469 郭公 鸣くや五月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな 読人知らず
0470 音にのみ きくの白露 夜はおきて 昼は思ひに あへずけぬべし 素性法师
0471 吉野川 岩波高く 行く水の 早くぞ人を 思ひそめてし 纪贯之
0472 白浪の あとなき方に 行く舟も 风ぞたよりの しるべなりける 藤原胜臣
0473 音羽山 音に闻きつつ あふ坂の 関のこなたに 年をふるかな 在原元方
0474 立ち返り あはれとぞ思ふ よそにても 人に心を 冲つ白浪 在原元方
0475 世の中は かくこそありけれ 吹く风の 目に见ぬ人も 恋しかりけり 纪贯之
0476 见ずもあらず 见もせぬ人の 恋しくは あやなく今日や ながめくらさむ 在原业平
0477 知る知らぬ なにかあやなく わきて言はむ 思ひのみこそ しるべなりけれ 読人知らず
0478 春日野の 雪间をわけて おひいでくる 草のはつかに 见えし君はも 壬生忠岑
0479 山桜 霞の间より ほのかにも 见てし人こそ 恋しかりけれ 纪贯之
0480 たよりにも あらぬ思ひの あやしきは 心を人に つくるなりけり 在原元方
0481 初雁の はつかに声を 闻きしより 中空にのみ 物を思ふかな 凡河内躬恒
0482 あふことは 云ゐはるかに なる神の 音に闻きつつ 恋ひ渡るかな 纪贯之
0483 片糸を こなたかなたに よりかけて あはずはなにを 玉の绪にせむ 読人知らず
0484 夕暮れは 云のはたてに 物ぞ思ふ 天つ空なる 人を恋ふとて 読人知らず
0485 かりこもの 思ひ乱れて 我が恋ふと 妹知るらめや 人しつげずは 読人知らず
0486 つれもなき 人をやねたく 白露の 置くとはなげき 寝とはしのばむ 読人知らず
0487 ちはやぶる 贺茂のやしろの ゆふだすき ひと日も君を かけぬ日はなし 読人知らず
0488 我が恋は むなしき空に 満ちぬらし 思ひやれども 行く方もなし 読人知らず
0489 骏河なる 田子の浦浪 立たぬ日は あれども君を 恋ひぬ日ぞなき 読人知らず
0490 夕月夜 さすやをかべの 松の叶の いつともわかぬ 恋もするかな 読人知らず
0491 あしひきの 山下水の 木隠れて たぎつ心を せきぞかねつる 読人知らず
0492 吉野川 岩切りとほし 行く水の 音にはたてじ 恋は死ぬとも 読人知らず
0493 たぎつ瀬の なかにも淀は ありてふを など我が恋の 渊瀬ともなき 読人知らず
0494 山高み 下ゆく水の 下にのみ 流れて恋ひむ 恋は死ぬとも 読人知らず
0495 思ひいづる ときはの山の 岩つつじ 言はねばこそあれ 恋しきものを 読人知らず
0496 人知れず 思へば苦し 红の 末摘花の 色にいでなむ 読人知らず
0497 秋の野の 尾花にまじり 咲く花の 色にや恋ひむ あふよしをなみ 読人知らず
0498 我が园の 梅のほつえに うぐひすの 音に鸣きぬべき 恋もするかな 読人知らず
0499 あしひきの 山郭公 我がごとや 君に恋ひつつ いねがてにする 読人知らず
0500 夏なれば 宿にふすぶる かやり火の いつまで我が身 下もえをせむ 読人知らず
0501 恋せじと みたらし川に せしみそぎ 神はうけずぞ なりにけらしも 読人知らず
0502 あはれてふ ことだになくは なにをかは 恋の乱れの つかねをにせむ 読人知らず
0503 思ふには 忍ぶることぞ 负けにける 色にはいでじと 思ひしものを 読人知らず
0504 我が恋を 人知るらめや しきたへの 枕のみこそ 知らば知るらめ 読人知らず
0505 あさぢふの 小野のしの原 しのぶとも 人知るらめや 言ふ人なしに 読人知らず
0506 人知れぬ 思ひやなぞと 苇垣の まぢかけれども あふよしのなき 読人知らず
0507 思ふとも 恋ふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくる下纽 読人知らず
0508 いで我を 人なとがめそ おほ舟の ゆたのたゆたに 物思ふころぞ 読人知らず
0509 伊势の海に 钓りする海人の うけなれや 心ひとつを 定めかねつる 読人知らず
0510 伊势の海の 海人の钓り縄 うちはへて くるしとのみや 思ひわたらむ 読人知らず
0511 涙川 なに水上を 寻ねけむ 物思ふ时の 我が身なりけり 読人知らず
0512 种しあれば 岩にも松は おひにけり 恋をし恋ひば あはざらめやは 読人知らず
0513 朝な朝な 立つ河雾の 空にのみ うきて思ひの ある世なりけり 読人知らず
0514 忘らるる 时しなければ あしたづの 思ひ乱れて 音をのみぞ鸣く 読人知らず
0515 唐衣 日も夕暮れに なる时は 返す返すぞ 人は恋しき 読人知らず
0516 よひよひに 枕さだめむ 方もなし いかに寝し夜か 梦に见えけむ 読人知らず
0517 恋しきに 命をかふる ものならば 死にはやすくぞ あるべかりける 読人知らず
0518 人の身も ならはしものを あはずして いざこころみむ 恋ひや死ぬると 読人知らず
0519 忍ぶれば 苦しきものを 人知れず 思ふてふこと 谁にかたらむ 読人知らず
0520 こむ世にも はやなりななむ 目の前に つれなき人を 昔と思はむ 読人知らず
0521 つれもなき 人を恋ふとて 山彦の 答へするまで なげきつるかな 読人知らず
0522 行く水に 数かくよりも はかなきは 思はぬ人を 思ふなりけり 読人知らず
0523 人を思ふ 心は我に あらねばや 身の惑ふだに 知られざるらむ 読人知らず
0524 思ひやる さかひはるかに なりやする 惑ふ梦ぢに あふ人のなき 読人知らず
0525 梦の内に あひ见むことを たのみつつ くらせる宵は 寝む方もなし 読人知らず
0526 恋ひ死ねと するわざならし むばたまの 夜はすがらに 梦に见えつつ 読人知らず
0527 涙川 枕流るる うきねには 梦もさだかに 见えずぞありける 読人知らず
0528 恋すれば 我が身は影と なりにけり さりとて人に そはぬものゆゑ 読人知らず
0529 かがり火に あらぬ我が身の なぞもかく 涙の川に 浮きてもゆらむ 読人知らず
0530 かがり火の 影となる身の わびしきは ながれて下に もゆるなりけり 読人知らず
0531 はやき瀬に みるめおひせば 我が袖の 涙の川に 植ゑましものを 読人知らず
0532 冲へにも よらぬ玉藻の 浪の上に 乱れてのみや 恋ひ渡りなむ 読人知らず
0533 苇鸭の 騒ぐ入江の 白浪の 知らずや人を かく恋ひむとは 読人知らず
0534 人知れぬ 思ひをつねに するがなる 富士の山こそ 我が身なりけれ 読人知らず
0535 とぶ鸟の 声も闻こえぬ 奥山の 深き心を 人は知らなむ 読人知らず
0536 あふ坂の ゆふつけ鸟も 我がごとく 人や恋しき 音のみ鸣くらむ 読人知らず
0537 あふ坂の 関に流るる 岩清水 言はで心に 思ひこそすれ 読人知らず
0538 浮草の 上はしげれる 渊なれや 深き心を 知る人のなき 読人知らず
0539 うちわびて よばはむ声に 山彦の 答へぬ山は あらじとぞ思ふ 読人知らず
0540 心がへ するものにもが 片恋は 苦しきものと 人に知らせむ 読人知らず
0541 よそにして 恋ふれば苦し 入れ纽の 同じ心に いざ结びてむ 読人知らず
0542 春たてば 消ゆる氷の 残りなく 君が心は 我にとけなむ 読人知らず
0543 明けたてば 蝉のをりはへ なきくらし 夜は蛍の もえこそわたれ 読人知らず
0544 夏虫の 身をいたづらに なすことも ひとつ思ひに よりてなりけり 読人知らず
0545 夕されば いとどひがたき 我が袖に 秋の露さへ 置きそはりつつ 読人知らず
0546 いつとても 恋しからずは あらねども 秋の夕べは あやしかりけり 読人知らず
0547 秋の田の 穂にこそ人を 恋ひざらめ などか心に 忘れしもせむ 読人知らず
0548 秋の田の 穂の上を照らす 稲妻の 光の间にも 我や忘るる 読人知らず
0549 人目もる 我かはあやな 花薄 などか穂にいでて 恋ひずしもあらむ 読人知らず
0550 淡雪の たまればかてに くだけつつ 我が物思ひの しげきころかな 読人知らず
0551 奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の けぬとか言はむ 恋のしげきに 読人知らず
0469 郭公 鸣くや五月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな 読人知らず
0470 音にのみ きくの白露 夜はおきて 昼は思ひに あへずけぬべし 素性法师
0471 吉野川 岩波高く 行く水の 早くぞ人を 思ひそめてし 纪贯之
0472 白浪の あとなき方に 行く舟も 风ぞたよりの しるべなりける 藤原胜臣
0473 音羽山 音に闻きつつ あふ坂の 関のこなたに 年をふるかな 在原元方
0474 立ち返り あはれとぞ思ふ よそにても 人に心を 冲つ白浪 在原元方
0475 世の中は かくこそありけれ 吹く风の 目に见ぬ人も 恋しかりけり 纪贯之
0476 见ずもあらず 见もせぬ人の 恋しくは あやなく今日や ながめくらさむ 在原业平
0477 知る知らぬ なにかあやなく わきて言はむ 思ひのみこそ しるべなりけれ 読人知らず
0478 春日野の 雪间をわけて おひいでくる 草のはつかに 见えし君はも 壬生忠岑
0479 山桜 霞の间より ほのかにも 见てし人こそ 恋しかりけれ 纪贯之
0480 たよりにも あらぬ思ひの あやしきは 心を人に つくるなりけり 在原元方
0481 初雁の はつかに声を 闻きしより 中空にのみ 物を思ふかな 凡河内躬恒
0482 あふことは 云ゐはるかに なる神の 音に闻きつつ 恋ひ渡るかな 纪贯之
0483 片糸を こなたかなたに よりかけて あはずはなにを 玉の绪にせむ 読人知らず
0484 夕暮れは 云のはたてに 物ぞ思ふ 天つ空なる 人を恋ふとて 読人知らず
0485 かりこもの 思ひ乱れて 我が恋ふと 妹知るらめや 人しつげずは 読人知らず
0486 つれもなき 人をやねたく 白露の 置くとはなげき 寝とはしのばむ 読人知らず
0487 ちはやぶる 贺茂のやしろの ゆふだすき ひと日も君を かけぬ日はなし 読人知らず
0488 我が恋は むなしき空に 満ちぬらし 思ひやれども 行く方もなし 読人知らず
0489 骏河なる 田子の浦浪 立たぬ日は あれども君を 恋ひぬ日ぞなき 読人知らず
0490 夕月夜 さすやをかべの 松の叶の いつともわかぬ 恋もするかな 読人知らず
0491 あしひきの 山下水の 木隠れて たぎつ心を せきぞかねつる 読人知らず
0492 吉野川 岩切りとほし 行く水の 音にはたてじ 恋は死ぬとも 読人知らず
0493 たぎつ瀬の なかにも淀は ありてふを など我が恋の 渊瀬ともなき 読人知らず
0494 山高み 下ゆく水の 下にのみ 流れて恋ひむ 恋は死ぬとも 読人知らず
0495 思ひいづる ときはの山の 岩つつじ 言はねばこそあれ 恋しきものを 読人知らず
0496 人知れず 思へば苦し 红の 末摘花の 色にいでなむ 読人知らず
0497 秋の野の 尾花にまじり 咲く花の 色にや恋ひむ あふよしをなみ 読人知らず
0498 我が园の 梅のほつえに うぐひすの 音に鸣きぬべき 恋もするかな 読人知らず
0499 あしひきの 山郭公 我がごとや 君に恋ひつつ いねがてにする 読人知らず
0500 夏なれば 宿にふすぶる かやり火の いつまで我が身 下もえをせむ 読人知らず
0501 恋せじと みたらし川に せしみそぎ 神はうけずぞ なりにけらしも 読人知らず
0502 あはれてふ ことだになくは なにをかは 恋の乱れの つかねをにせむ 読人知らず
0503 思ふには 忍ぶることぞ 负けにける 色にはいでじと 思ひしものを 読人知らず
0504 我が恋を 人知るらめや しきたへの 枕のみこそ 知らば知るらめ 読人知らず
0505 あさぢふの 小野のしの原 しのぶとも 人知るらめや 言ふ人なしに 読人知らず
0506 人知れぬ 思ひやなぞと 苇垣の まぢかけれども あふよしのなき 読人知らず
0507 思ふとも 恋ふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくる下纽 読人知らず
0508 いで我を 人なとがめそ おほ舟の ゆたのたゆたに 物思ふころぞ 読人知らず
0509 伊势の海に 钓りする海人の うけなれや 心ひとつを 定めかねつる 読人知らず
0510 伊势の海の 海人の钓り縄 うちはへて くるしとのみや 思ひわたらむ 読人知らず
0511 涙川 なに水上を 寻ねけむ 物思ふ时の 我が身なりけり 読人知らず
0512 种しあれば 岩にも松は おひにけり 恋をし恋ひば あはざらめやは 読人知らず
0513 朝な朝な 立つ河雾の 空にのみ うきて思ひの ある世なりけり 読人知らず
0514 忘らるる 时しなければ あしたづの 思ひ乱れて 音をのみぞ鸣く 読人知らず
0515 唐衣 日も夕暮れに なる时は 返す返すぞ 人は恋しき 読人知らず
0516 よひよひに 枕さだめむ 方もなし いかに寝し夜か 梦に见えけむ 読人知らず
0517 恋しきに 命をかふる ものならば 死にはやすくぞ あるべかりける 読人知らず
0518 人の身も ならはしものを あはずして いざこころみむ 恋ひや死ぬると 読人知らず
0519 忍ぶれば 苦しきものを 人知れず 思ふてふこと 谁にかたらむ 読人知らず
0520 こむ世にも はやなりななむ 目の前に つれなき人を 昔と思はむ 読人知らず
0521 つれもなき 人を恋ふとて 山彦の 答へするまで なげきつるかな 読人知らず
0522 行く水に 数かくよりも はかなきは 思はぬ人を 思ふなりけり 読人知らず
0523 人を思ふ 心は我に あらねばや 身の惑ふだに 知られざるらむ 読人知らず
0524 思ひやる さかひはるかに なりやする 惑ふ梦ぢに あふ人のなき 読人知らず
0525 梦の内に あひ见むことを たのみつつ くらせる宵は 寝む方もなし 読人知らず
0526 恋ひ死ねと するわざならし むばたまの 夜はすがらに 梦に见えつつ 読人知らず
0527 涙川 枕流るる うきねには 梦もさだかに 见えずぞありける 読人知らず
0528 恋すれば 我が身は影と なりにけり さりとて人に そはぬものゆゑ 読人知らず
0529 かがり火に あらぬ我が身の なぞもかく 涙の川に 浮きてもゆらむ 読人知らず
0530 かがり火の 影となる身の わびしきは ながれて下に もゆるなりけり 読人知らず
0531 はやき瀬に みるめおひせば 我が袖の 涙の川に 植ゑましものを 読人知らず
0532 冲へにも よらぬ玉藻の 浪の上に 乱れてのみや 恋ひ渡りなむ 読人知らず
0533 苇鸭の 騒ぐ入江の 白浪の 知らずや人を かく恋ひむとは 読人知らず
0534 人知れぬ 思ひをつねに するがなる 富士の山こそ 我が身なりけれ 読人知らず
0535 とぶ鸟の 声も闻こえぬ 奥山の 深き心を 人は知らなむ 読人知らず
0536 あふ坂の ゆふつけ鸟も 我がごとく 人や恋しき 音のみ鸣くらむ 読人知らず
0537 あふ坂の 関に流るる 岩清水 言はで心に 思ひこそすれ 読人知らず
0538 浮草の 上はしげれる 渊なれや 深き心を 知る人のなき 読人知らず
0539 うちわびて よばはむ声に 山彦の 答へぬ山は あらじとぞ思ふ 読人知らず
0540 心がへ するものにもが 片恋は 苦しきものと 人に知らせむ 読人知らず
0541 よそにして 恋ふれば苦し 入れ纽の 同じ心に いざ结びてむ 読人知らず
0542 春たてば 消ゆる氷の 残りなく 君が心は 我にとけなむ 読人知らず
0543 明けたてば 蝉のをりはへ なきくらし 夜は蛍の もえこそわたれ 読人知らず
0544 夏虫の 身をいたづらに なすことも ひとつ思ひに よりてなりけり 読人知らず
0545 夕されば いとどひがたき 我が袖に 秋の露さへ 置きそはりつつ 読人知らず
0546 いつとても 恋しからずは あらねども 秋の夕べは あやしかりけり 読人知らず
0547 秋の田の 穂にこそ人を 恋ひざらめ などか心に 忘れしもせむ 読人知らず
0548 秋の田の 穂の上を照らす 稲妻の 光の间にも 我や忘るる 読人知らず
0549 人目もる 我かはあやな 花薄 などか穂にいでて 恋ひずしもあらむ 読人知らず
0550 淡雪の たまればかてに くだけつつ 我が物思ひの しげきころかな 読人知らず
0551 奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の けぬとか言はむ 恋のしげきに 読人知らず
巻十 物名
0422 心から 花のしづくに そほちつつ うくひすとのみ 鸟の鸣くらむ 藤原敏行
0423 くべきほど 时すぎぬれや 待ちわびて 鸣くなる声の 人をとよむる 藤原敏行
0424 浪の打つ 瀬见れば玉ぞ 乱れける 拾はば袖に はかなからむや 在原滋春
0425 袂より はなれて玉を つつまめや これなむそれと うつせ见むかし 壬生忠岑
0426 あなうめに つねなるべくも 见えぬかな 恋しかるべき 香は匂ひつつ 読人知らず
0427 かづけども 浪のなかには さぐられで 风吹くごとに 浮き沈む玉 纪贯之
0428 今いくか 春しなければ うぐひすも ものはながめて 思ふべらなり 纪贯之
0429 あふからも ものはなほこそ かなしけれ 别れむことを かねて思へば 清原深养父
0430 あしひきの 山たちはなれ 行く云の 宿りさだめぬ 世にこそありけれ 小野滋荫
0431 み吉野の 吉野の滝に 浮かびいづる 泡をかたまの 消ゆと见つらむ 纪友则
0432 秋はきぬ いまやまがきの きりぎりす 夜な夜な鸣かむ 风の寒さに 読人知らず
0433 かくばかり あふ日のまれに なる人を いかがつらしと 思はざるべき 読人知らず
0434 人目ゆゑ のちにあふ日の はるけくは 我がつらきにや 思ひなされむ 読人知らず
0435 散りぬれば のちはあくたに なる花を 思ひ知らずも 惑ふてふかな 僧正遍照
0436 我はけさ うひにぞ见つる 花の色を あだなるものと 言ふべかりけり 纪贯之
0437 白露を 玉にぬくとや ささがにの 花にも叶にも いとをみなへし 纪友则
0438 朝露を わけそほちつつ 花见むと 今ぞ野山を みなへしりぬる 纪友则
0439 をぐら山 峰たちならし 鸣く鹿の へにけむ秋を 知る人ぞなき 纪贯之
0440 秋ちかう 野はなりにけり 白露の おける草叶も 色かはりゆく 纪友则
0441 ふりはへて いざふるさとの 花见むと こしを匂ひぞ うつろひにける 読人知らず
0442 我が宿の 花ふみしだく とりうたむ 野はなければや ここにしもくる 纪友则
0443 ありと见て たのむぞかたき 空蝉の 世をばなしとや 思ひなしてむ 読人知らず
0444 うちつけに こしとや花の 色を见む 置く白露の 染むるばかりを 矢田部名実
0445 花の木に あらざらめども 咲きにけり ふりにしこの身 なる时もがな 文屋康秀
0446 山高み つねに岚の 吹く里は 匂ひもあへず 花ぞ散りける 纪利贞
0447 郭公 峰の云にや まじりにし ありとは闻けど 见るよしもなき 平笃行
0448 空蝉の 壳は木ごとに とどむれど 魂のゆくへを 见ぬぞかなしき 読人知らず
0449 うばたまの 梦になにかは なぐさまむ うつつにだにも あかぬ心を 清原深养父
0450 花の色は ただひとさかり 浓けれども 返す返すぞ 露は染めける 高向利春
0451 命とて 露をたのむに かたければ ものわびしらに 鸣く野辺の虫 在原滋春
0452 小夜ふけて なかばたけゆく 久方の 月吹きかへせ 秋の山风 景式王
0453 烟たち もゆとも见えぬ 草の叶を 谁かわらびと 名づけそめけむ 真静法师
0454 いささめに 时まつまにぞ 日はへぬる 心ばせをば 人に见えつつ 纪乳母
0455 あぢきなし なげきなつめそ うきことに あひくる身をば 舍てぬものから 兵卫
0456 浪の音の 今朝からことに 闻こゆるは 春のしらべや あらたまるらむ 安倍清行
0457 かぢにあたる 浪のしづくを 春なれば いかが咲き散る 花と见ざらむ 兼覧王
0458 かの方に いつから先に わたりけむ 浪ぢはあとも 残らざりけり 阿保経覧
0459 浪の花 冲から咲きて 散りくめり 水の春とは 风やなるらむ 伊势
0460 うばたまの 我が黒髪や かはるらむ 镜のかげに 降れる白雪 纪贯之
0461 あしひきの 山辺にをれば 白云の いかにせよとか 晴るる时なき 纪贯之
0462 夏草の 上はしげれる 沼水の 行く方のなき 我が心かな 壬生忠岑
0463 秋くれば 月の桂の 実やはなる 光を花と 散らすばかりを 源恵
0464 花ごとに あかず散らしし 风なれば いくそばく我が 忧しとかは思ふ 読人知らず
0465 春霞 なかしかよひぢ なかりせば 秋くる雁は かへらざらまし 在原滋春
0466 流れいづる 方だに见えぬ 涙川 おきひむ时や 底は知られむ 都良香
0467 のちまきの おくれておふる 苗なれど あだにはならぬ たのみとぞ闻く 大江千里
0468 花の中 目にあくやとて わけゆけば 心ぞともに 散りぬべらなる 僧正圣宝
0422 心から 花のしづくに そほちつつ うくひすとのみ 鸟の鸣くらむ 藤原敏行
0423 くべきほど 时すぎぬれや 待ちわびて 鸣くなる声の 人をとよむる 藤原敏行
0424 浪の打つ 瀬见れば玉ぞ 乱れける 拾はば袖に はかなからむや 在原滋春
0425 袂より はなれて玉を つつまめや これなむそれと うつせ见むかし 壬生忠岑
0426 あなうめに つねなるべくも 见えぬかな 恋しかるべき 香は匂ひつつ 読人知らず
0427 かづけども 浪のなかには さぐられで 风吹くごとに 浮き沈む玉 纪贯之
0428 今いくか 春しなければ うぐひすも ものはながめて 思ふべらなり 纪贯之
0429 あふからも ものはなほこそ かなしけれ 别れむことを かねて思へば 清原深养父
0430 あしひきの 山たちはなれ 行く云の 宿りさだめぬ 世にこそありけれ 小野滋荫
0431 み吉野の 吉野の滝に 浮かびいづる 泡をかたまの 消ゆと见つらむ 纪友则
0432 秋はきぬ いまやまがきの きりぎりす 夜な夜な鸣かむ 风の寒さに 読人知らず
0433 かくばかり あふ日のまれに なる人を いかがつらしと 思はざるべき 読人知らず
0434 人目ゆゑ のちにあふ日の はるけくは 我がつらきにや 思ひなされむ 読人知らず
0435 散りぬれば のちはあくたに なる花を 思ひ知らずも 惑ふてふかな 僧正遍照
0436 我はけさ うひにぞ见つる 花の色を あだなるものと 言ふべかりけり 纪贯之
0437 白露を 玉にぬくとや ささがにの 花にも叶にも いとをみなへし 纪友则
0438 朝露を わけそほちつつ 花见むと 今ぞ野山を みなへしりぬる 纪友则
0439 をぐら山 峰たちならし 鸣く鹿の へにけむ秋を 知る人ぞなき 纪贯之
0440 秋ちかう 野はなりにけり 白露の おける草叶も 色かはりゆく 纪友则
0441 ふりはへて いざふるさとの 花见むと こしを匂ひぞ うつろひにける 読人知らず
0442 我が宿の 花ふみしだく とりうたむ 野はなければや ここにしもくる 纪友则
0443 ありと见て たのむぞかたき 空蝉の 世をばなしとや 思ひなしてむ 読人知らず
0444 うちつけに こしとや花の 色を见む 置く白露の 染むるばかりを 矢田部名実
0445 花の木に あらざらめども 咲きにけり ふりにしこの身 なる时もがな 文屋康秀
0446 山高み つねに岚の 吹く里は 匂ひもあへず 花ぞ散りける 纪利贞
0447 郭公 峰の云にや まじりにし ありとは闻けど 见るよしもなき 平笃行
0448 空蝉の 壳は木ごとに とどむれど 魂のゆくへを 见ぬぞかなしき 読人知らず
0449 うばたまの 梦になにかは なぐさまむ うつつにだにも あかぬ心を 清原深养父
0450 花の色は ただひとさかり 浓けれども 返す返すぞ 露は染めける 高向利春
0451 命とて 露をたのむに かたければ ものわびしらに 鸣く野辺の虫 在原滋春
0452 小夜ふけて なかばたけゆく 久方の 月吹きかへせ 秋の山风 景式王
0453 烟たち もゆとも见えぬ 草の叶を 谁かわらびと 名づけそめけむ 真静法师
0454 いささめに 时まつまにぞ 日はへぬる 心ばせをば 人に见えつつ 纪乳母
0455 あぢきなし なげきなつめそ うきことに あひくる身をば 舍てぬものから 兵卫
0456 浪の音の 今朝からことに 闻こゆるは 春のしらべや あらたまるらむ 安倍清行
0457 かぢにあたる 浪のしづくを 春なれば いかが咲き散る 花と见ざらむ 兼覧王
0458 かの方に いつから先に わたりけむ 浪ぢはあとも 残らざりけり 阿保経覧
0459 浪の花 冲から咲きて 散りくめり 水の春とは 风やなるらむ 伊势
0460 うばたまの 我が黒髪や かはるらむ 镜のかげに 降れる白雪 纪贯之
0461 あしひきの 山辺にをれば 白云の いかにせよとか 晴るる时なき 纪贯之
0462 夏草の 上はしげれる 沼水の 行く方のなき 我が心かな 壬生忠岑
0463 秋くれば 月の桂の 実やはなる 光を花と 散らすばかりを 源恵
0464 花ごとに あかず散らしし 风なれば いくそばく我が 忧しとかは思ふ 読人知らず
0465 春霞 なかしかよひぢ なかりせば 秋くる雁は かへらざらまし 在原滋春
0466 流れいづる 方だに见えぬ 涙川 おきひむ时や 底は知られむ 都良香
0467 のちまきの おくれておふる 苗なれど あだにはならぬ たのみとぞ闻く 大江千里
0468 花の中 目にあくやとて わけゆけば 心ぞともに 散りぬべらなる 僧正圣宝
巻九 羇旅歌
0406 天の原 ふりさけ见れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも 安倍仲麻吕
0407 わたの原 八十岛かけて こぎいでぬと 人には告げよ 海人の钓り舟 小野篁
0408 みやこいでて けふみかの原 いづみ川 川风寒し 衣かせ山 読人知らず
0409 ほのぼのと 明石の浦の 朝雾に 岛隠れ行く 舟をしぞ思ふ 読人知らず
0410 唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ 在原业平
0411 名にしおはば いざ言问はむ みやこ鸟 我が思ふ人は ありやなしやと 在原业平
0412 北へ行く 雁ぞ鸣くなる つれてこし 数はたらでぞ かへるべらなる 読人知らず
0413 山かくす 春の霞ぞ うらめしき いづれみやこの さかひなるらむ 乙
0414 消えはつる 时しなければ 越路なる 白山の名は 雪にぞありける 凡河内躬恒
0415 糸による ものならなくに 别れぢの 心细くも 思ほゆるかな 纪贯之
0416 夜を寒み 置く初霜を はらひつつ 草の枕に あまた旅寝ぬ 凡河内躬恒
0417 夕月夜 おぼつかなきを 玉くしげ ふたみのうらは あけてこそ见め 藤原兼辅
0418 かりくらし 七夕つめに 宿からむ 天の河原に 我はきにけり 在原业平
0419 ひととせに ひとたびきます 君まてば 宿かす人も あらじとぞ思ふ 纪有常
0420 このたびは ぬさもとりあへず たむけ山 红叶の锦 神のまにまに 菅原朝臣
0421 たむけには つづりの袖も 切るべきに 红叶にあける 神やかへさむ 素性法师
0406 天の原 ふりさけ见れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも 安倍仲麻吕
0407 わたの原 八十岛かけて こぎいでぬと 人には告げよ 海人の钓り舟 小野篁
0408 みやこいでて けふみかの原 いづみ川 川风寒し 衣かせ山 読人知らず
0409 ほのぼのと 明石の浦の 朝雾に 岛隠れ行く 舟をしぞ思ふ 読人知らず
0410 唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ 在原业平
0411 名にしおはば いざ言问はむ みやこ鸟 我が思ふ人は ありやなしやと 在原业平
0412 北へ行く 雁ぞ鸣くなる つれてこし 数はたらでぞ かへるべらなる 読人知らず
0413 山かくす 春の霞ぞ うらめしき いづれみやこの さかひなるらむ 乙
0414 消えはつる 时しなければ 越路なる 白山の名は 雪にぞありける 凡河内躬恒
0415 糸による ものならなくに 别れぢの 心细くも 思ほゆるかな 纪贯之
0416 夜を寒み 置く初霜を はらひつつ 草の枕に あまた旅寝ぬ 凡河内躬恒
0417 夕月夜 おぼつかなきを 玉くしげ ふたみのうらは あけてこそ见め 藤原兼辅
0418 かりくらし 七夕つめに 宿からむ 天の河原に 我はきにけり 在原业平
0419 ひととせに ひとたびきます 君まてば 宿かす人も あらじとぞ思ふ 纪有常
0420 このたびは ぬさもとりあへず たむけ山 红叶の锦 神のまにまに 菅原朝臣
0421 たむけには つづりの袖も 切るべきに 红叶にあける 神やかへさむ 素性法师
巻八 离别歌
0365 立ち别れ いなばの山の 峰におふる 松とし闻かば 今かへりこむ 在原行平
0366 すがるなく 秋の萩原 朝たちて 旅行く人を いつとか待たむ 読人知らず
0367 かぎりなき 云ゐのよそに わかるとも 人を心に おくらさむやは 読人知らず
0368 たらちねの 亲のまもりと あひそふる 心ばかりは せきなとどめそ 小野千古母
0369 今日别れ 明日はあふみと 思へども 夜やふけぬらむ 袖の露けき 纪利贞
0370 かへる山 ありとは闻けど 春霞 立ち别れなば 恋しかるべし 纪利贞
0371 惜しむから 恋しきものを 白云の たちなむのちは なに心地せむ 纪贯之
0372 别れては ほどをへだつと 思へばや かつ见ながらに かねて恋しき 在原滋春
0373 思へども 身をしわけねば 目に见えぬ 心を君に たぐへてぞやる 伊香子淳行
0374 あふ坂の 関しまさしき ものならば あかず别るる 君をとどめよ 难波万雄
0375 唐衣 たつ日は闻かじ 朝露の 置きてしゆけば けぬべきものを 読人知らず
0376 朝なげに 见べき君とし たのまねば 思ひたちぬる 草枕なり 宠
0377 えぞ知らぬ 今こころみよ 命あらば 我や忘るる 人やとはぬと 読人知らず
0378 云ゐにも かよふ心の おくれねば わかると人に 见ゆばかりなり 清原深养父
0379 白云の こなたかなたに 立ち别れ 心をぬさと くだく旅かな 良岑秀崇
0380 白云の 八重にかさなる をちにても 思はむ人に 心へだつな 纪贯之
0381 别れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ 纪贯之
0382 かへる山 なにぞはありて あるかひは きてもとまらぬ 名にこそありけれ 凡河内躬恒
0383 よそにのみ 恋ひや渡らむ 白山の 雪见るべくも あらぬ我が身は 凡河内躬恒
0384 音羽山 こだかく鸣きて 郭公 君が别れを 惜しむべらなり 纪贯之
0385 もろともに なきてとどめよ きりぎりす 秋の别れは 惜しくやはあらぬ 藤原兼茂
0386 秋雾の 共に立ちいでて 别れなば はれぬ思ひに 恋やわたらむ 平元规
0387 命だに 心にかなふ ものならば なにか别れの かなしからまし 白女
0388 人やりの 道ならなくに おほかたは いき忧しといひて いざ帰りなむ 源実
0389 したはれて きにし心の 身にしあれば 帰るさまには 道も知られず 藤原兼茂
0390 かつ越えて 别れもゆくか あふ坂は 人だのめなる 名にこそありけれ 纪贯之
0391 君がゆく 越の白山 知らねども 雪のまにまに あとはたづねむ 藤原兼辅
0392 夕暮れの まがきは山と 见えななむ 夜は越えじと 宿りとるべく 僧正遍照
0393 别れをば 山の桜に まかせてむ とめむとめじは 花のまにまに 幽仙法师
0394 山风に 桜吹きまき 乱れなむ 花のまぎれに 君とまるべく 僧正遍照
0395 ことならば 君とまるべく 匂はなむ かへすは花の うきにやはあらぬ 幽仙法师
0396 あかずして 别るる涙 滝にそふ 水まさるとや しもは见るらむ 兼芸法师
0397 秋萩の 花をば雨に 濡らせども 君をばまして 惜しとこそ思へ 纪贯之
0398 惜しむらむ 人の心を 知らぬまに 秋の时雨と 身ぞふりにける 兼覧王
0399 别るれど うれしくもあるか 今宵より あひ见ぬ先に 何を恋ひまし 凡河内躬恒
0400 あかずして 别るる袖の 白玉を 君が形见と つつみてぞ行く 読人知らず
0401 かぎりなく 思ふ涙に そほちぬる 袖はかわかじ あはむ日までに 読人知らず
0402 かきくらし ことはふらなむ 春雨に 濡衣きせて 君をとどめむ 読人知らず
0403 しひて行く 人をとどめむ 桜花 いづれを道と 惑ふまで散れ 読人知らず
0404 むすぶ手の しづくに浊る 山の井の あかでも人に 别れぬるかな 纪贯之
0405 下の帯の 道はかたがた 别るとも 行きめぐりても あはむとぞ思ふ 纪友则
0365 立ち别れ いなばの山の 峰におふる 松とし闻かば 今かへりこむ 在原行平
0366 すがるなく 秋の萩原 朝たちて 旅行く人を いつとか待たむ 読人知らず
0367 かぎりなき 云ゐのよそに わかるとも 人を心に おくらさむやは 読人知らず
0368 たらちねの 亲のまもりと あひそふる 心ばかりは せきなとどめそ 小野千古母
0369 今日别れ 明日はあふみと 思へども 夜やふけぬらむ 袖の露けき 纪利贞
0370 かへる山 ありとは闻けど 春霞 立ち别れなば 恋しかるべし 纪利贞
0371 惜しむから 恋しきものを 白云の たちなむのちは なに心地せむ 纪贯之
0372 别れては ほどをへだつと 思へばや かつ见ながらに かねて恋しき 在原滋春
0373 思へども 身をしわけねば 目に见えぬ 心を君に たぐへてぞやる 伊香子淳行
0374 あふ坂の 関しまさしき ものならば あかず别るる 君をとどめよ 难波万雄
0375 唐衣 たつ日は闻かじ 朝露の 置きてしゆけば けぬべきものを 読人知らず
0376 朝なげに 见べき君とし たのまねば 思ひたちぬる 草枕なり 宠
0377 えぞ知らぬ 今こころみよ 命あらば 我や忘るる 人やとはぬと 読人知らず
0378 云ゐにも かよふ心の おくれねば わかると人に 见ゆばかりなり 清原深养父
0379 白云の こなたかなたに 立ち别れ 心をぬさと くだく旅かな 良岑秀崇
0380 白云の 八重にかさなる をちにても 思はむ人に 心へだつな 纪贯之
0381 别れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ 纪贯之
0382 かへる山 なにぞはありて あるかひは きてもとまらぬ 名にこそありけれ 凡河内躬恒
0383 よそにのみ 恋ひや渡らむ 白山の 雪见るべくも あらぬ我が身は 凡河内躬恒
0384 音羽山 こだかく鸣きて 郭公 君が别れを 惜しむべらなり 纪贯之
0385 もろともに なきてとどめよ きりぎりす 秋の别れは 惜しくやはあらぬ 藤原兼茂
0386 秋雾の 共に立ちいでて 别れなば はれぬ思ひに 恋やわたらむ 平元规
0387 命だに 心にかなふ ものならば なにか别れの かなしからまし 白女
0388 人やりの 道ならなくに おほかたは いき忧しといひて いざ帰りなむ 源実
0389 したはれて きにし心の 身にしあれば 帰るさまには 道も知られず 藤原兼茂
0390 かつ越えて 别れもゆくか あふ坂は 人だのめなる 名にこそありけれ 纪贯之
0391 君がゆく 越の白山 知らねども 雪のまにまに あとはたづねむ 藤原兼辅
0392 夕暮れの まがきは山と 见えななむ 夜は越えじと 宿りとるべく 僧正遍照
0393 别れをば 山の桜に まかせてむ とめむとめじは 花のまにまに 幽仙法师
0394 山风に 桜吹きまき 乱れなむ 花のまぎれに 君とまるべく 僧正遍照
0395 ことならば 君とまるべく 匂はなむ かへすは花の うきにやはあらぬ 幽仙法师
0396 あかずして 别るる涙 滝にそふ 水まさるとや しもは见るらむ 兼芸法师
0397 秋萩の 花をば雨に 濡らせども 君をばまして 惜しとこそ思へ 纪贯之
0398 惜しむらむ 人の心を 知らぬまに 秋の时雨と 身ぞふりにける 兼覧王
0399 别るれど うれしくもあるか 今宵より あひ见ぬ先に 何を恋ひまし 凡河内躬恒
0400 あかずして 别るる袖の 白玉を 君が形见と つつみてぞ行く 読人知らず
0401 かぎりなく 思ふ涙に そほちぬる 袖はかわかじ あはむ日までに 読人知らず
0402 かきくらし ことはふらなむ 春雨に 濡衣きせて 君をとどめむ 読人知らず
0403 しひて行く 人をとどめむ 桜花 いづれを道と 惑ふまで散れ 読人知らず
0404 むすぶ手の しづくに浊る 山の井の あかでも人に 别れぬるかな 纪贯之
0405 下の帯の 道はかたがた 别るとも 行きめぐりても あはむとぞ思ふ 纪友则
巻七 贺歌
0343 我が君は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで 読人知らず
0344 わたつみの 浜の真砂を かぞへつつ 君が千歳の あり数にせむ 読人知らず
0345 しほの山 さしでの矶に 住む千鸟 君が御代をば 八千代とぞ鸣く 読人知らず
0346 我がよはひ 君が八千代に とりそへて とどめおきては 思ひ出でにせよ 読人知らず
0347 かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君が八千代に あふよしもがな 仁和帝
0348 ちはやぶる 神や切りけむ つくからに 千歳の坂も 越えぬべらなり 僧正遍照
0349 桜花 散りかひくもれ 老いらくの 来むと言ふなる 道まがふがに 在原业平
0350 亀の尾の 山の岩根を とめておつる 滝の白玉 千代の数かも 纪惟岳
0351 いたづらに すぐす月日は 思ほえで 花见てくらす 春ぞ少なき 藤原兴风
0352 春くれば 宿にまづ咲く 梅の花 君が千歳の かざしとぞ见る 纪贯之
0353 いにしへに ありきあらずは 知らねども 千歳のためし 君にはじめむ 素性法师
0354 ふして思ひ おきて数ふる 万代は 神ぞ知るらむ 我が君のため 素性法师
0355 鹤亀も 千歳の後は 知らなくに あかぬ心に まかせはててむ 在原滋春
0356 万代を 松にぞ君を 祝ひつる 千歳のかげに 住まむと思へば 素性法师
0357 春日野に 若菜つみつつ 万代を 祝ふ心は 神ぞ知るらむ 素性法师
0358 山高み 云ゐに见ゆる 桜花 心のゆきて 折らぬ日ぞなき 凡河内躬恒
0359 めづらしき 声ならなくに 郭公 ここらの年を あかずもあるかな 纪友则
0360 住の江の 松を秋风 吹くからに 声うちそふる 冲つ白浪 凡河内躬恒
0361 千鸟鸣く 佐保の河雾 立ちぬらし 山の木の叶も 色まさりゆく 壬生忠岑
0362 秋くれど 色もかはらぬ ときは山 よそのもみぢを 风ぞかしける 読人知らず
0363 白雪の 降りしく时は み吉野の 山下风に 花ぞ散りける 纪贯之
0364 峰高き 春日の山に いづる日は 昙る时なく 照らすべらなり 藤原因香
0343 我が君は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで 読人知らず
0344 わたつみの 浜の真砂を かぞへつつ 君が千歳の あり数にせむ 読人知らず
0345 しほの山 さしでの矶に 住む千鸟 君が御代をば 八千代とぞ鸣く 読人知らず
0346 我がよはひ 君が八千代に とりそへて とどめおきては 思ひ出でにせよ 読人知らず
0347 かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君が八千代に あふよしもがな 仁和帝
0348 ちはやぶる 神や切りけむ つくからに 千歳の坂も 越えぬべらなり 僧正遍照
0349 桜花 散りかひくもれ 老いらくの 来むと言ふなる 道まがふがに 在原业平
0350 亀の尾の 山の岩根を とめておつる 滝の白玉 千代の数かも 纪惟岳
0351 いたづらに すぐす月日は 思ほえで 花见てくらす 春ぞ少なき 藤原兴风
0352 春くれば 宿にまづ咲く 梅の花 君が千歳の かざしとぞ见る 纪贯之
0353 いにしへに ありきあらずは 知らねども 千歳のためし 君にはじめむ 素性法师
0354 ふして思ひ おきて数ふる 万代は 神ぞ知るらむ 我が君のため 素性法师
0355 鹤亀も 千歳の後は 知らなくに あかぬ心に まかせはててむ 在原滋春
0356 万代を 松にぞ君を 祝ひつる 千歳のかげに 住まむと思へば 素性法师
0357 春日野に 若菜つみつつ 万代を 祝ふ心は 神ぞ知るらむ 素性法师
0358 山高み 云ゐに见ゆる 桜花 心のゆきて 折らぬ日ぞなき 凡河内躬恒
0359 めづらしき 声ならなくに 郭公 ここらの年を あかずもあるかな 纪友则
0360 住の江の 松を秋风 吹くからに 声うちそふる 冲つ白浪 凡河内躬恒
0361 千鸟鸣く 佐保の河雾 立ちぬらし 山の木の叶も 色まさりゆく 壬生忠岑
0362 秋くれど 色もかはらぬ ときは山 よそのもみぢを 风ぞかしける 読人知らず
0363 白雪の 降りしく时は み吉野の 山下风に 花ぞ散りける 纪贯之
0364 峰高き 春日の山に いづる日は 昙る时なく 照らすべらなり 藤原因香
巻六 冬歌
0314 竜田川 锦おりかく 神无月 时雨の雨を たてぬきにして 読人知らず
0315 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば 源宗于
0316 大空の 月の光し 清ければ 影见し水ぞ まづこほりける 読人知らず
0317 夕されば 衣手寒し み吉野の 吉野の山に み雪降るらし 読人知らず
0318 今よりは つぎて降らなむ 我が宿の 薄おしなみ 降れる白雪 読人知らず
0319 降る雪は かつぞけぬらし あしひきの 山のたぎつ瀬 音まさるなり 読人知らず
0320 この川に もみぢ叶流る 奥山の 雪げの水ぞ 今まさるらし 読人知らず
0321 ふるさとは 吉野の山し 近ければ ひと日もみ雪 降らぬ日はなし 読人知らず
0322 我が宿は 雪降りしきて 道もなし 踏みわけてとふ 人しなければ 読人知らず
0323 雪降れば 冬ごもりせる 草も木も 春に知られぬ 花ぞ咲きける 纪贯之
0324 白雪の ところもわかず 降りしけば 巌にも咲く 花とこそ见れ 纪秋岑
0325 み吉野の 山の白雪 つもるらし ふるさと寒く なりまさるなり 坂上是则
0326 浦近く 降りくる雪は 白浪の 末の松山 越すかとぞ见る 藤原兴风
0327 み吉野の 山の白雪 踏みわけて 入りにし人の おとづれもせぬ 壬生忠岑
0328 白雪の 降りてつもれる 山里は 住む人さへや 思ひ消ゆらむ 壬生忠岑
0329 雪降りて 人もかよはぬ 道なれや あとはかもなく 思ひ消ゆらむ 凡河内躬恒
0330 冬ながら 空より花の 散りくるは 云のあなたは 春にやあるらむ 清原深养父
0331 冬ごもり 思ひかけぬを 木の间より 花と见るまで 雪ぞ降りける 纪贯之
0332 朝ぼらけ 有明の月と 见るまでに 吉野の里に 降れる白雪 坂上是则
0333 消ぬがうへに またも降りしけ 春霞 立ちなばみ雪 まれにこそ见め 読人知らず
0334 梅の花 それとも见えず 久方の あまぎる雪の なべて降れれば 読人知らず
0335 花の色は 雪にまじりて 见えずとも 香をだに匂へ 人の知るべく 小野篁
0336 梅の香の 降りおける雪に まがひせば 谁かことごと わきて折らまし 纪贯之
0337 雪降れば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし 纪友则
0338 我が待たぬ 年はきぬれど 冬草の 枯れにし人は おとづれもせず 凡河内躬恒
0339 あらたまの 年の终りに なるごとに 雪も我が身も ふりまさりつつ 在原元方
0340 雪降りて 年の暮れぬる 时にこそ つひにもみぢぬ 松も见えけれ 読人知らず
0341 昨日と言ひ 今日とくらして 明日香河 流れて早き 月日なりけり 春道列树
0342 ゆく年の 惜しくもあるかな ます镜 见る影さへに くれぬと思へば 纪贯之
0314 竜田川 锦おりかく 神无月 时雨の雨を たてぬきにして 読人知らず
0315 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば 源宗于
0316 大空の 月の光し 清ければ 影见し水ぞ まづこほりける 読人知らず
0317 夕されば 衣手寒し み吉野の 吉野の山に み雪降るらし 読人知らず
0318 今よりは つぎて降らなむ 我が宿の 薄おしなみ 降れる白雪 読人知らず
0319 降る雪は かつぞけぬらし あしひきの 山のたぎつ瀬 音まさるなり 読人知らず
0320 この川に もみぢ叶流る 奥山の 雪げの水ぞ 今まさるらし 読人知らず
0321 ふるさとは 吉野の山し 近ければ ひと日もみ雪 降らぬ日はなし 読人知らず
0322 我が宿は 雪降りしきて 道もなし 踏みわけてとふ 人しなければ 読人知らず
0323 雪降れば 冬ごもりせる 草も木も 春に知られぬ 花ぞ咲きける 纪贯之
0324 白雪の ところもわかず 降りしけば 巌にも咲く 花とこそ见れ 纪秋岑
0325 み吉野の 山の白雪 つもるらし ふるさと寒く なりまさるなり 坂上是则
0326 浦近く 降りくる雪は 白浪の 末の松山 越すかとぞ见る 藤原兴风
0327 み吉野の 山の白雪 踏みわけて 入りにし人の おとづれもせぬ 壬生忠岑
0328 白雪の 降りてつもれる 山里は 住む人さへや 思ひ消ゆらむ 壬生忠岑
0329 雪降りて 人もかよはぬ 道なれや あとはかもなく 思ひ消ゆらむ 凡河内躬恒
0330 冬ながら 空より花の 散りくるは 云のあなたは 春にやあるらむ 清原深养父
0331 冬ごもり 思ひかけぬを 木の间より 花と见るまで 雪ぞ降りける 纪贯之
0332 朝ぼらけ 有明の月と 见るまでに 吉野の里に 降れる白雪 坂上是则
0333 消ぬがうへに またも降りしけ 春霞 立ちなばみ雪 まれにこそ见め 読人知らず
0334 梅の花 それとも见えず 久方の あまぎる雪の なべて降れれば 読人知らず
0335 花の色は 雪にまじりて 见えずとも 香をだに匂へ 人の知るべく 小野篁
0336 梅の香の 降りおける雪に まがひせば 谁かことごと わきて折らまし 纪贯之
0337 雪降れば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし 纪友则
0338 我が待たぬ 年はきぬれど 冬草の 枯れにし人は おとづれもせず 凡河内躬恒
0339 あらたまの 年の终りに なるごとに 雪も我が身も ふりまさりつつ 在原元方
0340 雪降りて 年の暮れぬる 时にこそ つひにもみぢぬ 松も见えけれ 読人知らず
0341 昨日と言ひ 今日とくらして 明日香河 流れて早き 月日なりけり 春道列树
0342 ゆく年の 惜しくもあるかな ます镜 见る影さへに くれぬと思へば 纪贯之
巻五 秋歌下
0249 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山风を 岚と言ふらむ 文屋康秀
0250 草も木も 色かはれども わたつみの 浪の花にぞ 秋なかりける 文屋康秀
0251 红叶せぬ ときはの山は 吹く风の 音にや秋を 闻き渡るらむ 纪淑望
0252 雾立ちて 雁ぞ鸣くなる 片冈の 朝の原は もみぢしぬらむ 読人知らず
0253 神无月 时雨もいまだ 降らなくに かねてうつろふ 神なびのもり 読人知らず
0254 ちはやぶる 神なび山の もみぢ叶に 思ひはかけじ うつろふものを 読人知らず
0255 同じ枝を わきて木の叶の うつろふは 西こそ秋の はじめなりけれ 藤原胜臣
0256 秋风の 吹きにし日より 音羽山 峰の梢も 色づきにけり 纪贯之
0257 白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の叶を ちぢに染むらむ 藤原敏行
0258 秋の夜の 露をば露と 置きながら 雁の涙や 野辺を染むらむ 壬生忠岑
0259 秋の露 色いろことに 置けばこそ 山の木の叶の ちぐさなるらめ 読人知らず
0260 白露も 时雨もいたく もる山は 下叶残らず 色づきにけり 纪贯之
0261 雨降れど 露ももらじを 笠取りの 山はいかでか もみぢ染めけむ 在原元方
0262 ちはやぶる 神のいがきに はふくずも 秋にはあへず うつろひにけり 纪贯之
0263 雨降れば 笠取り山の もみぢ叶は 行きかふ人の 袖さへぞてる 壬生忠岑
0264 散らねども かねてぞ惜しき もみぢ叶は 今はかぎりの 色と见つれば 読人知らず
0265 谁がための 锦なればか 秋雾の 佐保の山辺を 立ち隠すらむ 纪友则
0266 秋雾は 今朝はな立ちそ 佐保山の ははそのもみぢ よそにても见む 読人知らず
0267 佐保山の ははその色は 薄けれど 秋は深くも なりにけるかな 坂上是则
0268 植ゑし植ゑば 秋なき时や 咲かざらむ 花こそ散らめ 根さへ枯れめや 在原业平
0269 久方の 云の上にて 见る菊は 天つ星とぞ あやまたれける 藤原敏行
0270 露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の 久しかるべく 纪友则
0271 植ゑし时 花待ちどほに ありし菊 うつろふ秋に あはむとや见し 大江千里
0272 秋风の 吹き上げに立てる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか 菅原朝臣
0273 濡れてほす 山路の菊の 露の间に いつか千歳を 我はへにけむ 素性法师
0274 花见つつ 人待つ时は 白妙の 袖かとのみぞ あやまたれける 纪友则
0275 ひともとと 思ひし菊を 大沢の 池の底にも 谁か植ゑけむ 纪友则
0276 秋の菊 匂ふかぎりは かざしてむ 花より先と 知らぬ我が身を 纪贯之
0277 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置き惑はせる 白菊の花 凡河内躬恒
0278 色かはる 秋の菊をば ひととせに ふたたび匂ふ 花とこそ见れ 読人知らず
0279 秋をおきて 时こそありけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされば 平贞文
0280 咲きそめし 宿しかはれば 菊の花 色さへにこそ うつろひにけれ 纪贯之
0281 佐保山の ははそのもみぢ 散りぬべみ 夜さへ见よと 照らす月影 読人知らず
0282 奥山の いはがきもみぢ 散りぬべし 照る日の光 见る时なくて 藤原関雄
0283 竜田川 もみぢ乱れて 流るめり 渡らば锦 中や绝えなむ 読人知らず
0284 竜田川 もみぢ叶流る 神なびの みむろの山に 时雨降るらし 読人知らず
0285 恋しくは 见てもしのばむ もみぢ叶を 吹きな散らしそ 山おろしの风 読人知らず
0286 秋风に あへず散りぬる もみぢ叶の ゆくへさだめぬ 我ぞかなしき 読人知らず
0287 秋は来ぬ 红叶は宿に 降りしきぬ 道踏みわけて とふ人はなし 読人知らず
0288 踏みわけて さらにやとはむ もみぢ叶の 降り隠してし 道と见ながら 読人知らず
0289 秋の月 山辺さやかに 照らせるは 落つるもみぢの 数を见よとか 読人知らず
0290 吹く风の 色のちぐさに 见えつるは 秋の木の叶の 散ればなりけり 読人知らず
0291 霜のたて 露のぬきこそ 弱からし 山の锦の おればかつ散る 藤原関雄
0292 わび人の わきて立ち寄る 木のもとは たのむかげなく もみぢ散りけり 僧正遍照
0293 もみぢ叶の 流れてとまる みなとには 红深き 浪や立つらむ 素性法师
0294 ちはやぶる 神世もきかず 竜田川 唐红に 水くくるとは 在原业平
0295 我がきつる 方も知られず くらぶ山 木ぎの木の叶の 散るとまがふに 藤原敏行
0296 神なびの みむろの山を 秋ゆけば 锦たちきる 心地こそすれ 壬生忠岑
0297 见る人も なくて散りぬる 奥山の 红叶は夜の 锦なりけり 纪贯之
0298 竜田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の叶の ぬさと散るらめ 兼覧王
0299 秋の山 红叶をぬさと たむくれば 住む我さへぞ 旅心地する 纪贯之
0300 神なびの 山をすぎ行く 秋なれば 竜田川にぞ ぬさはたむくる 清原深养父
0301 白浪に 秋の木の叶の 浮かべるを 海人の流せる 舟かとぞ见る 藤原兴风
0302 もみぢ叶の 流れざりせば 竜田川 水の秋をば 谁か知らまし 坂上是则
0303 山川に 风のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 红叶なりけり 春道列树
0304 风吹けば 落つるもみぢ叶 水清み 散らぬ影さへ 底に见えつつ 凡河内躬恒
0305 立ち止まり 见てをわたらむ もみぢ叶は 雨と降るとも 水はまさらじ 凡河内躬恒
0306 山田もる 秋のかりいほに 置く露は いなおほせ鸟の 涙なりけり 壬生忠岑
0307 穂にもいでぬ 山田をもると 藤衣 稲叶の露に 濡れぬ日ぞなき 読人知らず
0308 刈れる田に おふるひつちの 穂にいでぬは 世を今さらに あきはてぬとか 読人知らず
0309 もみぢ叶は 袖にこき入れて もていでなむ 秋はかぎりと 见む人のため 素性法师
0310 み山より 落ちくる水の 色见てぞ 秋はかぎりと 思ひ知りぬる 藤原兴风
0311 年ごとに もみぢ叶流す 竜田川 みなとや秋の とまりなるらむ 纪贯之
0312 夕月夜 小仓の山に 鸣く鹿の 声の内にや 秋は暮るらむ 纪贯之
0313 道知らば たづねもゆかむ もみぢ叶を ぬさとたむけて 秋はいにけり 凡河内躬恒
0249 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山风を 岚と言ふらむ 文屋康秀
0250 草も木も 色かはれども わたつみの 浪の花にぞ 秋なかりける 文屋康秀
0251 红叶せぬ ときはの山は 吹く风の 音にや秋を 闻き渡るらむ 纪淑望
0252 雾立ちて 雁ぞ鸣くなる 片冈の 朝の原は もみぢしぬらむ 読人知らず
0253 神无月 时雨もいまだ 降らなくに かねてうつろふ 神なびのもり 読人知らず
0254 ちはやぶる 神なび山の もみぢ叶に 思ひはかけじ うつろふものを 読人知らず
0255 同じ枝を わきて木の叶の うつろふは 西こそ秋の はじめなりけれ 藤原胜臣
0256 秋风の 吹きにし日より 音羽山 峰の梢も 色づきにけり 纪贯之
0257 白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の叶を ちぢに染むらむ 藤原敏行
0258 秋の夜の 露をば露と 置きながら 雁の涙や 野辺を染むらむ 壬生忠岑
0259 秋の露 色いろことに 置けばこそ 山の木の叶の ちぐさなるらめ 読人知らず
0260 白露も 时雨もいたく もる山は 下叶残らず 色づきにけり 纪贯之
0261 雨降れど 露ももらじを 笠取りの 山はいかでか もみぢ染めけむ 在原元方
0262 ちはやぶる 神のいがきに はふくずも 秋にはあへず うつろひにけり 纪贯之
0263 雨降れば 笠取り山の もみぢ叶は 行きかふ人の 袖さへぞてる 壬生忠岑
0264 散らねども かねてぞ惜しき もみぢ叶は 今はかぎりの 色と见つれば 読人知らず
0265 谁がための 锦なればか 秋雾の 佐保の山辺を 立ち隠すらむ 纪友则
0266 秋雾は 今朝はな立ちそ 佐保山の ははそのもみぢ よそにても见む 読人知らず
0267 佐保山の ははその色は 薄けれど 秋は深くも なりにけるかな 坂上是则
0268 植ゑし植ゑば 秋なき时や 咲かざらむ 花こそ散らめ 根さへ枯れめや 在原业平
0269 久方の 云の上にて 见る菊は 天つ星とぞ あやまたれける 藤原敏行
0270 露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の 久しかるべく 纪友则
0271 植ゑし时 花待ちどほに ありし菊 うつろふ秋に あはむとや见し 大江千里
0272 秋风の 吹き上げに立てる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか 菅原朝臣
0273 濡れてほす 山路の菊の 露の间に いつか千歳を 我はへにけむ 素性法师
0274 花见つつ 人待つ时は 白妙の 袖かとのみぞ あやまたれける 纪友则
0275 ひともとと 思ひし菊を 大沢の 池の底にも 谁か植ゑけむ 纪友则
0276 秋の菊 匂ふかぎりは かざしてむ 花より先と 知らぬ我が身を 纪贯之
0277 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置き惑はせる 白菊の花 凡河内躬恒
0278 色かはる 秋の菊をば ひととせに ふたたび匂ふ 花とこそ见れ 読人知らず
0279 秋をおきて 时こそありけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされば 平贞文
0280 咲きそめし 宿しかはれば 菊の花 色さへにこそ うつろひにけれ 纪贯之
0281 佐保山の ははそのもみぢ 散りぬべみ 夜さへ见よと 照らす月影 読人知らず
0282 奥山の いはがきもみぢ 散りぬべし 照る日の光 见る时なくて 藤原関雄
0283 竜田川 もみぢ乱れて 流るめり 渡らば锦 中や绝えなむ 読人知らず
0284 竜田川 もみぢ叶流る 神なびの みむろの山に 时雨降るらし 読人知らず
0285 恋しくは 见てもしのばむ もみぢ叶を 吹きな散らしそ 山おろしの风 読人知らず
0286 秋风に あへず散りぬる もみぢ叶の ゆくへさだめぬ 我ぞかなしき 読人知らず
0287 秋は来ぬ 红叶は宿に 降りしきぬ 道踏みわけて とふ人はなし 読人知らず
0288 踏みわけて さらにやとはむ もみぢ叶の 降り隠してし 道と见ながら 読人知らず
0289 秋の月 山辺さやかに 照らせるは 落つるもみぢの 数を见よとか 読人知らず
0290 吹く风の 色のちぐさに 见えつるは 秋の木の叶の 散ればなりけり 読人知らず
0291 霜のたて 露のぬきこそ 弱からし 山の锦の おればかつ散る 藤原関雄
0292 わび人の わきて立ち寄る 木のもとは たのむかげなく もみぢ散りけり 僧正遍照
0293 もみぢ叶の 流れてとまる みなとには 红深き 浪や立つらむ 素性法师
0294 ちはやぶる 神世もきかず 竜田川 唐红に 水くくるとは 在原业平
0295 我がきつる 方も知られず くらぶ山 木ぎの木の叶の 散るとまがふに 藤原敏行
0296 神なびの みむろの山を 秋ゆけば 锦たちきる 心地こそすれ 壬生忠岑
0297 见る人も なくて散りぬる 奥山の 红叶は夜の 锦なりけり 纪贯之
0298 竜田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の叶の ぬさと散るらめ 兼覧王
0299 秋の山 红叶をぬさと たむくれば 住む我さへぞ 旅心地する 纪贯之
0300 神なびの 山をすぎ行く 秋なれば 竜田川にぞ ぬさはたむくる 清原深养父
0301 白浪に 秋の木の叶の 浮かべるを 海人の流せる 舟かとぞ见る 藤原兴风
0302 もみぢ叶の 流れざりせば 竜田川 水の秋をば 谁か知らまし 坂上是则
0303 山川に 风のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 红叶なりけり 春道列树
0304 风吹けば 落つるもみぢ叶 水清み 散らぬ影さへ 底に见えつつ 凡河内躬恒
0305 立ち止まり 见てをわたらむ もみぢ叶は 雨と降るとも 水はまさらじ 凡河内躬恒
0306 山田もる 秋のかりいほに 置く露は いなおほせ鸟の 涙なりけり 壬生忠岑
0307 穂にもいでぬ 山田をもると 藤衣 稲叶の露に 濡れぬ日ぞなき 読人知らず
0308 刈れる田に おふるひつちの 穂にいでぬは 世を今さらに あきはてぬとか 読人知らず
0309 もみぢ叶は 袖にこき入れて もていでなむ 秋はかぎりと 见む人のため 素性法师
0310 み山より 落ちくる水の 色见てぞ 秋はかぎりと 思ひ知りぬる 藤原兴风
0311 年ごとに もみぢ叶流す 竜田川 みなとや秋の とまりなるらむ 纪贯之
0312 夕月夜 小仓の山に 鸣く鹿の 声の内にや 秋は暮るらむ 纪贯之
0313 道知らば たづねもゆかむ もみぢ叶を ぬさとたむけて 秋はいにけり 凡河内躬恒
巻四 秋歌上
0169 秋きぬと 目にはさやかに 见えねども 风の音にぞ おどろかれぬる 藤原敏行
0170 川风の 凉しくもあるか うちよする 浪とともにや 秋は立つらむ 纪贯之
0171 我が背子が 衣の裾を 吹き返し うらめづらしき 秋の初风 読人知らず
0172 昨日こそ 早苗とりしか いつの间に 稲叶そよぎて 秋风の吹く 読人知らず
0173 秋风の 吹きにし日より 久方の 天の河原に 立たぬ日はなし 読人知らず
0174 久方の 天の河原の 渡し守 君渡りなば かぢかくしてよ 読人知らず
0175 天の河 红叶を桥に わたせばや 七夕つめの 秋をしも待つ 読人知らず
0176 恋ひ恋ひて あふ夜は今宵 天の河 雾立ちわたり 明けずもあらなむ 読人知らず
0177 天の河 浅瀬しら浪 たどりつつ 渡りはてねば 明けぞしにける 纪友则
0178 契りけむ 心ぞつらき 七夕の 年にひとたび あふはあふかは 藤原兴风
0179 年ごとに あふとはすれど 七夕の 寝る夜の数ぞ 少なかりける 凡河内躬恒
0180 七夕に かしつる糸の うちはへて 年のを长く 恋ひや渡らむ 凡河内躬恒
0181 今宵こむ 人にはあはじ 七夕の 久しきほどに 待ちもこそすれ 素性法师
0182 今はとて 别るる时は 天の河 渡らぬ先に 袖ぞひちぬる 源宗于
0183 今日よりは 今こむ年の 昨日をぞ いつしかとのみ 待ち渡るべき 壬生忠岑
0184 木の间より もりくる月の 影见れば 心づくしの 秋はきにけり 読人知らず
0185 おほかたの 秋くるからに 我が身こそ かなしきものと 思ひ知りぬれ 読人知らず
0186 我がために くる秋にしも あらなくに 虫の音闻けば まづぞかなしき 読人知らず
0187 ものごとに 秋ぞかなしき もみぢつつ うつろひゆくを かぎりと思へば 読人知らず
0188 ひとり寝る 床は草叶に あらねども 秋くる宵は 露けかりけり 読人知らず
0189 いつはとは 时はわかねど 秋の夜ぞ 物思ふことの かぎりなりける 読人知らず
0190 かくばかり 惜しと思ふ夜を いたづらに 寝て明かすらむ 人さへぞうき 凡河内躬恒
0191 白云に 羽うちかはし 飞ぶ雁の 数さへ见ゆる 秋の夜の月 読人知らず
0192 小夜中と 夜はふけぬらし 雁がねの 闻こゆる空に 月渡る见ゆ 読人知らず
0193 月见れば ちぢにものこそ かなしけれ 我が身ひとつの 秋にはあらねど 大江千里
0194 久方の 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ 壬生忠岑
0195 秋の夜の 月の光し あかければ くらぶの山も 越えぬべらなり 在原元方
0196 きりぎりす いたくな鸣きそ 秋の夜の 长き思ひは 我ぞまされる 藤原忠房
0197 秋の夜の 明くるも知らず 鸣く虫は 我がごとものや かなしかるらむ 藤原敏行
0198 秋萩も 色づきぬれば きりぎりす 我が寝ぬごとや 夜はかなしき 読人知らず
0199 秋の夜は 露こそことに 寒からし 草むらごとに 虫のわぶれば 読人知らず
0200 君しのぶ 草にやつるる ふるさとは 松虫の音ぞ かなしかりける 読人知らず
0201 秋の野に 道も惑ひぬ 松虫の 声する方に 宿やからまし 読人知らず
0202 秋の野に 人まつ虫の 声すなり 我かとゆきて いざとぶらはむ 読人知らず
0203 もみぢ叶の 散りてつもれる 我が宿に 谁をまつ虫 ここら鸣くらむ 読人知らず
0204 ひぐらしの 鸣きつるなへに 日は暮れぬと 思ふは山の かげにぞありける 読人知らず
0205 ひぐらしの 鸣く山里の 夕暮れは 风よりほかに とふ人もなし 読人知らず
0206 待つ人に あらぬものから 初雁の 今朝鸣く声の めづらしきかな 在原元方
0207 秋风に 初雁がねぞ 闻こゆなる たがたまづさを かけてきつらむ 纪友则
0208 我が门に いなおほせ鸟の 鸣くなへに 今朝吹く风に 雁はきにけり 読人知らず
0209 いとはやも 鸣きぬる雁か 白露の 色どる木ぎも もみぢあへなくに 読人知らず
0210 春霞 かすみていにし 雁がねは 今ぞ鸣くなる 秋雾の上に 読人知らず
0211 夜を寒み 衣かりがね 鸣くなへに 萩の下叶も うつろひにけり 読人知らず
0212 秋风に 声を帆にあげて くる舟は 天の门渡る 雁にぞありける 藤原菅根
0213 忧きことを 思ひつらねて 雁がねの 鸣きこそわたれ 秋の夜な夜な 凡河内躬恒
0214 山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鸣く音に 目を覚ましつつ 壬生忠岑
0215 奥山に もみぢ踏みわけ 鸣く鹿の 声闻く时ぞ 秋はかなしき 読人知らず
0216 秋萩に うらびれをれば あしひきの 山下とよみ 鹿の鸣くらむ 読人知らず
0217 秋萩を しがらみふせて 鸣く鹿の 目には见えずて 音のさやけさ 読人知らず
0218 秋萩の 花咲きにけり 高砂の 尾上の鹿は 今や鸣くらむ 藤原敏行
0219 秋萩の 古枝に咲ける 花见れば もとの心は 忘れざりけり 凡河内躬恒
0220 秋萩の 下叶色づく 今よりや ひとりある人の いねがてにする 読人知らず
0221 鸣き渡る 雁の涙や 落ちつらむ 物思ふ宿の 萩の上の露 読人知らず
0222 萩の露 玉にぬかむと とればけぬ よし见む人は 枝ながら见よ 読人知らず
0223 折りてみば 落ちぞしぬべき 秋萩の 枝もたわわに 置ける白露 読人知らず
0224 萩が花 散るらむ小野の 露霜に 濡れてをゆかむ 小夜はふくとも 読人知らず
0225 秋の野に 置く白露は 玉なれや つらぬきかくる くもの糸すぢ 文屋朝康
0226 名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花 我おちにきと 人にかたるな 僧正遍照
0227 女郎花 忧しと见つつぞ ゆきすぐる 男山にし 立てりと思へば 布留今道
0228 秋の野に 宿りはすべし 女郎花 名をむつまじみ 旅ならなくに 藤原敏行
0229 女郎花 おほかる野辺に 宿りせば あやなくあだの 名をやたちなむ 小野美材
0230 女郎花 秋の野风に うちなびき 心ひとつを 谁によすらむ 左大臣
0231 秋ならで あふことかたき 女郎花 天の河原に おひぬものゆゑ 藤原定方
0232 たが秋に あらぬものゆゑ 女郎花 なぞ色にいでて まだきうつろふ 纪贯之
0233 つま恋ふる 鹿ぞ鸣くなる 女郎花 おのがすむ野の 花と知らずや 凡河内躬恒
0234 女郎花 吹きすぎてくる 秋风は 目には见えねど 香こそしるけれ 凡河内躬恒
0235 人の见る ことやくるしき 女郎花 秋雾にのみ 立ち隠るらむ 壬生忠岑
0236 ひとりのみ ながむるよりは 女郎花 我が住む宿に 植ゑて见ましを 壬生忠岑
0237 女郎花 うしろめたくも 见ゆるかな 荒れたる宿に ひとり立てれば 兼覧王
0238 花にあかで 何かへるらむ 女郎花 おほかる野辺に 寝なましものを 平贞文
0239 なに人か 来て脱ぎかけし 藤ばかま 来る秋ごとに 野辺を匂はす 藤原敏行
0240 宿りせし 人の形见か 藤ばかま 忘られがたき 香に匂ひつつ 纪贯之
0241 主知らぬ 香こそ匂へれ 秋の野に たが脱ぎかけし 藤ばかまぞも 素性法师
0242 今よりは 植ゑてだに见じ 花薄 穂にいづる秋は わびしかりけり 平贞文
0243 秋の野の 草の袂か 花薄 穂にいでてまねく 袖と见ゆらむ 在原栋梁
0244 我のみや あはれと思はむ きりぎりす 鸣く夕影の 大和抚子 素性法师
0245 绿なる ひとつ草とぞ 春は见し 秋は色いろの 花にぞありける 読人知らず
0246 ももくさの 花のひもとく 秋の野に 思ひたはれむ 人なとがめそ 読人知らず
0247 月草に 衣はすらむ 朝露に 濡れてののちは うつろひぬとも 読人知らず
0248 里は荒れて 人はふりにし 宿なれや 庭もまがきも 秋の野らなる 僧正遍照
0169 秋きぬと 目にはさやかに 见えねども 风の音にぞ おどろかれぬる 藤原敏行
0170 川风の 凉しくもあるか うちよする 浪とともにや 秋は立つらむ 纪贯之
0171 我が背子が 衣の裾を 吹き返し うらめづらしき 秋の初风 読人知らず
0172 昨日こそ 早苗とりしか いつの间に 稲叶そよぎて 秋风の吹く 読人知らず
0173 秋风の 吹きにし日より 久方の 天の河原に 立たぬ日はなし 読人知らず
0174 久方の 天の河原の 渡し守 君渡りなば かぢかくしてよ 読人知らず
0175 天の河 红叶を桥に わたせばや 七夕つめの 秋をしも待つ 読人知らず
0176 恋ひ恋ひて あふ夜は今宵 天の河 雾立ちわたり 明けずもあらなむ 読人知らず
0177 天の河 浅瀬しら浪 たどりつつ 渡りはてねば 明けぞしにける 纪友则
0178 契りけむ 心ぞつらき 七夕の 年にひとたび あふはあふかは 藤原兴风
0179 年ごとに あふとはすれど 七夕の 寝る夜の数ぞ 少なかりける 凡河内躬恒
0180 七夕に かしつる糸の うちはへて 年のを长く 恋ひや渡らむ 凡河内躬恒
0181 今宵こむ 人にはあはじ 七夕の 久しきほどに 待ちもこそすれ 素性法师
0182 今はとて 别るる时は 天の河 渡らぬ先に 袖ぞひちぬる 源宗于
0183 今日よりは 今こむ年の 昨日をぞ いつしかとのみ 待ち渡るべき 壬生忠岑
0184 木の间より もりくる月の 影见れば 心づくしの 秋はきにけり 読人知らず
0185 おほかたの 秋くるからに 我が身こそ かなしきものと 思ひ知りぬれ 読人知らず
0186 我がために くる秋にしも あらなくに 虫の音闻けば まづぞかなしき 読人知らず
0187 ものごとに 秋ぞかなしき もみぢつつ うつろひゆくを かぎりと思へば 読人知らず
0188 ひとり寝る 床は草叶に あらねども 秋くる宵は 露けかりけり 読人知らず
0189 いつはとは 时はわかねど 秋の夜ぞ 物思ふことの かぎりなりける 読人知らず
0190 かくばかり 惜しと思ふ夜を いたづらに 寝て明かすらむ 人さへぞうき 凡河内躬恒
0191 白云に 羽うちかはし 飞ぶ雁の 数さへ见ゆる 秋の夜の月 読人知らず
0192 小夜中と 夜はふけぬらし 雁がねの 闻こゆる空に 月渡る见ゆ 読人知らず
0193 月见れば ちぢにものこそ かなしけれ 我が身ひとつの 秋にはあらねど 大江千里
0194 久方の 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ 壬生忠岑
0195 秋の夜の 月の光し あかければ くらぶの山も 越えぬべらなり 在原元方
0196 きりぎりす いたくな鸣きそ 秋の夜の 长き思ひは 我ぞまされる 藤原忠房
0197 秋の夜の 明くるも知らず 鸣く虫は 我がごとものや かなしかるらむ 藤原敏行
0198 秋萩も 色づきぬれば きりぎりす 我が寝ぬごとや 夜はかなしき 読人知らず
0199 秋の夜は 露こそことに 寒からし 草むらごとに 虫のわぶれば 読人知らず
0200 君しのぶ 草にやつるる ふるさとは 松虫の音ぞ かなしかりける 読人知らず
0201 秋の野に 道も惑ひぬ 松虫の 声する方に 宿やからまし 読人知らず
0202 秋の野に 人まつ虫の 声すなり 我かとゆきて いざとぶらはむ 読人知らず
0203 もみぢ叶の 散りてつもれる 我が宿に 谁をまつ虫 ここら鸣くらむ 読人知らず
0204 ひぐらしの 鸣きつるなへに 日は暮れぬと 思ふは山の かげにぞありける 読人知らず
0205 ひぐらしの 鸣く山里の 夕暮れは 风よりほかに とふ人もなし 読人知らず
0206 待つ人に あらぬものから 初雁の 今朝鸣く声の めづらしきかな 在原元方
0207 秋风に 初雁がねぞ 闻こゆなる たがたまづさを かけてきつらむ 纪友则
0208 我が门に いなおほせ鸟の 鸣くなへに 今朝吹く风に 雁はきにけり 読人知らず
0209 いとはやも 鸣きぬる雁か 白露の 色どる木ぎも もみぢあへなくに 読人知らず
0210 春霞 かすみていにし 雁がねは 今ぞ鸣くなる 秋雾の上に 読人知らず
0211 夜を寒み 衣かりがね 鸣くなへに 萩の下叶も うつろひにけり 読人知らず
0212 秋风に 声を帆にあげて くる舟は 天の门渡る 雁にぞありける 藤原菅根
0213 忧きことを 思ひつらねて 雁がねの 鸣きこそわたれ 秋の夜な夜な 凡河内躬恒
0214 山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鸣く音に 目を覚ましつつ 壬生忠岑
0215 奥山に もみぢ踏みわけ 鸣く鹿の 声闻く时ぞ 秋はかなしき 読人知らず
0216 秋萩に うらびれをれば あしひきの 山下とよみ 鹿の鸣くらむ 読人知らず
0217 秋萩を しがらみふせて 鸣く鹿の 目には见えずて 音のさやけさ 読人知らず
0218 秋萩の 花咲きにけり 高砂の 尾上の鹿は 今や鸣くらむ 藤原敏行
0219 秋萩の 古枝に咲ける 花见れば もとの心は 忘れざりけり 凡河内躬恒
0220 秋萩の 下叶色づく 今よりや ひとりある人の いねがてにする 読人知らず
0221 鸣き渡る 雁の涙や 落ちつらむ 物思ふ宿の 萩の上の露 読人知らず
0222 萩の露 玉にぬかむと とればけぬ よし见む人は 枝ながら见よ 読人知らず
0223 折りてみば 落ちぞしぬべき 秋萩の 枝もたわわに 置ける白露 読人知らず
0224 萩が花 散るらむ小野の 露霜に 濡れてをゆかむ 小夜はふくとも 読人知らず
0225 秋の野に 置く白露は 玉なれや つらぬきかくる くもの糸すぢ 文屋朝康
0226 名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花 我おちにきと 人にかたるな 僧正遍照
0227 女郎花 忧しと见つつぞ ゆきすぐる 男山にし 立てりと思へば 布留今道
0228 秋の野に 宿りはすべし 女郎花 名をむつまじみ 旅ならなくに 藤原敏行
0229 女郎花 おほかる野辺に 宿りせば あやなくあだの 名をやたちなむ 小野美材
0230 女郎花 秋の野风に うちなびき 心ひとつを 谁によすらむ 左大臣
0231 秋ならで あふことかたき 女郎花 天の河原に おひぬものゆゑ 藤原定方
0232 たが秋に あらぬものゆゑ 女郎花 なぞ色にいでて まだきうつろふ 纪贯之
0233 つま恋ふる 鹿ぞ鸣くなる 女郎花 おのがすむ野の 花と知らずや 凡河内躬恒
0234 女郎花 吹きすぎてくる 秋风は 目には见えねど 香こそしるけれ 凡河内躬恒
0235 人の见る ことやくるしき 女郎花 秋雾にのみ 立ち隠るらむ 壬生忠岑
0236 ひとりのみ ながむるよりは 女郎花 我が住む宿に 植ゑて见ましを 壬生忠岑
0237 女郎花 うしろめたくも 见ゆるかな 荒れたる宿に ひとり立てれば 兼覧王
0238 花にあかで 何かへるらむ 女郎花 おほかる野辺に 寝なましものを 平贞文
0239 なに人か 来て脱ぎかけし 藤ばかま 来る秋ごとに 野辺を匂はす 藤原敏行
0240 宿りせし 人の形见か 藤ばかま 忘られがたき 香に匂ひつつ 纪贯之
0241 主知らぬ 香こそ匂へれ 秋の野に たが脱ぎかけし 藤ばかまぞも 素性法师
0242 今よりは 植ゑてだに见じ 花薄 穂にいづる秋は わびしかりけり 平贞文
0243 秋の野の 草の袂か 花薄 穂にいでてまねく 袖と见ゆらむ 在原栋梁
0244 我のみや あはれと思はむ きりぎりす 鸣く夕影の 大和抚子 素性法师
0245 绿なる ひとつ草とぞ 春は见し 秋は色いろの 花にぞありける 読人知らず
0246 ももくさの 花のひもとく 秋の野に 思ひたはれむ 人なとがめそ 読人知らず
0247 月草に 衣はすらむ 朝露に 濡れてののちは うつろひぬとも 読人知らず
0248 里は荒れて 人はふりにし 宿なれや 庭もまがきも 秋の野らなる 僧正遍照




